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―――恐縮な表現ですが、長門さんは、いわゆる“老老介護”の毎日を送られています。その現実の厳しさをお感じになることはありますか? |
「やはり、いま一番欲しいのは力です。1人で洋子を入浴させようとすると自分の非力さを実感させられますね。彼女の全身をしっかり受け止めてやれるだけの力があればと思いますよ。今はヘルパーさんの力を借りながらなんとか続けていますが、正直、悔しいところですね。ただ、年を取ること自体は、人生として素晴らしいじゃないですか。僕はむしろ年を『いただいてる』と考えています。悲しいことではなく、ありがたいことなんです」
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―――介護疲れが引き起こす悲しい事件がたびたび報道されています。長門さん自身はそれを防ぐためにどんなことが必要だと思いますか? |
「深刻な問題ですよね。ただ自分がイヤイヤやっていたり、やらなきゃならない義務感でやってたら疲れます。たとえば、今日もこの取材の後、洋子の病室に行く予定なんだけど、早く会いたいって気持ちと、腹減ったからなにか食べたいなって気持ちがあるんですよ。食事してたらその分、洋子に会う時間が遅れるんだけど(笑)。そこで行かなきゃって義務感で行ってたら疲れますよね。僕が疲れないのは、介護をやりたくてやってるから。すぐに疲れがとれる。もちろん、実際はわかりませんよ。肉体にはダメージを受けてるかもしれない。老化も進んでるかもしれない。でも、精神的には最高に充実してるといえますね。
それに、介護で時間が限られてる分、仕事にも集中できるんです。稽古の時、一番最初にセリフを覚えるのは75歳の僕。集中力を高めて、“狂気”になれば、膨大なセリフが頭に入っちゃう。その結果、劇団自体もレベルアップするんです。年寄りが、稽古場で台本無しでセリフを言ってるってビックリされて、若い人も頑張ってくれるんですね」
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―――最後に介護で悩まれている方へのメッセージをください。 |
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「僕は胸を張って自分の人生を終わりたいと思っています。“長門裕之の人生”の中に、南田洋子の人生もある。ですから、自分の人生のためと思うことが、介護をするうえで最も大切なことじゃないかなと思っています。だからこそ、僕自身は人間的にもっともっと成長したい。介護というものを通して、自分も一緒に勉強させてもらっています。毎日毎日、新しい状況が生まれますからね。当初は、『あれ、昨日まではこうだったのに、なんで今日は違うんだろう』と戸惑うことばかりでした。『昨日の洋子でいいから戻ってきてくれよ…!』と叫びたい気分でした。でも今は、新たな状況に驚かず、その時そのときで、きちんと対応できる自分でありたいと思っています。
今はとにかく、洋子を無事に見送ってやりたいという気持ちだけです。1秒でも長く彼女より生きたい。今は素直にそう思っています。いつまで健康でやれるかわかりませんが、僕はまだまだ、あと10年はやれるような気がしているんですよ」
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―本日はお忙しい中、貴重なお時間をいただきましてありがとうございました。
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取材・文:佐野 裕 /写真:上原深音
(2009年4月 株式会社ペルソン 無断転載禁止) |
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