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スペシャルインタビューvol.47 童門冬二 
   

童門冬二

変革の今、求められるリーダーシップ
〜ただ歴史に学ぶのは、間違いです 』


 歴史の中から現代に通じる実学を選び出し、執筆して世に送り出すという新境地を開拓した童門冬二さん。歴史に見る組織と人間という童門さんのテーマの背景には、30年以上に及ぶ東京都職員としての公務員生活と、行政の現場でさまざまな現実に立ち会ってきた体験があります。

  都庁在職中の1960年に小説『暗い川が手を叩く』が芥川賞最終候補に。そして1979年の退職後からは作家活動に専念され、数多くの書籍を上梓。多くのベストセラーも輩出されました。大変エネルギッシュで、80歳を過ぎた今なお、月に500枚を超える旺盛な執筆を続けられています。
 
  名講演者としても知られ、現代における人、教育、組織、経済、社会、文化のあり方を、歴史という人間ドラマを題材に語られる話しぶりには、数多くのファンがいます。  今回は、変革の今、求められるリーダーシップについて、お話をお聞きしてきました。


Keywords
  1) まずは自分を確立する。足りないところを歴史で補強する。
  2) リーダーの意識と行動で、組織は変わる
  3) 「誰かさんのために」という思いを組織全体で持てるか


まずは自分を確立する。足りないところを歴史で補強する。

―――企業の経営者やリーダーが、舵取りの難しい時代です。
今こそ歴史に学ぶべき、なのでしょうか?

 「『歴史に学べ』、とよく言われますが、ただ歴史に学ぶというのは、実は間違いなんです。まず必要なのは、経営者やリーダーが今、自分たちがやっていることは正しいんだと、自分を是認することなんですね。基本的に歴史に対する姿勢というのは、自分の考え方があって、それを補うために、あるいはそれをより輝かせるために、助長材として取り入れていくのがいいんです。まるごと何もない、がらんどうな状態の人が、100まるまる全部取り入れるのはいただけない。まず自分というものが7、8割あって、2、3割の欠落している部分を補強する。自分が主で、歴史は従という考え方をしたほうがいい。多くのビジネスマンはそれを認識されていない印象がある。まずはしっかり自分を持ち、そのことに自信を持つこと。その上で講演を聞いたり、本を読んだりして、足りないところを歴史を学ぶことで補えばいいんです。
 
  歴史上の人物もパーフェクトではありません。一人の人間から丸ごとは学べない。例えば、人間の衣食住の暮らしの中に、新しいカルチャーを取り入れたことから先進性を学ぶなら、織田信長。家臣へその仕事の目的を明確に提示し、チームワークをよくして、部下が気持ちよく仕事をするように仕向けていったことからマネジメントを学ぶなら、豊臣秀吉。そんなふうに自分に都合のいいところ、自分が発見できたところを盗めばいいんです 」

―――今の経営の現場では、「これまでのやり方が通用しない、組織パフォーマンスを高めるために、どうすればいいかわからなくなってしまった」、という経営者の声も聞こえてきます。こういうことも歴史に学べるのでしょうか?

 「例えば、豊臣秀吉という人物は、それまでのやり方ではうまくいかなかったことを、次々に成功させているんですね。有名なものに織田信長の家来時代の塀修理がある。信長に命じられ、工事奉行が100人の労務者を使って塀の修理に挑むけれどうまくいかなかった。それを、秀吉が引き取るんです。どうしてうまくいかなかったのかといえば、『何のためにそれをやるのか』、工事を担う労務者がつかんでいなかったからでした。現場の100人が全員、目的を喪失していた。秀吉は工事箇所を自分の目で見て、まずは10カ所に分けるんです。そして100人を10人ずつの10組にしようとした。でも、誰と誰がどの組に入るかは、自分たちで決めろ、と言ったんですね。好き嫌いもあるだろう、決めたら集まれと。そしてどの場所を担当するかはクジで決めて、最初にできた組には信長から褒美を与える、とした。ただ仕事を与えるだけではダメなんです。まずは自分で現場を知り、その上で部下に考えさせなくちゃいけない。部下にやる気が出るような工夫を意識しないといけないんです。

 これからの組織論としては、タスクフォース的なものがいいと私は思います。歴史もそれをたくさん語っている。例えば、織田信長は合戦のたびごとに編成を変えていました。美濃攻めのとき、叩き上げの豊臣秀吉を使ったのは、彼が最も適任だったからです。あの輪中の地域への大変な城攻めは、ぬるま湯で育った織田家の家来では無理だと考えたんですね。そしてこのとき秀吉は、拠点として墨俣一夜城を、家来ではなく木曽川沿いの土木建設業者たちに作らせたのです。輪中地帯である川の流域に堤を築く専門技術を持った連中に任せ、完成できたら家来にするという見返りをつけた。これが成功を呼び込んだ。ある目的を立てたとき、そのたびごとに最適な特別チームを作る。目的が完成したら、解散して元に戻る。編成と解体を自在にしていく。やわらかい組織に変えていかないと、硬直化してしまいます。あんまりパーマネントにこだわると、サビがわいてくるんです。こういうことも歴史に学べると思いますね」

――――最近では、若い社員がすぐに不平不満をこぼす、辞めてしまう、と困っている会社も多いようです。
童門冬二
「やりたいことをやらせてくれない、最初に考えていたことと違った、やらされている仕事が嫌だ…。でも、それはちょっと気が短すぎます。それで辞められてしまうのは、上の責任と言わざるを得ない。上司と部下でよく話し合わないといけないですね。でも、そういう仕事の不平不満の話は、会社ではあまりできない。焼き鳥屋に行ってお酒を飲まないとね(笑)。いずれにしても上の努力が必要です。

 江戸時代に、農村復興政策を指導した二宮金次郎は、農民にむけて、『鍬をふるって土を耕すということは、(農民が持っている)土に対する愛情を、鍬を通じて伝えることだ』、と言っていました。土はモノ言わない。でも、実は土はわかっているんだと。だから、農民が土を愛せば、蒔いた種を土は立派な農作物にして返してくれる。その徳に対して報いないといけないという報徳の精神をもって恩を返すわけです。でも、これは普通の土の話。土には荒れ地があります。耕しても、時間と労力の無駄だと見捨てられる土がある。でも、見捨てたらダメだと金次郎は言うわけです。荒れ地も徳を持って掘り続けないといけない。荒れ地なるがゆえに、相当深いところまで、巡り会うまで掘り続けないといけない。そうすると、農民は大きな徳に出会える。見当違いのところに損得があったりする。問題児と言われる社員も、上が見放しちゃダメなんですよ。根気よく、相手のいいものが見つかるまで掘り続けないといけない。それが、大きな徳を生む可能性を秘めているんです」
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