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  講師の心.com > 講師マガジン 「人」 >スペシャルインタビュー 童門冬二
 
Keywords
  1) まずは自分を確立する。足りないところを歴史で補強する。
  2) リーダーの意識と行動で、組織は変わる
  3) 「誰かさんのために」という思いを組織全体で持てるか


「誰かさんのために」という思いを組織全体で持てるか

―今の状況というのは、歴史に例えると、どんな時代に当たるのでしょうか?
童門冬二

 「ひとつはやはり『戦国時代』でしょうね。これまでの日本式経営の根幹にあったルールやマニュアル、日本的な信条主義が棚上げになってしまった。能力主義や実績主義になり、数字が力を持つようになった。下が上を超える、下が上に勝つような下剋上の風潮ができてしまっている。もうひとつは、『幕末開国時代』でしょう。この時代は、時代が大きく変わったという意味では、『第二の戦国時代』といってもいい。第一の戦国時代では、武器や勇気がモノを言いました。誰が戦争に強いか、という合戦によって結果が出たわけで、学問などいらなかった。ところが、第二の戦国時代は、言論の自由が広まり、思想、考え方、表現力、言葉が必要になった時代です。今という時代は、これら2つの時代に、『IT』を加えたものだと思います。ITの登場は、21世紀特有の現象でかつての日本の歴史にはなかったことを引き起こしています。結果的に、第一の戦国時代と幕末開国時代にITが加わった3つの要素が複合した時代になっている。

  ITの登場で何が出てきたのかといえば、子どもから大人まで、うるさい人間が増えてしまったということです。注文が多くなった。簡単にたくさんの情報が入るようになり、自分が生きていく上で必要なモノやサービスを選ぶモノサシを、ITで得てしまったわけです。だから、みんな一家言を持つようになった。それに応えなきゃいけない。企業は、選ばれるということを承知の上で、モノやサービスを作っていかないといけない。それには、こういう品物なら××、という顧客との信頼関係が必要でしょう。『〜なら』という『らしさ』です。そしてこれは、無機物が作るのではなく、人間が作るんですね。したがって、作っている人間も『〜なら』と言われて選ばれる『らしさ』を持たないといけない。個人も、この仕事ならキミに任せられるという力が求められる。企業も個人も、××さんの言うことなら今回はお世話になろうと言わせるだけのものを作らないといけないということです」

―――では、こんな時代のリーダーには、どんな要素が求められてくるのでしょうか?

 「大分県知事だった平松守彦さんが、かつて『グローカリズム』という考え方を提唱されていて、私は強く賛同しました。彼は一品一村運動を行い、姫島のエビや椎茸などをブランド化した人です。農作物でも、グローカリズムを持って作らないといけない、と。これは3つの言葉からなる造語なんですね。まずは『グローバル』、国際感覚を忘れない。次が『ナショナル』、国内問題に関心を持つ。その上で『ローカル』、大分県を意識する。大分の片隅で仕事をするにしても、国内・国際関係を欠いたら生きていけないということです。平松さんは物事の本質を早くから突いていました。

 このグローカリズムを分解すれば、これからのリーダーには何が必要なのか、具体的な要素が出せます。先を見る力『先見力』、その元になる『情報力』、それを分析する『判断力』、多くなる選択肢からチョイスする『決断力』、決めたことを実行する『実行力』、そしていずれも人間の生身の行為だから健康でなくてはならないから『体力』。これが、グローカリズムを分解すると見えてくるリーダーの条件だと私は思っているんです。そしてここに、『〜なら』と言わせる『らしさ』を加える。 でも、このすべてを完璧に持っていることは難しいでしょう。実際、歴史上の人物でもそうだった。武田信玄、上杉謙信なら『体力』が欠けていた。信玄は51歳で肺病で死んでしまうし、謙信は酒の飲み過ぎで血管が切れて49歳で死んでしまう。ところが、信玄も謙信も、武田軍団、上杉軍団と呼ばれる結束を誇るわけですね。親方のためなら討ち死にしてもいいというやつばかりがいた。『〜なら』と許せる「らしさ」が、健康を欠いてもあまりにあるほどの状態を作ったということです。組織全体がトップリーダーのオーラによって、モラルややる気に満ちてしまったわけです」
童門冬二

 ―――やはりリーダーによって、組織は大きく変わる、ということですね?

「一番大事なのは、何のために仕事をしているか、です。誰かさんのために、という思いを持てるか。それを組織に持たせることができるか。会社には、創業者が会社を始めたときの理念が必ずあるはずなんです。何のために会社を興し、事業を始めたか。これを上の人間が忘れずに、常に社歴の浅い若い人に植え付けていくことです。部下は、何のためにやっているのかという方向性がなければ、何をやっていいか、わからなくなっていく。さらに、自分が何に貢献しているのか見えずに、自分の存在意義が確認できなくなる、これでは辛いですよね。自分の仕事で誰かが喜んでくれている。リーダーは、それを部下にしっかり認識させることです。
 
  私が講演をするのも、本を書くのも、誰かさんに喜んでもらいたいから。その一言に尽きます。それだけなんです。講演を聴く、あるいは本を読む方の全員とは言わない。何人かの方が、私の話を会社に持ち帰り、それをみんなで共有してもらえたならば、こんなにうれしいことはない。パテントなんかありませんから、どんどん話をして下さっていい。童門が言っていた、なんて言わずに自分のものとして話せばいい。大事なことは、その話が生きていくことですから。たくさんの、人の役に立つこと、ですから」

――本日はお忙しい中、貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございました。

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取材・文:上阪 徹 /編集・写真:田中 周子
(2009年12月 株式会社ペルソン 無断転載禁止)  
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