 |
――西岡さんといえば、日本の大企業(シャープ)からアメリカの半導体大手インテルへの転身が大きな話題になりました。実際に転身されて、何が違うとお感じになったのでしょうか? |
企業文化が違いましたね。例えばミーティング。日本の大企業では、会議の前に根回しが済んでいて、会議の時は議論がもう終わっていますね。だから、本番の会議では幹部以外の発言は期待されていません。
一方、根回し文化のないインテルでは、本番の会場でものすごい議論をします。給料の高い人間が集まるのは、現提案にバリューアッドするためです。入社して初めて出た戦略会議で、日本インテルの来期の戦略をプレゼンテーションした時のことですが、スタートして3分も経たないのに質問が飛んで来ました。しかし、その場に質問者がいない。どこからの質問かというと、電話会議システムでイスラエルから質問が飛んできていたのです。インテルの会議は、バンバン来る質問や意見に適切に応対し、バリューを頂戴してキチッと持ち時間を守ることが求められる場なんです。適切な応対とは、適当に場を持たすことではありません。良い意見は受入れ、現提案をより良くしていく態度が求められます。
意見を聞いて、「Good point!」と練りに練って用意した資料をその場で修正して「Thank you! Anything else?」と、もっと良い意見を真剣に求めるのです。日本では考えられませんよね。会議の目的は出席者の積極的な参画で現提案をBrush Upすること。大変新鮮でした。
|
――発言することがいいことだ、それがプラスにつながるんだ、という発想なんですね? |
日本の会議で発言が少ないのはもうひとつ理由があって、日本企業は何でもかんでもやりたがる総合メーカーが多い。そうすると重要な会議に出ても、必ずしも的確な発言ができるわけではないんです。例えばシャープの場合、コンピュータの部門長が冷蔵庫の部門長にバリューアッドするのはなかなか難しいですからね。そうすると、自分たちでわかってることを言うしかない、ということもある。そもそも、他の部門からの発言は期待されていない。だから、自分の領域だけ順番にしゃべる、報告するだけになるということが多くなるんです。
外資の場合は選択と集中が進んでいます。インテルならパソコンに集中しているので、みんながパソコンについてわかっているのです。理解している者同士が議論するから密度が濃くなるし、いいアイディアが出てくる。選択と集中というのは、こんなところでも利点があるんです。
|
――専門家というところでは、そもそも西岡さんはコンピュータの専門家でしたが、半導体の専門家ではなかった。それでもインテルは、西岡さんを迎えられたんですね? |
誘われたとき「僕は半導体は知りませんよ」と言いました。それに対してアンディは、「インテルには半導体の専門家は山のようにいる。日本では何故ワープロばかりが売れてパソコンが売れないのだ。どうしたら日本にパソコンを普及させる事が出来るのだ。それが出来る人が欲しい」と。当時の日本はワープロ全盛で、パソコンの市場はたったの130万台。『ワープロの市場をパソコン市場に変えるためにインテルに来てくれ』という訳だったんです。パソコンのCPUとしてほぼ100%のシェアだと言っても、パソコンの出荷が130万台だったらインテルが幾ら頑張っても130万個しか売れません。シェアが高いのも苦しいものですよ。シェアが10%なら頑張って20%にすることが出来ます。売上倍増ですよ。しかし、シェアが100%近いと言うことは、パイ(市場全体)を引き上げるしか売上を増やす手段はないのです。A社への販売数が増えてもB社で減るだけ、やっぱり合計は130万個です。その中で、ワープロ→パソコンへと市場を転換するというマーケティング活動は、凄くエキサイティングな仕事だと思い、誘いを受けました。
ですから、パソコンメーカーに行って、もっと買ってくれという営業は副社長に任せてしまって、パソコンの普及活動に専念しました。マイクロソフト株式会社の古川享社長(当時)とも良く協力し合って、『なぜパソコンが便利か』、『電子メールを真に戦略的活用する方法』、『インターネット活用法』などなど、強面と言われたインテルのイメージから、一般の人にもわかるような優しいイメージを日本で作っていきました。結果、『Intel inside』というキャッチフレーズがどんどんマスコミに出て、インテルの名が新聞に出ない日はないと言われる一世代を作れたと思います。入社したときの130万台市場は、退社の時には10倍になっていましたから。
|
|