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梶原 しげるのコラム「すべらないコミュニケーション」
梶原 しげる
梶原 しげる(かじわら しげる)
フリーアナウンサー/東京成徳大学 客員教授

アナウンサーとしてメディアで活躍する一方、大学院に進学し心理学修士号取得。カウンセラーの資格を持ち、精神科クリニックなどでカウンセリング業務を現在も担当。実践コミュニケーションに着目した著書『口のきき方』は、中学生の国語の教科書に取り上げられる。現在、東京成徳大学応用心理学部客員教授や日本語検定審議委員を務める。

 梶原 しげる講師詳細プロフィール
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Vol. 5 『質問させる技術―(1)』
(2009年08月20日)
ある著名な先生は、騒がしい教室に姿を現すと、そのまま教壇の上に座り胡坐をかく。その異様な光景にそれまでざわついていた学生たちが雑談を止めて視線がその先生に集まり始める。先生はしばらく無言で隅から隅まで教室中をなめまわすように視線を配った後ドスの利いた声で「何か質問は?」。
これで、学生は静まり返り、室内は一瞬にして凍りつく。
その先はこの緊張感のおかげでスムーズな授業が展開される。

と、こんなような話を何かで聞いたことあります。

いずれにしても先生の「つかみ」はOKです。
ざわつく学生、集中力を欠いた連中の気持ちを引きよせ、有無を言わせず話を聞かせるためにプレッシャーをかける作戦大成功です。

成功のポイントは、先生の思いもよらぬ行動と、そしていきなりの「何か質問は?」という鋭い問いかけです。「質問は?」という問いと共に、視線を向けられると、人は強い緊張を強いられます。この先生の場合は、聞き手を黙らせるのを目的にした脅し文句としての「何か質問は?」ですから、言われた方は逃げ腰になるのが当然です。

しかしそんな特殊なケースを除いても「では最後に、何か質問は?」と問われて、無邪気に「はい!」と手を挙げ口火を切る勇気のある人はそんなに多くありません。私がお話させて頂く講演会でも、講話の最後に質疑応答の時間を設けてくださるのですが、やはり『シャイ』な聴講者が多い。

「変なことを聞いたら叱られるんじゃないか?」
「的外れな質問でみんなの笑いものになりはしないか?」
「そんなことも知らないのかと、馬鹿にされるのではないか?」
「質問がしどろもどろになってしまうかもしれない、上がっちゃいそうだし」
「目立ちたがり屋だと思われて、皆に嫌われたら損だ」
「やだ、こっち見ないで!」
「そこのお前!なんて私のことを指名しないで!」

「最後に何か、質問は?」の一言で、聞き手が急に、檀上の講演者から視線を外し、下を向き、早く時間がたってくれないかと、気もそぞろで、それまで聞いた話の内容さえどこかに飛んで行ってしまう、なんて言う最悪な事態も考えられます。

しばしの気まずい沈黙の後、主催者が「この貴重な機会ですから、遠慮なく伺いましょう!」と、必死に声を上げれば上げるほど、受講者は黙ってうつむくばかり。中には帰り支度をはじめ、講演者は自らの力の足りなさを深く反省し、ちょっぴり落ち込む。よくあるパターンです。

話し手にとって、聞き手からの適切な質問ほど、ありがたいものはありません。
言い足りない部分を補足できたり、誤りを訂正したりするチャンスでもあるからです。なによりたくさんの質問がもらえるということは、聞き手の「とても興味がありました」、「もっと聞きたい」、「まだまだ聞きたい」という「熱い支持」の現れです。つぎつぎ質問者の手が挙がることは、しゃべり手の自尊心を満足させてくれるものです。

では、本当に質問してほしい、と思った時にはどうしたらいいのでしょうか?

ドスの利いた鋭い調子で「何か質問は?」などと言ってはいけないことはもうお分かりですね。話し手が聞き手をにらみつけるように言う「質問は?」は、「何か文句あるか?」と同じ意味をもつものだとこころえましょう。

「高額の聴講料を払っているから元を取りたい」
「ここで質問しておかないと出世に響く」
「話し手の大ファンだ」など、聞き手のモチベーションがたいへん高い場合を除いては、質問を受け付けるために様々な工夫と技術が必要です。

大きく言うと前提になるポイントは3つあります。

1つ目は、自分の話すテーマと中身が、質問に値するものであること。
2つ目は、全体を通じて、聞き手とのリレーション(よい関係性)を取り続けること。
3つ目は、より良いリレーション作りのための、話し手の自己開示ができていること。

この3つのポイントをベースに、冒頭で具体的なインストラクション(指示)をしておきます。

3つのポイントと、具体的なインストラクションについては、次回じっくりお話しすることといたします。
みなさんなら、どんな点に注意して話せば、たくさんの質問をしてもらえるか?
ちょっと考えておいてくださいね。


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