川口 雅裕(かわぐち まさひろ)
人事コンサルタント
株式会社リクルートコスモス(現株式会社コスモスイニシア)人事部にて、採用、労務管理、教育研修、人事制度の設計などに従事。経営企画室で広報課長としてメディア対応、IR活動を行う。現在は主として中堅・中小企業を対象として、組織人事コンサルティングを行うほか、人事分野の講演活動を積極的に展開する。
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Vol. 4 『「ウチは特殊だから...」と考える危険』
(2010年07月23日)
■「ウチは特殊だ」と思うとどうなるか
人事制度を構築(改定)するとか教育研修を行なうとか、そんなご依頼をいただき、内容を一緒に検討しておりますと、お客様から「うちの会社は、......といった特殊な部分があるから」、「この業界は、......という面で特別だから」といった話が出ることが非常によくあります。確かに、事業環境や業界の慣習、会社の歴史や経営者の思想、従業員の状況などを見れば同じ企業は二つとないわけで、制度設計においても研修をするにしても、その独自性を大切にすべきなのですが、「ウチは、この業界は、他とは違うんだ」と思い込むことによるデメリットは小さくありません。
「ウチは、この業界は、他とは違うんだ」という考えは、業界特有の発想や方法から抜け出せていないので、同業他社との差別化が実現できない(同業他社と同じようなことを繰り返す)という結果になりがちです。また、自社にある歴史や前例にこだわるということは、環境変化に適応するのに必要な変革・改革につながらなくなりがちです。何のために制度を変えたり、研修をしたりするのか。単に不満を抑えたり、確認テストをしたりするくらいのことなら独自性にこだわれば良いでしょうが、競合優位性を高める、人を育てる、業績を上げるといった成果を求めるのであれば、独自性や特殊性に配慮しながら、他業界に学ぶ、他社に学ぶという発想を持たねばなりません。
■共通点に目を向ける
そのために必要なのは、他業界や他社と自社の共通点に目を向けることです。以前に、ある有名ホテルの婚礼営業部の方から「ウチの営業担当者にマンション営業のノウハウを吸収させたい」という話がありました。聞いた瞬間は私も「?」となったのですが、曰く、
(1)契約してから実施(入居)までの期間が長く、
その間の顧客フォローが大切である。
(2)一旦決めていただき、その後にオプションの提案をしながら
価格を上げていくという手法が同じである。
(3)立地という如何ともしがたい点を、いかにしてカバーするか、
納得してもらうかがポイントである。
(4)リピート客が想定できないので、口コミと紹介をいかに増やすかが大切だ。
といった点が共通しているので、敢えて他業界からそのノウハウを学びたいということでした。
こうやって共通点に焦点を当てると、自社や業界内にはなかった気づき・発見が生まれる可能性があります。自分たちがやっていることの妥当性やレベルをチェックする機会にもなるでしょうし、そこから工夫やヒネリや新手法が出るかもしれません。「特殊だ」と思いこんで内にこもり、こういった視点や刺激を得ることがないと、これまでやってきたことを徹底する、マニュアル化するという方向にしか思いが至らなくなります。「特殊でないこと」は必ずあるはずなのに、「特殊だ」と思い込む(共通点に目を向けない)ことによって、進歩・進化するチャンスを失っている会社は少なくないように思います。
例えば、一般的なビジネススキルを学んでいる社員に対して「ウチの業界ではちょっと使えないかなあ」、「ウチのお客さんには通用しないだろうなあ」などと言って、その学びを否定してしまっていませんでしょうか?他の業界にいる人達との交流で何かを吸収してきた社員の人に、「それは、その業界だからやれていることだろう。」と言っておられませんでしょうか?
その一方で、差別化だ、他社と違うことを考えろというのは無理・矛盾というもので、そのような要望をするのであれば、「ウチは特殊だ」と思わず、自ら他業界や他社との共通点に目を向け、積極的にそれを吸収していかねばなりません。