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小杉 俊哉のコラム「企業を変える人材マネジメント」
小杉 俊哉
小杉 俊哉(こすぎ としや)
株式会社コーポレイト・ユニバーシティ・
プラットフォーム代表/ 慶應義塾大学大学院准教授

現在、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科准教授、株式会社コーポレイト・ユニバーシティ・プラットフォーム代表取締役社長、その他数社のベンチャー企業社外取締役を務める。

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Vol. 3 『支援・自律 その(2) ~会社の支援』
(2008年06月05日)
自律した人材が、自律的に働くためには、本人の自覚だけではなく、そうすることが組織において支援されている必要があることは言うまでもありません。昔から「お客様は神様です」と言いますが、そのお客様に仕えるのは、顧客接点のある現場の第一線の社員です。そして、その社員を支えているのが、管理職層であり、さらにその管理職層を支えるのが経営層と通常の組織図とは逆になるので、よく逆ピラミッドに例えられます。しかし、言うは易し行うは難しで、本当に実行している企業はどれほどあるでしょうか。

有名なのは、ホテルリッツカールトンの例でしょう。金額の上限はありますが、お客様のためになると判断すれば、上司の了解を得ることなく担当者が自らの判断で行動できるよう権限が委譲されています。たとえば、通常朝7時と決まっているホテルのプールの開場時刻をお客さんの要望に応えて30分早める、とか、お客さんの重要な忘れ物を東京から大阪まで新幹線に乗って届けにいく、と言うような例です。他にも、米高級百貨店のノードストロームや、スターバックスなどが自律的組織の例として有名です。

このような、現場の第一線の社員が自律的に動けるということは社員のやりがいや、やる気を引き出すということだけではなく、企業戦略としても極めて重要になっています。それは、顧客にサービスや商品そのものを提供して対価を得るというビジネスがどんどん成り立たなくなっており、代わってソリューションや、付加価値に対して対価を得るというモデルに移行しているからで、これは第1回に詳しく述べた通りです。

では、自律的組織の要件とはどのようなものでしょうか?まず、(1)「現場の第一線の社員が価値提供力をもっていること」です。そして、(2)「彼らが自律的に動くためには組織のビジョンや価値観が共有されていること」が必要です。これらがなければ、個々の社員がとる行動はバラバラになってしまう危険性があるからです。そして、(3)「社内に信頼関係が構築されていること」です。信頼関係がないところでは、自律的に動いて叱られたり、評価が下がったりするリスクがあるので、上司の指示に従っておいた方が無難です。さらに、(4)「上司の、支援的、コーチング的働きかけ」も欠かせません。そして、ただ自由にやらせるだけではなく、その成果をきちんと測るために、(5)「経営品質の指標とその運用」が必要です。スターバックスの行っている外部調査員による不定期のチェック(ミステリー・ショッパーズ)などがそれです。

話は変わりますが、ハーバード・ビジネススクールのジョン・コッター教授や南カリフォルニア大学のウォーレン・ベニス教授らが定義しているとおり、マネジャーとリーダーの役割は異なります。マネジャーは、処理、維持、組織構造に注目、統制に依存、いつ・どのように、何かのコピーという「How」が課題となる。一方、リーダーは、確信、開発、人に注目、信頼の構築、なぜ・何を、自分のオリジナルという「What」が課題となる。したがって、変革を推進するのがリーダーであり、現在のシステムを上手く機能させ続けるのがマネジャーであると。ただし、組織にリーダーとマネジャーが別々にいるのではなく、一人の人間がリーダーシップ機能とマネジメント機能の両方をこなさなければならないのです。

ここで、リーダーシップとマネジメントの話を持ち出したのは、自律型組織においては、上位者はビジョンを提示し、部下のやる気を高めるなど、よりリーダーシップ機能を多く用いる必要があるからです。すなわち、『管理』ではなく、『支援』が鍵になるということです。

ジョン・コッターの言葉を引用します。 「変革を成功に導くのはリーダーシップであり、マネジメントではない。」 「マネジメントとリーダーシップを同義と考える人は、変革をマネジメントの手法で推進しようし、コントロールしようとする。これでは・・・変革を乗り切ることはできない」(「21世紀の経営リーダーシップ」ジョン・P・コッター著、梅津祐良訳、日経BP社)。つまり、マネジメントとリーダーシップは似ているようで、実は違うのです。企業を変えるためには、マネジメントによって社員を『管理』しようとしても上手くいかず、リーダーシップを使って『支援』することが必要なのです。


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