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小杉 俊哉のコラム「企業を変える人材マネジメント」
小杉 俊哉
小杉 俊哉(こすぎ としや)
株式会社コーポレイト・ユニバーシティ・
プラットフォーム代表/ 慶應義塾大学大学院准教授

現在、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科准教授、株式会社コーポレイト・ユニバーシティ・プラットフォーム代表取締役社長、その他数社のベンチャー企業社外取締役を務める。

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Vol. 9 『ストローク』
(2008年12月05日)
前回、部下の動機に働きかけるツールとして、エンパワーメントを紹介しました。今回はもっと簡単に、日常の中で意識さえすれば直ぐに出来ることをお伝えしたいと思います。

あなたは、人から「おまえは、取るに足らない奴だ」とか「おまえは、存在している意味がない」と言われたら、あるいはそのように扱われたらどう思いますか? ごくまれには、そう言われると嬉しい、燃える、という人がいるかもしれませんが、多くの人は、落胆したり、反発したり、そのようなことを言う相手には憎しみさえ抱くことがあるでしょう。

さて、あなたは人に対してそのようなことを言ったり、したりしていないでしょうか?「そんなことはあり得ない」と思うでしょうね。でも、以下のようなことを人に対してしたことはありませんか?

 皮肉を言う、嫌みを言う、けなす、嘲笑する、冷笑する、目をそらす、
 顔をしかめる、そっぽを向く、仲間はずれにする、無視する、陰口を言う、無関心

これらは、『ディスカウント』と言われる行為です。『ディスカウント』は値引きですから、人間関係の値引き、すなわち人間関係を無くしていく働きかけです。あなたは、人に対してこのようなことを言ったり、したりするのは、すなわち、相手を取るに足らない奴と捉えたり、存在を消し去ろうという働きに他なりません。

もし、このようなことを、部下や、家族に対してしていたとしたら到底良い関係が築ける筈はありませんよね。さすがにこのようなことはしていないと思う方は、以下はいかがでしょうか?

 (相手と話している最中に)携帯メールをチェックする、
 ちらちらと時計の時刻を気にする、欠伸をする

これらも、相手に対して全く同様の影響を持つ『ディスカウント』です。無意識にそのようなことをしていることはありませんか?もし、顧客との重要な打ち合わせでこのようなことをしたら、即アウトですよね。

これらの行為の怖さは、無意識にしている可能性があるということです。その証拠に、研修で「これらの行為を研修中にしていませんか?」という私の質問に対して受講者のほとんどの人は、あまり自覚を持っていません(講師である私は、これら多くの『ディスカウント』をされていると強く感じているにもかかわらず、です)。

一方、ディスカウントの対極にあるのが『ストローク』です。これは、以下のような行為です。

 会釈する、挨拶する、微笑む、手を振る、話しかける、身を乗り出す、
 褒める、励ます、相手の目を見る、相手の話を良く聴く、労う、信頼する、任せる

前回のエンパワーメントも、この『ストローク』の一つなのです。人間は4歳までに人からストロークを受けないと、精神に破綻を来すそうです。それは、大人でも同様です。誰からも相手をされず、無視され続けた人たちが、自己存在のアピールのために犯罪に走るというのは、昨今の事件を見ても明らかです。

ですから、あなたがもし人の動機に働きかけ、良い関係を築きたいのであれば、あなたから、『ストローク』を心がけ、『ディスカウント』をしないことです。米メアリー・ケイ・コスメティックスの創業者メアリー・ケイは、こう言っています「顧客でも従業員でも誰もが、『私を重要な人物として扱って』を首からプラカードをぶら下げています。その気持ちを満たしてあげれば、あなたはビジネスにおいてのみならず、人生において成功できます。」と。

 そういうと、「顧客は分かる。でも、部下に対しても、いつもヨイショしていないといけないのか?」と疑問をもつ人もいると思います。上記に挙げた『ストローク』は、実は『肯定的ストローク』です。『否定的ストローク』というものもあり、それは、以下のようなものです。

 叱る、注意する、反対する

部下を注意出来ない上司が増えていると言います。時に『否定的ストローク』は必要です。では、『否定的ストローク』と『ディスカウント』の違いはなんでしょう?それは、『ディスカウント』が人間関係を無くしていく働きであるのに対して、『否定的ストローク』は、相手の存在を認めた上で否定的に働きかけるということです。人によっては、『否定的ストローク』には『愛』がある、と表現します。『ディスカウント』がなく『ストローク』に満ちた組織、社会は皆が活き活きと前向きに毎日を過ごしていることが容易に想像できますよね。


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