小杉 俊哉のコラム「企業を変える人材マネジメント」
小杉 俊哉(こすぎ としや)
株式会社コーポレイト・ユニバーシティ・
プラットフォーム代表/ 慶應義塾大学大学院准教授
現在、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科准教授、株式会社コーポレイト・ユニバーシティ・プラットフォーム代表取締役社長、その他数社のベンチャー企業社外取締役を務める。
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Vol. 10 『感情-喜怒哀楽』
(2009年01月05日)
前回ストロークのお話をしましたが、今回は「感情」について考えたいと思います。
管理職の立場にいる人の中には、仕事ではできるだけ感情を表さない方がよいと思っている方が少なからずいます。部下が頑張っていても、「良くやった」、などと下手に褒めてつけ上がられては困ると、嬉しそうな顔を見せないようにする。逆に、部下が全くとんでもないことをしでかしてしまい、はらわたが煮えくり返る思いなのに、下手に厳しく叱責して、逆ギレされたら困る、メンタルになったら困る、とその感情を抑えてしまう。さらには、自身が非常に落ち込んでいる様子を見せてはいけないと、そういうときにも普段と変わらないように突っ張っている、などなど。
でも、部下は上司との非管理者-管理者としての関係だけで働いているのではなく、役割、役職だけでは規定されない日々の人間としての営みから生ずる人間関係のなかで働いているのです。だから、上司が人間として尊敬できるのか、信頼していいのか、ということを意識しています。完璧にほど遠く、欠点だらけだけど愛すべき人物で、だから自分たちが助けてあげたい、フォローしてなんとか成果を上げさせたい、と部下達が思う上司っていますよね。得てしてそういう上司のいるチームは非常に一体感があり、みな活き活きとしており、当然成果も上がっています。「人間力」という言葉が最近よく使われるようになっていますが、それはこのような当たり前のことがようやく意識されるようになってきたからです。
日本のビジネス・シーンには、喜怒哀楽が非常に少ないと感じます。嬉しければ嬉しそうにすればいいし、楽しければ楽しそうにすればいい。また、悲しければ悲しい感情を抑えることはないのではないでしょうか?そして、怒りを感じたらそれを表現してもいいのです。
ただし、怒りの感情だけは、表現のルールがあります。それは次の二つです。
(1)怒りの感情は単独で。軽蔑、嫌悪の感情と一緒に表してはいけない。
(2)怒りの感情の対象は、状況、結果、相手の行動に対して。相手の存在、人格に対して表してはいけない。
たとえば、部下の対応の拙さからお客様を怒らせてしまった、重要な取引が反故になってしまった時などのケースで、
「なにをやってんだおまえは!だから、いつも言っているだろう、おまえはなっていないって。おまえは、この仕事に向いていないんじゃないのか!おまえなんて辞めちまえ!」
これは、実際にある人が上司から言われた言葉です。しかも日常的に言われるそうです。こんなことを言われて、反省し、もっと頑張ろうと思えるか、です。上司は、自分の感情を吐き出しているだけです。前回の話で言うと、完全なディスカウントです。
では、どうしたらいいのでしょう?
(1)、(2)を合わせると、怒りの感情単独で、状況、結果に対して表すので、
「なんでこういうことになったんだ!得意先が困っているあのような状況で、おまえが得意先に対してああいう言い方をするのはないんじゃないか?!俺はとってもガッカリしたよ!」
相手の、ある状況で、した・言ったことに対して、自分の感情を表現することで、相手に逆ギレされたり、ディスカウントされたりすることは一般にないはずです。それどころか、こういう言い方をされたら、その場で直ぐにというわけにはいかないかもしれませんが、時間が経てば反省し、行動を改めるようすることに繋がる可能性が高いのではないでしょうか?そして、そういう表現をしてくれた上司にきっと感謝するはずです。さらに、「おまえらしくないじゃないかっ!」という普段のその人の承認を加えてあげられれば更心に響くのです。