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生井 利幸のコラム「 勝利のための発想法」
生井 利幸
生井 利幸(なまい としゆき)
生井利幸事務所代表

11年の海外生活において主にアメリカの大学で教鞭を執る一方、在ニューヨークの企業を中心に法務・経営・ビジネス戦略に関するコンサルティングを行う。帰国後は、作家として多方面において執筆・講演等を行う。

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Vol. 50 『世界中のグレートコミュニケーターは「間の概念」を熟知している』
(2008年08月02日)
「間の概念」は、日本では主に、
歌舞伎や能などの伝統芸能に用いられるものです。
即ち、個々のパフォーマンスは、それを続けざまに表現するのではなく、
特定の場面において空白の部分をつくることによって、
ある種の余韻を残す作用がそこにあるわけです。

「空白に"意味"がある」、即ち、「空白をつくることによって"意味"を深める」
という表現方法は、まさに"洗練されつくした美的センス"というべきでしょう。
私は、この「間の概念」は、国内外を問わず、
現実のビジネスコミュニケーションにおいても極めて
大きな威力を発揮するものと捉えています。

例えば、アメリカ国内で、
シカゴのビジネスパーソンが商用でニューヨークに訪れるとき、
ニューヨークのビジネスパーソンに対して、
「ニューアーク国際空港からマンハッタンまで何分ぐらいで行けますか?」
と尋ねたとします。

通常の人であれば、シンプルに、"It takes about 30 minutes."と答えるでしょう。
しかし、この答え方では、それを聞いた相手は、ただ聞き流すだけとなります。

しかし、先に述べた「間の概念」の効用を用いることにより、
上記とまったく同じセンテンスを用いて、"極めて劇的に"、
「30分で行ける」ということを強調することができます。

即ち、上記センテンスを話し手が発する際に、話し手は、
ただ単に"It takes about 30 minutes."と発するのではなく、
まずはじめに、"It takes about"と言った直後、心の中で1,2,3とカウントし、
そして、ゆっくりと"30 minutes."と言うのです。
そうすることで、「ニューアーク国際空港からマンハッタンまで
"たったの30分"で行ける」
という意味合いをダイナミックに強調することができるのです。

言葉は、同じセンテンスであっても、言い方一つで、
その「意味合い」「ニュアンス」が大きく変わってきます。私の考えでは、
優れた国際コミュニケーターになるための条件とは、
単に英語が喋れるということではなく、
このあたりの「感性」(sensibility)に優れているという点にあるのだと思います。

これは、何も、英語を喋るときにのみに言えることではありません。
日本語によるビジネスコミュニケーションにおいても、
極めてダイナミックに威力を発揮します。

例えば、日本企業同士における日本語での打ち合わせ。
通常、仕事に熱心なビジネスパーソンは、打ち合わせの時間において、
終始、真面目に無我夢中で話をするものです。
しかし、話す本人がどんなに仕事に熱心な人であっても、
何の隙間もなく続けざまに話をしているのでは、
それを聞いている相手は、心の中で次第に疲労感を感じるようになり、
場合によってはそれを聞くのが苦痛になることもあります。

優れた話し手は、話をする際に、適度に「間」をとります。
何も喋らない空間を適度につくることによって、
打ち合わせにもメリハリがついてきます。
そして、さらには、受け身である聞き手自身においても「心の余裕」が生まれ、
聞いている案件について「自分も一緒に考えてみよう!」という
ポジティブな意欲がわくこともあります。

ビジネスコミュニケーションにおける「間」の概念の使い方は、
実際、言葉で述べる以上に難しい技であるといえます。
では、「ビジネスコミュニケーションにおいて一体どのように
"間の概念"の使い方を学んでいったらよいのか」、
大抵の人であれば、このような質問を投げ掛けたくなると思います。
私が思うに、その答えは、たった一つです。

そのたった一つの答えとは、
「自分なりに"実務経験"、"人生経験"を積んで学んでいくしかない」ということです。
まさに、"No pains, no gains."(苦労することなく何かを得ることはできない)
ということではないでしょうか。

柔軟性のあるビジネスコミュニケーションスキルというものは、
日々のビジネスシーンにおいて、
"場数"を踏みながら徐々にアップグレードさせていくものだと私は考えます。
「経験こそが学びの母である」という考え方は、
世界中のグレートコミュニケーターが説く"共通の理"であるといえます。


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