生井 利幸(なまい としゆき)
生井利幸事務所代表
11年の海外生活において主にアメリカの大学で教鞭を執る一方、在ニューヨークの企業を中心に法務・経営・ビジネス戦略に関するコンサルティングを行う。帰国後は、作家として多方面において執筆・講演等を行う。
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Vol. 57 『あなたは自分のポケットマネーでオフィスに花を飾れますか』
(2009年02月27日)
会社には、様々な個性・持ち味を備えた人々が働いています。ポジティブ思考の人、ネガティブ思考の人、やる気のある人、やる気のない人など、人はまさにそれぞれです。
会社は本来、営利追及の場所。そうした観点から述べるならば、どのような会社組織であろうとも、本来、「利益は一円でも多くしたいとする一方、支出は一円でも少なくしたい」というのが経営者側の本音というものですね。
しかし、実際、会社組織を実質的に動かしているのは、"生きた感情"を持った一人ひとりの社員です。会社組織を繁栄させるためには、まず第一に、「一人ひとりの社員は"生身の人間"である」という根本認識が必要となるということは言うまでもありません。
社員は"生身の人間"。
当たり前と言えば当たり前ですが、よく考えてみると、実際、個々の社員を生身の人間として捉え、それぞれの社員が人間らしく働けるように工夫を凝らしている会社は、そう多くはないのではないでしょうか。
通常、会社は、社員に人間らしい生活を保障する目的で、組織としての福利厚生を十分に整備する努力をするものです。組織が与える福利厚生はそれなりの意味があるものだと思いますが、少し突っ込んだお話をすると、会社組織にとって本当に大切なものは、組織が社員に何を提供するかということではありません。私の考えでは、会社において真に大切なことは、「一人ひとりの社員が、他の一人ひとりの社員とどう向き合い、どう協力していくか」ということであると捉えます。
この問題について、さらにわかりやすく述べるならば、「会社のクオリティー(質)というものは、"個人としての社員"が、他の"個人としての社員"に対してどのように感謝の気持ちを持ち、いかにより快適な職場環境を醸し出していけるかということで決まるのだ」と私は考えます。
具体的に言うならば、例えば、会社の一社員としてのあなたは、自分自身のお金で花を買い、その花を会社のオフィスに飾ることができるでしょうか。
本来、オフィスは、会社のビジネスの本拠地であり、また、ビジネスの発信地としての役割を果たすステーションそのものです。そして、そのステーションで働く一人ひとりの社員は、先に述べた"生身の人間"そのものです。
昨年以来、日本経済は、景気の悪化に歯止めをかけることができず、現在、多くの企業において人員削減のみならず、オフィスの再構築を進めています。そうした中、今、最も軽視されている問題の一つは、「働きやすい職場環境を創造する」ということです。
思うに、働きやすい職場環境を創造するには、その責任を、組織にばかり依存しているのでは埒が明きません。大切なことは、「一人ひとりの社員が、他の一人ひとりの社員に対して温かい思いやりを示し、より健全で働きやすい雰囲気のオフィスにしていこうとするポジティブな発想を持つこと」です。
今、私が皆さんに提案したいことは、組織における自分の職位に限らず、人よりも少し早めに出勤し、会社の玄関やミーティングルーム、あるいは、社員が集まる共通スペースに花を飾ってみるということです。あなた自身、前向きの発想法を基盤としてそのような試みをするならば、次第に、オフィスに頗るフレッシュな空気が漂い始め、会社そのものにこの深刻な不景気を乗り越えるための限りないエネルギーが湧き出てくるものと想像します。
無論、「花を飾る」という行為は、例え話です。実際は花でなくても、一人ひとりの同僚に対する愛情の念を具現できる工夫であれば、どのような工夫でもいいと思います。
最後に、もう一度言います。会社組織は、"社員一人ひとりの汗と涙で動かしている代物"。そして、社員一人ひとりは、「常に、ものを感じ、ものを考える"生身の人間"」です。「生身の人間の集合体が会社組織である」という認識を持つならば、一体どのようにして会社の環境を整えていったらよいのか、自然とその答えが出て来ると思います。