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生井 利幸のコラム「 勝利のための発想法」
生井 利幸
生井 利幸(なまい としゆき)
生井利幸事務所代表

11年の海外生活において主にアメリカの大学で教鞭を執る一方、在ニューヨークの企業を中心に法務・経営・ビジネス戦略に関するコンサルティングを行う。帰国後は、作家として多方面において執筆・講演等を行う。

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Vol. 59 『講演は、その一つひとつが"生き物"と同じ』
(2009年05月08日)

先日、講演のため、大阪に行ってきました。講演当日は、午前中に、銀座にある私のオフィスから歩いて東京駅まで行き、そこから新幹線で新大阪駅に到着。講演会場まではタクシーで移動しました。

今回の講演時間は90分。テーマは、「営業・交渉に使えるコミュニケーションスキル」。講演では、「日々のビジネスシーンにおいていかにクライアントの心を掴み、より妥当な方法で交渉し、確実に商品を売ることができるか」という内容についてお話をしてきました。

私自身、講演をするとき、常に思うことがあります。それは、講演は何度行っても、「今回は申し分ない話ができた」「今回はパーフェクトな話ができた」と思うことはそう滅多にはないということです。

たとえ、講演主催者側から挙行した講演についてお褒めの言葉を頂戴したとしても、やはり、講演した本人は、「あのとき、もう少し工夫して話せば、さらに面白い話ができたのに!」と考えるものです。「人間は、皆、パーフェクトな自分を追い求める」、・・・いい意味でも悪い意味でも、人間は、決して現状に満足することはないのでしょう。

ここから、実際の話に戻します。

実際の講演においては、事前にどんなに丁寧に準備しても、講演の会場に入ると、そこは、「決してマニュアル通りにはいかない"生きた場所"」。たとえ、話すテーマが自分にとって相当慣れているテーマであっても、講演会場における"場の雰囲気"によって、導入の方法、話の内容(具体例)、話の切り口、聞き手の心の掴み方など、すべての点において、その場の雰囲気に応じて即座に調整する必要が出てきます。

たとえば、今回の大阪での講演で最も注意したことは、話をする際の「具体例の選択」。概して、講演では、理論的な話、あるいは、抽象的な話をしすぎると、会場では、講演を聴いている途中で眠くなってしまう人が出てきます。「60分から90分ほどの間、人の話を聴く」という行為は、"普通の大人"にとっては結構辛抱を要することなのだと思います。

思うに、講演をする者の課題の一つは、一にも二にも、「一体どのように工夫を凝らして話をしたら聞き手が興味を持って聴き続けてくれるか」ということ。この、「聴き続けてもらう」ということ、これは意外と難しいワザであると私は捉えます。

講演を聴きに来た人は、大抵、最初の10分は「せっかくの機会だから一生懸命に聴こう」と思い、講演者に対して相当な注意を向けます。しかし、講演がスタートして10分が経過したあたりから、「講演者の話に対する注意の向け方」が人によって異なってきます。

私自身、長年にわたり、海外、そして、日本で講演・講義を行ってきていつも感じてきたことがあります。それは、大勢の人々の前で話すとき最も難しい話のパートは、最初の導入でも最後の締めでもないということです。意外にも、最も難しいパートは、「中盤のパート」なのです。

「中盤のパート」、・・・このパートは、大抵は、"中だるみ"しやすいパートです。

言うまでもなく、講演会においては、最初と最後はかなり緊張感のあるムードが漂います。しかし、本当にいい講演とは、最初と最後がうまくいった講演ではなく、「"話の中盤"において、聞き手に対して、いかに自分が話す内容について興味を持たせ続けることができたか」ということで決まるのだと思います。

講演は、言うなれば「生き物」と同じ。

聞き手を感動させる講演をするためには、何度、講演を行おうとも、1)「自身の心の中で、常にフレッシュなスタンスを持ち続けること」、そして、2)「過去に口に出した話を安易に持ち出すのではなく、その都度、目の前にいる多くの人々が一体どのような話(具体例)を聴きたいのか注意深く考察し、常に、その場において"最もふさわしい話"をする」ということが大切なのだとしみじみと感じます。

著名な先生の話でも、聞き手が集中できるのは、"せいぜい最初の10分程度"。講演において最も肝心なことは、「その後、特に"講演の中盤"において、いかに聞き手の心を掴み続けていくことができるか」ということだと私は考えます。

聞き手の心を掴むだけでなく、「聞き手の心をダイナミックに刺激する講演をすること」、私は常に、このことを念頭において講演をしています。




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