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生井 利幸のコラム「 勝利のための発想法」
生井 利幸
生井 利幸(なまい としゆき)
生井利幸事務所代表

11年の海外生活において主にアメリカの大学で教鞭を執る一方、在ニューヨークの企業を中心に法務・経営・ビジネス戦略に関するコンサルティングを行う。帰国後は、作家として多方面において執筆・講演等を行う。

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Vol. 72 『理性的交渉の極意...「殺し文句」と「伝家の宝刀」』
(2010年06月10日)

交渉の場において、相手企業とのビジネスの行く末を決定づけるための技術として、「交渉のプロセスにおいて、いかに"殺し文句"を活用するか」という問題があります。

「殺し文句」、......それは即ち、文字通り、「たった一言で、相手企業の心を掴む文句」。では、交渉の場において、どのようにして「殺し文句」を使ったらよいのでしょうか。

殺し文句は、言うなれば、交渉しているその相手(企業)が、"その一言"を耳にしたそのとき、相手が「提示した契約内容・条件等の大筋」について納得し、その相手に"イエス"と言わせるための"決めの文句"。しかし、実際のビジネスシーンにおいて、巧みに殺し文句を使い、相手にイエスと言わせる技術を養うには、長年のビジネス経験、そして、実際の交渉シーンにおいてそれなりの場数を踏む必要があります。

海外でも日本でも、「営業」(sales)において共通する考え方は、「営業のプロにとって、売ろうとするその商品は、それがどのような商品であっても同じこと。営業を行うには、無論、商品知識が必要不可欠となるが、それがいかなる商品であろうとも、結局、その商品について、相手(企業)にどう感じさせ、そして、どう売るかということが営業における根本的な問題である」ということです。

「営業のプロは何でも売れる」、......その大きな理由は、"真の営業のプロ"は、

(1)「人間の本性を熟知している」
そして、
(2)「企業体(組織)の本性を熟知している」

ということができるでしょう。

「殺し文句」は相手企業にイエスを言わせるための交渉の技術ですが、ここで一つ、注意すべき重要な問題があります。それは、「殺し文句は言っても、決して"伝家の宝刀"を抜いてはいけない」ということです。

「伝家の宝刀」は、"いざ"という緊急事態に対応するときのみに使う"最も大切な宝刀"。即ち、この"宝刀"は、自分たちの生命が危険にさらされたときのみに使うべき"極めて貴重な代物"。

会社のビジネスが著しく"負の方向性"に向かい、「この契約を逃したら、もう会社の明日は無い」という極めて緊急な事態に直面していない限り、交渉を行う者は、そう易々と伝家の宝刀を抜くべきではないでしょう。

言うまでもなく、伝家の宝刀は、それを決して抜かないからこそ、その存在価値を維持することができる代物。通常の交渉のシーンでは、伝家の宝刀は、相手企業の手の届かない場所に大事にしまっておくべき代物ということができます。

今回は、交渉における「殺し文句」と「伝家の宝刀」の位置づけについて述べてみました。一般に、ビジネスパーソンは「殺し文句をどう使うか」という問題にその注意を向ける傾向にあると思われます。しかし、今回は、読者の皆さんにおいて、このコラムを通して、是非、「通常の交渉においては決して抜くべきでない"伝家の宝刀"」の存在意義についても考えていただきたいと願っています。

"理性的交渉術"として、「殺し文句」と「伝家の宝刀」の位置関係を自分なりに確立することができれば、日々の交渉において、"より奥の深い観点・立ち位置・見識"に立脚して相手企業と話し合いを進めることができるでしょう。皆さんが、自らの理性と感性を上手に活用し、より高いステージに立って交渉を進めていかれることを願っております。




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