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西川 りゅうじん「元気な会社・元気な地域の創り方」
西川 りゅうじん
西川 りゅうじん(にしかわ りゅうじん)
マーケティングコンサルタント

1960年兵庫県出身。米国フォーチュン誌でも『マーケティングの達人』と評されるなど、その分析力と企画力には定評がある。お披露目屋として、長きにわたり、様々な社会現象を巻き起こしてきた。アッシー、メッシー、ジモティといった流行語の造語で知られる。CNNでキャスターを務めた他、テレビ、新聞、雑誌でも活躍している。

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Vol. 3 『焼酎ブームの過去・現在・未来』
(2005年01月01日)
焼酎は日本の文化、「だいやめ」を世界に広げよう!

焼酎は私にとって日々の生活の一部である。飲み始めたのは、25年前の学生時代。友人に九州出身者が多かったのと、旅行の添乗員のアルバイトで九州各地を頻繁に訪れたのがきっかけとなって、焼酎にどっぷりとハマった。学生には安上がりで、早く酔えていいということもあり、当時は銘柄など気にもせず手当たり次第に飲みまくった。大分、熊本、宮崎をはじめ各県の様々な焼酎を頂いた。現在の焼酎ブームの中心である芋焼酎や黒糖焼酎も、鹿児島で浴びるほど飲んだ。

鹿児島の人達は「だいやめ」が日課だ。「だいやめ」とは、だれやめ、ダレるのをヤメる、疲れをストップすることを意味する。つまり、酒を飲んで一日の疲れを取って元気になって極楽じゃ!、ということである。地元産のサツマアゲ、キビナゴ、黒豚、ガランツ(魚の干物)を肴に飲むとイケる。

昨今は各地の色々な焼酎も飲む。奄美の黒糖焼酎はこたえられない旨さだし、沖縄の泡盛の古酒(クースー)は豆腐ようを爪楊枝で削りながら頂くのが最高だ。北海道のシソ焼酎や高知の栗焼酎、徳島のスダチ酎、佐賀のキャロット焼酎などなど飲み比べも楽しい。

外務省による経済交流促進のための講師派遣でブラジル(伯州)に伺ったのがきっかけとなり、現地の商工会議所の日系人経営者らと話す中で、伯州産の黒糖焼酎とも言えるので、"伯糖焼酎"(はくとうしょうちゅう)と私が邦訳を考えたピンガ(カシャーサ)も嗜む。

焼酎は日本の文化。胸を張って日本の蒸留酒、焼酎をチビチビとグローバルに広めて行きたい。ここ数年、焼酎の蔵元の社長と連れ立って海外に行き、パリなど欧米の星付きのホテルのBARやレストランに、焼酎を置いてもらうべく活動を始めている。シラク大統領も焼酎をとても気に入ってくれているようだ。

先日も、日本でもテレビでCMをやっているイギリスの掃除機メーカーのダイソン社の社長でもある、ジェームス・ダイソン卿にプレゼントしたところ、「信じられないくらいウマい!」と直接メールを頂いた。日本の焼酎が日本食や日本酒のように、世界の人々に愛される日が来ると信じて疑わない。


8年前、鹿児島県より現在の焼酎ブームの火付け役を依頼される

焼酎の人気がとどまるところを知らない勢いだ。今や焼酎の消費量が日本酒を上回るまでになった。この20年程の間にも甲類焼酎を割った酎ハイや麦焼酎のブームはあったが、今回の焼酎ブームの主役は芋やサトウキビを原料とした本格焼酎である。

10年前、東京や大阪の飲食店で芋焼酎や黒糖焼酎を頼む人と言えば、鹿児島や宮崎など九州の出身の男性と相場が決まっていた。

和食の店や居酒屋でも麦はあっても芋焼酎や黒糖焼酎は置いてない所の方が多かったし、置いてあっても「白波」だけだったもし、デートで女性が焼酎など注文しようものなら、男は恐れおののいて「失礼します」と逃げ帰ったに違いない。

それがこのところ、テレビや雑誌で女優やアイドルタレントが、「焼酎にハマってます!」と平気でカミングアウトするようにまでなっている。もはや全国津々浦々、老若男女が焼酎漬けと言っても過言ではない状態だ。

1996年以前にも、焼酎をはじめ酒類メーカーの全国組織である酒造組合中央会の本格焼酎講座の講師を務めるなど、焼酎の消費拡大のお手伝いをさせて頂いてはいたが、本格的にお手伝いするようになったのは、1997年に頂いた鹿児島県からの依頼がきっかけだった。

愛・地球博も誘致した、経済産業省に勤める旧知の松尾隆之氏が、当時、鹿児島県の商工労働部長に出向していた。その頃は全国的にワインブームで、芋焼酎や黒糖焼酎の売上は鹿児島県内でも九州全域でも芳しくなかった。バブル崩壊後の不況によるパイの縮小に加えて、さらに焼酎の酒税が上がることになった。また警察の飲酒運転に対する罰則も段階的にますます厳しくなることが決まるなど、まさに弱り目にたたり目という状況だった。

鹿児島県の薩摩、大隅、奄美をはじめとする島々にとって、芋焼酎や黒糖焼酎は非常に重要な産業である。農業、物流、建設、タンク等の機材、ガラス瓶、ラベルの印刷などに至るまで裾野は広い。

「ただでさえ不況で消費量が減っているのに、酒税が上がり、飲酒運転の罰則も強化されると、鹿児島の経済に大きなマイナスになる。東京などの大都市圏で芋焼酎や黒糖焼酎の消費に火を付けることができないか?」と相談を頂いた。

そこで、県のバックアップにより、焼酎のブランド化を目指す蔵元の集まりだった「鹿児島県本格焼酎銘柄確立対策協議会」を母体として、各々の蔵の代表者に集まってもらい、私が座長となって、「鹿児島県本格焼酎マーケティング研究会」を結成した。

東名阪などの大消費地の消費者にどうやったら芋焼酎や黒糖焼酎を飲んでもらえるのかを調査研究し、実際にPR活動を行い、効果的な営業手法を考案し実践することを目的に活動を開始した。

タブーへの挑戦だった。


時代がオセロのように変わるのを感じた

誰しも飲んだこともないジャンルの酒類をいきなり酒屋で買うことはない。飲食店で飲みつけてから自宅でも飲むようになる。そこで、厳しい外食不況の中でも伸びている、消費者の動向を知り尽くした有力フードベンチャーや飲食オペレーターの社長を講師に招いて話を聞いた。

「紅虎餃子房」などを経営する「際コーポレーション」の中島武社長、「ちゃんとフード」の岡田賢一郎社長、「えん」などを展開するBYOの楊文慶社長、「春秋」の杉本貴志代表をはじめ、友人知人の食の達人に鹿児島の焼酎を体験してもらった。

しかし、口にするなり多くの人から、「麦焼酎に替えた方がいい」、「クサい、ダサい、マズい」などと直接的にあるいは遠回しに言われた。蔵元たちは、「そこまで言うことはないだろう。オレたちの文化なんだぞ!」と怒った。そして、皆さん発奮した。私も気合が入った。さらに客観的に市場を調査した。

ハードリカー、つまりアルコール度数が高い酒類の市場動向はどうなっているのか?全体ではどんどん消費量は減っていた。

しかし、一部でも何か伸びているものはないかと調べると、スコッチのモルトウイスキー、要はスコットランドの地酒だが、それが全国的に、特に大都市の中心部で伸びていることが分かった。ジンとかウォッカなども一部の銘柄については伸びていた。それも飲み方は、オン・ザ・ロックか、もしくはストレートで飲まれていた。

そこに一つの気付きがあった。鹿児島ではたいてい焼酎は梅干しなどは入れずに六・四のお湯割りで飲む。「鹿児島と東京都心ではまったく市場が異なる。ロックとか水割りで飲んでキレのいい焼酎にしよう」と考えた蔵元がいた。あるいは、「ハマれば臭いがたまらなくいいのだが初心者にはキツい。

初心者にも飲みやすい焼酎を作ろう」と考えた蔵もあった。ビールも最初に飲んだ時は苦いだけ。ワインも一滴も飲んだことがない人に、ロマネコンティを飲ませても最初から旨いとは思わない。

そして、健康に良いことを証明するのが何よりも重要だと考えた。赤ワインの消費量が伸びたのはバブル崩壊後だった。不況になれば慣れ親しんだ酒類に戻るはずなのにだ。それはポリフェノールの抗酸化作用が喧伝されたからに他ならない。フランスで脳溢血とか心筋梗塞といった生活習慣病が少ないのは赤ワインの成分のポリフェノールの効果によるらしいとマスコミ、口コミを通じて広まったからだった。

同じように、「焼酎を飲んでいる人たちは長生きだ。何か効果があるに違いない」と皆、確信していた。すると研究によって、焼酎は赤ワインよりも血栓(血管内で固まった血液)をさらに1.45倍も溶かす効果があることがわかったのだ。ポリフェノールもワインに負けず含まれていた。また、蒸留酒なので、あまり悪酔いせず、翌日にも残りにくい。健康志向は焼酎の追い風になると確信した。

しかし、当時はまだ「焼酎が来る!」と言っても誰も信じてくれない状態で、様々なマスメディアで明言することは私にとってもリスクがあった。テレビ、ラジオ、新聞、雑誌の、私や商業開発研究所レゾンが関係しているコーナーをはじめ様々なメディアの方々にもご協力頂き、「焼酎は体にいい。ポスト赤ワインは焼酎だ!」とPRに努めた。

そして、研究会で講師を務めてくれた社長らが経営する、情報発信力の高い飲食店とタイアップしてキャンペーンを展開した。また、芸能人ご用達のあるお店のご主人を通じて、フミヤやキムタクをはじめとする有名人にもファンが広がって行った。志村けん、福山雅治など芸能界にも焼酎通が増えて行った。

そうこうするうちに有名ソムリエやバーテンダーにも浸透して行った。

各蔵元も商品開発に営業にPRにと本当に努力された。「コセド」をはじめとする酒屋や卸も無名な焼酎を飲食店に対して地道に販促してくれた。「鹿児島ブランド支援センター」をはじめ県庁の様々なバックアップも心強かった。その結果、大ブレイク。時代がオセロのように変わるのを感じた。市場を客観的に捉え、変化をチャンスとすることでブレークスルーが可能となったのだ。

鹿児島県との様々なご縁を頂き、御陰様で知事から「薩摩大使」の称号を頂いた。(「マグマ大使」みたいだが) 数多くの戦友と共に現在の焼酎ブームの一翼を担えたことは、長年の焼酎ファン冥利に尽きる。


焼酎人気を一過性のブームで終わらせない

しかしこの数年は、焼酎バブルの様相を呈しているのが心配だ。地酒やワインが一気にブームになって、一気にしぼんでしまった時と同じように、偽物が出回り、抱き合わせ販売が横行し、粗製乱造による質の低下も起こっている。芋焼酎の原料となるコガネセンガンも足りない状態だ。

この5年程の間に入社した営業マンは注文を断るか届けるだけが仕事になってしまっている。蔵元の社長の中には舞い上がってしまっている人も出てきているようだ。天文館や博多や銀座で蔵元の社長がホステスに店を持たせてやったなどという話も耳にする。

今の状態が当たり前だなどと思っていたら危ない。特に大都市圏では反動が来かねない。バブル期よりずっと以前、四半世紀前の在学中に起業して以来、あらゆるバブルをかいくぐって来た"バブルシーラカンス"西川りゅうじんが言うのだから間違いない!焼酎人気を一過性のブームで終わらせてはならない。今こそ原点に戻り、本当に旨い焼酎を作り、頭を下げてお客様に飲んで頂かねばならない。


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