|
第16回 「勝ち残る企業の条件」
10月のおわり。まだ暑いのか寒いのか分からない気候が続いていた。
気持ちの良い秋晴れで、スーツを着る聴講者が少し熱そうにしながら、受け付けに集まっていた。
今日の会場は、都心のビジネス街に建つ大手システム開発会社。
経営者達が集まるこの講演会の題目は、まさしく「勝ち残る企業の条件」だ。
新さんと最初にお会いした時に、感じたこと。素早い。移動が決して駆け足な訳ではない。控え室へ向かう途中に思ったのだが、無駄な動きがないのだ。
控え室での確認事項もそう。端的な言葉で交わされ、数々の外資系企業の社長を歴任されてきた判断・対応の「スピード」が振る舞いのひとつひとつから感じられる。
しかし、新さんの魅力はそれだけではない。
女性は男性のギャップに惹かれるというが、新さんは気持ちよく裏切ってくれる。インテリジェンスな風貌と経験から後押しされる厳しさを纏った雰囲気、ところが講演に入るやいなや、ジョークが機関銃のように話の中に撃ち込まれていくのだ。
このタイミングの良いジョークに刻まれた、40年以上の経営経験から紡ぎ出される経営の原理・原則のお話、「経営は人創りである」と語る新さん流、人の育て方や任せ方、そしてその社員を育てるために経営者が必要なもののお話はまさに目を見張るものがある。講演の間、とにかく聴講者が忙しい。メモを取りたくなるヒントがブレーキもかけずに続くのだ。そして「経営者として必要なことは何なのか?」、又それに伴うスキルも整理されており、経営を体系的に学ぶ事ができる。
『魚は頭から腐る』とロシアの諺を持ち出したり、
「父さん(倒産)困る、母さん困る」とジョークを言ったり。妙に会場を和ませる話術が印象的だ。
仕事の任せ方、社員の育成と動機付けのお話も興味深い。
今となってはコーチングという言葉も浸透してきたが、人のやる気の種類も新さん自身の目で分析し、日本人の特性から会社にはどのような人が多いのか、ならばどのような人を動かせば、会社の利益に繋がるのか、と話を進めていくのだ。
そして情熱を持続させるたことも重要だと語る。
その方法を短期と長期の納得目標を追い続けることから始まり、セルバンテスの話にも触れた。
「お前が誰と付き合っているか言ってごらん。お前が誰かを当ててやるよ。」
とセルバンテスが『ドン・キホーテ』の中で書いている。
人は知ってか知らずか、自分の付き合う人を決めている。
自分と温度が近い人の方が安心できて、楽だから。
しかし人は出逢う人によっても変る。付き合う人で人は随分と変わるものだ。
そんなセルバンテスの言葉を添えながら、情熱の火を分けてくれる人と
付き合うことで新さんは自分の情熱を保ちつづけることができるのだと語る。
そして、厳しい社会を「生き残る会社」ではなく、
「勝ち残る会社」にするための顧客サービスのお話に続く。
お客を離さず選ばれる会社になるために必要なこと。
それはこの中で言及するのは控えるが、その大切な部分に新さんは気づいているからこそ、
たった1時間半という短い講演時間でも、聴講者の本当に欲しいもの、
聴講者の満足を超えた感動の時間を提供することができるのであろう。
私は仕事がらいろんな方の講演にお邪魔することが多いが、
分かってきたことはその方が経験した以上のことは話せないということ。
どこかで聞いたり、本で見つけてきたような内容では、誰も納得はできない。
経験から出てくる言葉だからこそ説得性が増すのだが、一貫して外資系企業を渡り歩き、40年以上も経営経験を積み重ねてきた新さんのお話しは本当は実際に体験した者でなければ、辿り着けない領域かもしれない。それでも聴講者に響くのは、非常にシンプルで明確なことだから。
「成功する会社はなぜ成功するのか?
それは、成功するようにやっているから。
負ける会社は?負けるようにやっている。」
そんな新さんの「勝ち残る企業の条件」は一聴の価値がある。
(2005年11月20日 株式会社ペルソン 無断転載禁止)
|