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第20回 「夢は必ずかなう」
「いろんな角度から考えること」
これが、簡単そうで、なかなか難しい。
決して声を荒げることもなく、優しい目で舞の海さんは言った。
そして、こう付け加える。
「自分の人生を振り返って、どうして自分の夢を叶えて行けたか、
と考えると、<何かやり方があるんじゃないか?>とどんな時も考え続けたこと。
またそれに対する挑戦をし続けたことにあると思います。」
聴講者の頭が、次々に大きく頷いている。
私もメモを取りながら、心の中で大きく頷いた一節だ。
その話を少し紹介したい。
舞の海さんは、力士の中でも身長が小柄で、
プロ入りするための基準の身長に満たなかった。
そこでまず考えたのが、力士がまげを結うために使うびんつけ油の塊を
髪の毛の中に隠し、身長を高く見せること。
小学生の子供が必死になって考えたような対策だが、
「うまく行くと思ったんですよ。」なんて少年のように笑いながら語る。
その語り口調が妙に会場で親近感を湧かせ、聴講者の顔が少しずつ緩んでいく。
身体検査の会場は大阪。
皮肉にもその日はいつもに増して太陽がこうこうと照っていた。
いくら硬い塊と言えど、油。この結果は語らなくても容易に想像できるであろうが、
勿論油が溶けて、
いくら測っても、自分の身長以上に行くことはなかった。
おまけに髪の毛の中に隠した油が溶けているので、
測るたびに、ぐちゃぐちゃと頭の高さが上下し、親方の顔も引きつっていたという。
(※身長は、それぞれの部屋の親方が測る)
2ヶ月に1度の診断の機会だった。
そこで次に登場するのが、シリコン。美容整形でよく聞くシリコンだ。
いくらやり方があると言っても、頭の中にシリコンを入れる手術というのは聞いたことがない。
頭の皮をバリバリと剥がし、シリコンを入れる。
頭の皮は体の中で一番伸びない皮らしいが、
その痛さは想像しただけでも寒気がしてきそうなものだ。
この道を選んだ勇気が、プロ入りの道を開いてくれたのである。

それでもこんな深刻な話の後に、一呼吸置いて、笑いながら、こんな風に言うのだ。
「本当にこんな大手術だって知らなかったんですよ。もっと簡単だと思っていて。」と。
自分を道化にかえるようなもの言い、器の大きさは、こんなところに表れるのだろうか。
そんな舞の海さんだが、その後の力士としての活躍も、「猫だまし」という斬新な技も、
横綱の曙に勝った時も
全てある精神から生まれている。
| 「何かやり方があるはずだ。」と考えを止めないこと。 |
この考え方が講演全体の中で、一貫したメッセージとして絶えず出現する。
そして、相撲部屋の厳しい上下関係のお話にも触れた。
番付けで全てが決まっている勝負の世界。
入門当初は「洗濯機」と呼ばれ、
身の回りのことから、関取の付き人として買い物、風呂の世話もしなければならない。
舞の海さんは、大学卒業後に入門するが、自分より年下の先輩がたくさんいたのだ。
強くならなければ、一生「洗濯機」のままである。
高校生の年頃の先輩に、「ちょっとコンビニ行って来て。」なんて言われるたびに、
悔しい思いをしながら、「いつかは絶対強くなってやる」と心の中で繰り返していたという。
そうやって、技能賞を5回受賞するほどの活躍まで、努力を積み重ねていった。
また、力士は、裸足で稽古をしているので、足の裏の皮が厚く、
タバコを素足で消すことができるなど、
ちょっと変わった生活の様子を紹介したり、
現在務めている「NHK大相撲解説」の際の北の富士さん(元横綱)との番組裏のやり取りなど、
テレビでは分からない相撲界を覗けるので、
相撲に全く興味のなかった人まで楽しめる内容である。
そういった身近な内容も含めて終始笑いを混ぜてお話されるので、
講演中飽きることはなく、
いつのまにか、
「夢は必ずかなう」 そう思えてしまいます。
(2006年4月20日 株式会社ペルソン 無断転載禁止) |