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古賀稔彦 スペシャルインタビュー

『よい指導者とは決して天才ではない

アテネ五輪での、谷本歩実選手(金メダリスト)との感動の抱擁シーンが記憶に新しい、古賀稔彦氏。

今回、講師マガジン「人」の立ち上げ特別企画として、渡邊(講演依頼.com運営会社 株式会社ペルソン代表取締役社長)自らが取材にあたり、古賀氏の本質を探りながら、アテネ五輪で見せたあの感動の裏にある指導者の精神に迫ります。

お酒を飲みながらのお話、今回だけの特別企画です。

 
写真:古賀稔彦
渡邊 陽一(わたなべよういち)

「講演依頼.com」運営会社
株式会社ペルソン
代表取締役社長 渡邉陽一


渡邊陽一 プロフィール
 
古賀 稔彦(こがとしひこ)

柔道家
アテネ五輪 女子強化コーチ
バルセロナ五輪 金メダル
アトランタ五輪 銀メダル

古賀稔彦 講師プロフィール

 


渡邊: まずはアテネオリンピックでの谷本選手の金メダル、おめでとうございます。
こうした結果を考えますと、やはり古賀さんは選手としても指導者としても天才だと私は感じました。

古賀: ありがとうございます(笑)ただ、私自身は自分を天才だとは思っていませんよ。
渡邊: そうなのですか。指導者としても素晴らしい才能をお持ちだと思いますが。
古賀: これは私の才能に対する考え方なのですが、才能とは何か目に見えて凄いことをした人に対して才能があるという使い方をしますが、私は才能はある、なしではなく誰にでもあるものだと思っています。なぜならどんな小さなことでも、人より秀でている事は才能だと思うからです。それは、人より気遣いが上手いということや優しいということも才能だということです。

私は自分のことを指導者とは思っていません。むしろサポート役だと思っています。
ですからこの子には才能がある、あの子には才能がない、というようなどこかで線を引いてしまう考え方をしてしまうとそれはサポートの邪魔になってしまいます。

柔道を教えていると、ちょっとしたアドバイスで格段に上手くなることがあります。それはその子の中にある可能性を引き出したということです。才能があるかどうかという見方では、そうした可能性を見落としてしまうと思っています。だからこそ、私は誰の中にも才能があると思って柔道を教えています。
渡邊: 古賀さんの才能に対する考え方は私と違いますね。
誰の中にも才能がある、その才能を発見して引き出してあげることがサポートしていくということであり、古賀さんのおっしゃられる指導の在り方という訳ですね。
古賀: そうですね。何かに気づいた人がひとつ言葉をかけてやることで、選手自身も「自分達は絶対に出来るんだ」という強い気持ちを持ってくれるようになります。それがサポートすることでもっと上にいけるということなのだと思います。
渡邊: 「サポート」という発想が出てくる事はそれだけで凄いことですね。
その言葉をどこかで習って知っている方とご自分の考えとして語られる方とでは大きな違いがあると思います。重みが違いますよね。もちろん古賀さんは後者でいらっしゃる訳ですが、その「サポートする」という発想は古賀さんの中のどこから出てきたものなのですか。

古賀: 私はほとんど本を読みません。自分の本でさえ読まないくらい、読書をしないのです。ですから、私の考えはみな今までの自分の経験の中から自分の感覚で判断して、やってみて出てきたものです。本を読みすぎるとどうしても自分の考えが左右されがちになってしまいますから。
渡邊: 「サポートする」というキーワードは古賀さんの感覚から出てきた言葉なのですか!感覚を的確に言葉で表現するというのはやはり才能ではないでしょうか。ここで言う才能とは私の考える才能で、一握りの人にしかない特別なものという意味ですが。古賀さんは普通におっしゃいますが、自分の感覚を相手にわかるように説明できる人はそうはいないと思うからこそ、それは才能だと思うのです。
古賀: 自分の感じたことをうまく言葉に出来ないのは、感覚というものがあくまで個人のものだからです。選手にコーチの言っていることがわからないのは、コーチの感覚で物を話すからですね。ですから渡邊さんは私が感覚を上手く表現できるとおっしゃいましたが、いくら的確だと判断される言葉に置き換えても本当は他人にはわからないものなのです。では絶対に自分の感覚が相手に伝わらないかというと、それは違います。あることが出来ていれば伝わるものなのです。
渡邊: それは何でしょうか。
古賀: 信頼関係です。選手に自分の感覚を一番正確に伝えるということは、まず信頼関係が成り立っていなくては出来ないことなのです。

初めは選手に対してそれぞれの感覚の中でわかるように言葉で伝えていきます。例えば、私の感覚を相手に伝えるとき、いろいろな言葉で相手に一番わかる言葉を探しながら教えていきます。それが時間の経過とともに信頼関係が出来てくると、私と選手の感覚が共有できる時期が来ます。感覚の一致とでも言いましょうか。この感覚の一致をみることで、より深い指導ができることになります。自分で感じたことを選手も感じてくれている訳ですからね。指導のポイントが伝わりやすくなります。

結局のところ、感覚でしかわからないものを言葉で言い表す事は無理なのです。とすれば、コーチの感覚を選手が理解して生かしていくしかない。それにはお互いの感覚の一致が必要で、この構図は信頼関係なしには絶対に成り立たないと思います。

ですから初めの話に戻りますが、この子は天才だとか、才能があるとかという目で見てしまうとこうした信頼関係が作れず、結局何も伸ばしてやれないということになってしまうのです。
渡邊: なるほど。それは古賀さんの指導方針というわけですね。この指導方法もご自分のご経験の中から判断して構築されたものなのですか。どなたかから影響を受けたりはなさらなかったのでしょうか。
古賀:

私の場合は、指導に関しては恩師の吉村先生の影響が強いと思います。もちろんまるでそのままではありませんが。ただ吉村先生はご自分の私利私欲はまったくお考えにならない方で、常に選手の立場に100%立って考えてくれる方でした。選手を第一に考え行動し、発言されていた。これで私達選手との信頼関係が出来ていました。ですから、そうした環境の中で選手生活を送った私も自然と吉村先生と同じように選手の立場に立って行動したり発言したりするということをしているのだと思います。

渡邊: 吉村先生の影響は強いですね。今の古賀さんの指導スタイルの原点を作ったといってもよいのではないでしょうか。


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