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■登頂ルートはひとつじゃない
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二宮:
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佐野さんは現役時代、何人の監督のもとでプレーされましたか?
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| 佐野: |
日米あわせて9人ですね。とにかくいろんなタイプの人がいました。
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| 二宮: |
その中で理想的なリーダーだったと思う方は?
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| 佐野: |
講演でもお話しさせて頂くのですが、やはり近鉄バファローズ(現:オリックス・バファローズ)時代にお世話になった仰木監督(※)ですね。仰木さんは、僕らと同じ目線に降りてきてくれたところが、すごくありがたかったです。少年野球にしろ、プロ野球にしろ、監督というのは野球選手にとって特別な存在です。特に僕は、プロに入りたてのルーキーだったので、監督なんて雲の上の人。チーム内で一歩も二歩も引いていたのですが、そんな時、仰木さんはみんなの前で僕を平等に扱ってくださった。
(※故・仰木彬氏)
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| 二宮: |
私は仰木さんと一緒に本(※)を出版させて頂いたのですが、仰木さんは、「個性は人それぞれ違う」ということを認めていた人だと思うんです。実績を残してきた人というのは、何かしら「理にかなったこと」をしてきたことは確かです。でも、それが万人にマッチするとは限らない。登山でもそうですが、登頂ルートは1つじゃないんですから、自らの成功体験を人に押し付けてはいけない。それを仰木さんは知っていた。よく、『野茂のトルネード投法や、イチローの振り子打法の生みの親』などと評されることがありますが、あの言い方は少し違うと思います。仰木さんがトルネードや振り子を野茂やイチローに教えたわけじゃない。彼らのスタイルを「認めた」からこそ、才能が伸びていったのだと思います。
(※『人を見つけ人を伸ばす―個性を発掘する人材活用』 光文社刊)
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| 佐野: |
そうですね。仰木さんのすごさは、「相手のことを認めてあげる」ことでした。一般に、「長所を伸ばせること」がリーダーの条件として挙げられますけど、実際は、伸ばすことはなかなか難しい。それよりも、まず相手を認めてあげることで、長所が勝手に伸びていった、という感じだと思いますね。
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| 二宮: |
それはやはり、選手をひとりの大人として扱っていたことの表れでもありますよね。
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佐野:
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それは強く感じていました。同じミスでも、怠慢プレーから起こるミスをすると主力選手でも平気で2軍へ落としましたし、時には激しく叱責するときも。その代わり、試合に挑むまでのプロセスはまったく気にしない。それこそ、夜遊びしようが、酒の匂いをさせてこようがプライベートには一切、干渉しなかったですね。
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| 二宮: |
試合以外では何してもいいけど、試合ではベストを尽くせ、と。それが「プロ」ですよね。まあ、プライベートに関しては、仰木さん、人のこと言えないですからね(笑)。
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| 佐野: |
そうです(笑)。夏が近づいてくると、軽くウェイトトレーニングをされるんですよ。健康のためかな、と思ってたんですけど、どうやら女性にモテるためだった、という(笑)。
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| 二宮: |
実際、男女問わず「モテる人」でしたね。人間的に魅力がありました。逆に、「失敗するリーダー」に共通項はあると考えますか?
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| 佐野: |
やはり、「全部を喋る人」ですかね。「自分はこれをこうして、ああしてうまくなった」と、自分が辿ってきた道筋を全部喋るんです。そして「だからお前らも同じことをやれ!」と。でも、なぜそれが良いのかという明確な説明がないうえに、その他の選択肢も与えられない。選手は自分の頭で考える余裕がないんですよ。 |
| 二宮: |
過去に実績を挙げた人にほど多い傾向ですね。自分が全部正しいと考えて、経験則で物を言う。「黙って俺についてこい!」という自信はリーダーにとって必要ですが、一方で聞く耳も持たなくてはならない。
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