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  講師の心.com > 講師マガジン 「人」 > 特別対談 二宮清純×佐野慈紀


 
  
   二宮清純さんが責任編集するインターネットマガジン「スポーツコミュニケーションズ」に、
   月1回、野球コラムを寄稿する佐野慈紀さん。
   同じ愛媛県出身、そして同じくスポーツを通じてメディアに関わるお二人に、
   現在さまざまな分野で注目されているキーワード、“リーダーの条件”について語り合って頂きました。


二宮清純 (にのみや・せいじゅん)

スポーツジャーナリスト
株式会社スポーツコミュニケーションズ代表取締役

1960年、愛媛県八幡浜市生まれ。スポーツ紙や流通紙の記者を経て、フリーのスポーツジャーナリストとして独立。オリンピック、サッカーW杯、メジャーリーグ、ボクシング世界戦などを数多く取材し、新聞・TV・雑誌など多様なメディアで活躍している。また、「地域」発展の主人公はその地域に住む住民達であると考え、地域と住民を中心とした総合スポーツクラブ作りにも尽力。

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佐野慈紀 (さの・しげき)

野球解説者

近鉄バファローズでプロ野球選手としてキャリアをスタートさせ、近鉄で8年間、主に中継ぎ投手として活躍。
その後、中日ドラゴンズに移籍した後、渡米し米独立リーグでプレー。帰国後はオリックスに移籍し、2003年に現役を引退。
明るいキャラクターそのままに、現在は、関西圏のテレビ局を中心に野球解説者としての顔のほか、講演会や執筆など、精力的に活動している。

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■登頂ルートはひとつじゃない

二宮:

佐野さんは現役時代、何人の監督のもとでプレーされましたか?
佐野: 日米あわせて9人ですね。とにかくいろんなタイプの人がいました。
二宮:

その中で理想的なリーダーだったと思う方は?

佐野:

講演でもお話しさせて頂くのですが、やはり近鉄バファローズ(現:オリックス・バファローズ)時代にお世話になった仰木監督(※)ですね。仰木さんは、僕らと同じ目線に降りてきてくれたところが、すごくありがたかったです。少年野球にしろ、プロ野球にしろ、監督というのは野球選手にとって特別な存在です。特に僕は、プロに入りたてのルーキーだったので、監督なんて雲の上の人。チーム内で一歩も二歩も引いていたのですが、そんな時、仰木さんはみんなの前で僕を平等に扱ってくださった。
(※故・仰木彬氏)

二宮:

私は仰木さんと一緒に本(※)を出版させて頂いたのですが、仰木さんは、「個性は人それぞれ違う」ということを認めていた人だと思うんです。実績を残してきた人というのは、何かしら「理にかなったこと」をしてきたことは確かです。でも、それが万人にマッチするとは限らない。登山でもそうですが、登頂ルートは1つじゃないんですから、自らの成功体験を人に押し付けてはいけない。それを仰木さんは知っていた。よく、『野茂のトルネード投法や、イチローの振り子打法の生みの親』などと評されることがありますが、あの言い方は少し違うと思います。仰木さんがトルネードや振り子を野茂やイチローに教えたわけじゃない。彼らのスタイルを「認めた」からこそ、才能が伸びていったのだと思います。
(※『人を見つけ人を伸ばす―個性を発掘する人材活用』 光文社刊

佐野:

そうですね。仰木さんのすごさは、「相手のことを認めてあげる」ことでした。一般に、「長所を伸ばせること」がリーダーの条件として挙げられますけど、実際は、伸ばすことはなかなか難しい。それよりも、まず相手を認めてあげることで、長所が勝手に伸びていった、という感じだと思いますね。

二宮:

それはやはり、選手をひとりの大人として扱っていたことの表れでもありますよね。

佐野:

それは強く感じていました。同じミスでも、怠慢プレーから起こるミスをすると主力選手でも平気で2軍へ落としましたし、時には激しく叱責するときも。その代わり、試合に挑むまでのプロセスはまったく気にしない。それこそ、夜遊びしようが、酒の匂いをさせてこようがプライベートには一切、干渉しなかったですね。

二宮:

試合以外では何してもいいけど、試合ではベストを尽くせ、と。それが「プロ」ですよね。まあ、プライベートに関しては、仰木さん、人のこと言えないですからね(笑)。

佐野:

そうです(笑)。夏が近づいてくると、軽くウェイトトレーニングをされるんですよ。健康のためかな、と思ってたんですけど、どうやら女性にモテるためだった、という(笑)。

二宮:

実際、男女問わず「モテる人」でしたね。人間的に魅力がありました。逆に、「失敗するリーダー」に共通項はあると考えますか?

佐野: やはり、「全部を喋る人」ですかね。「自分はこれをこうして、ああしてうまくなった」と、自分が辿ってきた道筋を全部喋るんです。そして「だからお前らも同じことをやれ!」と。でも、なぜそれが良いのかという明確な説明がないうえに、その他の選択肢も与えられない。選手は自分の頭で考える余裕がないんですよ。
二宮: 過去に実績を挙げた人にほど多い傾向ですね。自分が全部正しいと考えて、経験則で物を言う。「黙って俺についてこい!」という自信はリーダーにとって必要ですが、一方で聞く耳も持たなくてはならない。

■リーダーは「パイオニア」であれ
佐野: 二宮さんはお仕事柄、野球以外にもさまざまなリーダーとお会いしてきたと思うのですが、印象に残っている方はいますか?
二宮:

私がスポーツ界で最高のリーダーと考えるのは、日本サッカー協会会長の川淵三郎さんです。80年代後半に「Jリーグ百年構想」を旗印に、サッカーがプロ化するときの話なのですが、何かを改革する時は、どこの世界でも"抵抗勢力"が出てくる。ある会議で噴出した「時期尚早だ」、「前例がない」という反対意見に対して、川淵さんが放った言葉は今でも覚えています。「時期尚早と言う人間は、 100年経っても時期尚早と言う。前例がないと言う人間は、 200年経っても前例がないと言う」。このときの名演説が周囲の人間を突き動かし、Jリーグ誕生までの動きが加速しました。あのリーダーシップがなければ、日本のサッカーはここまでのものになっていなかったと思います。まさにパイオニアですね。私は、リーダーの条件は「パッション」(情熱)と「ミッション」(使命)と「アクション」(行動力)―基本的には、この3つだと思っています。

佐野:

パイオニアになる人は、リスクや失敗を恐がりませんよね。

二宮:

人間、本当に必死な時って恐くないんでしょうね。目的のためにはひるまない。もちろんリスクは感じているのでしょうけれど、それを上回る"使命感"を持っていたのでしょう。

佐野:

パイオニア、先駆者という点では、近鉄時代に一緒にプレーした野茂(英雄)もあてはまります。彼の強みは、「変わらない」ということです。日本にいるときから、大リーグに行ってからも、常に自分自身のレベルアップを怠らない。それは周りの選手にとって、非常に良い刺激になります。

二宮:

野茂選手がパイオニアたるゆえんはそこですよね。一度決めたら、周囲がやろうが、やるまいが、自分の軸が絶対にブレない。その信念はすごいものがあります。まさに“不言実行”。うしろ姿で周りを引っ張るタイプのリーダー像ですね。言葉じゃなく態度で示してくれる先輩がいる組織は強い。


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