koushinococoro.com 心
講演講師の思い・メッセージを伝える

講師の心.com



会社概要 講演のお問い合わせ 著作権 サイトマップ HOME



  講師の心.com > 講師マガジン 「人」 > 特別対談 広岡勲×佐伯夕利子

  T・日本人としての【個性】を活かす U・海外でリーダーに立つ V・チャレンジするということ
  ―日本と違う国 全ては縁から始まった
―郷に入りては郷にしたがう
だけではいけない
―決断力と人心掌握術
―関係づくりと環境づくり
―プロとして
―人間としての器・人望

―壁にぶつかった時に助けてくれたもの
―自分を元気にしてくれる言葉
―今後挑戦していきたいこと


U・海外でリーダーに立つ
■決断力と人心掌握術



佐伯:

私が監督に就任した経緯は、もともとヘッドコーチとして、ベテランの監督にチームに入れてもらったので、入りは柔らかかったです。コーチとして信頼関係を作っている中、その監督が成績不振になり、解任後の就任でした。そういう意味では信頼関係が出来ている上での就任で、非常にやり易かったですね。

しかし、実はあと何日試合があって、ここで勝たないと8連敗なんだ、とか…。要は、小さな船に乗って25人が、私が舵取りをする時に沈没しかけているわけです。このままいったら全員沈没、というところを、どうやって水を抜いて浮上させるか、と必死でした。だから、自分が史上初の女性監督だとか、外国人でどうとかということを考える余裕がなかったのが実際でしたね。勿論、監督になった時にメディアの方がたくさん来て、全部しっかりと答えておくべきだと思って、全て受けていましたが、何しろ内心は沈みかけた船のことでいっぱいでしたから、自分のことを周りがどのように見ているか、という自覚が出たのは、本当数ヶ月経った後です。

ただ、これだ、と思うものに、19歳の時に初めて出会って、好奇心が自分を突き動かし、理屈ではない、判断や決断力があったから、ここまで来られたのかもしれませんね。


広岡:

決断力、必要な部分ですね。それと、人心掌握も大切な要素の一つですよね。
ヤンキースのトーリ監督もまた、監督としてはトップクラスの監督なんですが、実はこの間、ニューズウィークでのアンケートで中間管理職になってもらいたい人NO,1に選ばれたんですよ。
要は、その置かれている立場が、スタインブレナーというオーナーと、年俸30億円なんていう選手達をマネージメントしなければならない、ちょうど中間管理職と同じ立場なんですね。その立場で、世界1を5回、6回と連続で成し遂げているような監督なんです。
しかし実際接してみて気づいたのですが、監督は普通の当たり前のものを大事にされているに過ぎないんです。日本人が抱くステレオタイプなアメリカ人ではなく、日本的な考え方をしますね。

例えば具体的にいうと、人を怒る時。おそらく佐伯さんも選手を怒ると思うのですが、ヤンキースの場合、松井よりすごい年俸の選手がごろごろいるわけですよ。みんなそれぞれ俺が一番だって思っている選手ばかりです。だからやはり、自尊心を傷つけないように、指導をしなければいけないですよね。 さすがだなぁと思うことは、ミーティングでは一応怒りますが、ほとんど名指しはしませんね。名指しで、選手を怒らない。明らかに誰が見てもお前が悪いという部分も。ただ、終わってから二人だけで話していたり、人に見えないところでマンツーマンの対話をしていますね。

僕はもともと記者でしたから、なんでこういう考え方をするんだろうと思って、取材してみたんです。そうしたら、自分が子どもの時に人前で怒られるのが屈辱だったからだそうなんですね。ましてはプライドがとても高い野球選手。当たり前のことですよね。それを実践しているにすぎないんですけれども。あとは野球もオーソドックスだし、見ていてバントだなぁと思うとバントだし、プレイ的にはそうですね。ただ、人心掌握術とか、一つのパートを動かすとか、個を組織にするとか、そういうものにかけては、すごいと思います。


佐伯:

私なんかはまだまだですが、全体ミーティング時、もしマイナスの話をする時は、トーリ監督のように、名指しをしないように気を遣いますね。何かを言わなきゃいけない時は、他の人達のいないところで言います。又、逆に良いプレーの時は名指しで誉める。誉めるときはわざと周りに人がいるところで。それはきちんとしないと、むやみやたらに誉めたり、叱るだけじゃ、指導者としての質も問われますよね。選手を叱るというより、私はただ修正をするつもりだったとしても、聞いている側からしたら、怒られた、否定されたととることがあったり…。特にスペインの人たちは自尊心も強いので、人をどれだけ大事に扱えるかというのは大切なことですね。


 
■関係づくりと環境づくり
佐伯: サッカーの場合は限られた中、テクニカルゾーンと言われるところだけで、監督は動けるんです。そこから、サイドの選手まで本当に聞こえるか聞こえないかというところまで指導をしなければなりません。そのテクニカルゾーンの中から、ポンッといった一言や単語だけが、彼ら彼女らに届くかどうか、というのはなかなか難しいわけです。

だから試合中に何が言えたとか、どういう修正ができたか、ということは、実はそんなに大事ではなくて、その言葉やメッセージが選手達に届く環境づくりと関係作りを日々の練習の中で懸命にしていくことの方が実は指導者として求められている仕事なんじゃないかなって思うんですよね。特に試合中に言える言葉などは限られてきますから。

後は、選手は皆自分が得意とするものを持っているので、その部分をとにかく、目一杯ほめてやること。それが、選手にとって一番のビタミン剤だと思います。モチベーションアップに繋がるわけです。些細なところでも、良いプレイしたらそれを出し惜しみすることなく、いっぱい誉めてやりたいな、と自分も思います。誉められて、嬉しくない人間なんていないし、叱られて悔しくない人間なんていない。そういう自然に人間に沸いてくる感情をそのまま素直に私も活用するというか、応用し、選手が今のプレイをやればいいんだ、誉められるんだ、というフィードバックを瞬時にやっていけるようにすると、いいですね。良いところは見逃しやすいのですが、逆に気づいてあげて、それをフィードバックしていくことで、選手をひきつける。イコール、選手の能力の成長を手伝ってあげることができると思います。
広岡:

実体験だと言葉に重みがありますね。それに愛が感じられますね。

実はトーリ監督も環境づくりという部分では、チームの空気を和らげてやりやすいようにするテクニックが抜群にあるんですよ。このゲームは絶対負けてはダメだとか、ここで絶対点を入れなければいけないとか、ゲーム上ではありますよね。そこで監督がじたばたしたり、萎縮したらダメなんですよ。選手は緊張しているわけですし。
あんまりミーティングの内容をばらすと怒られてしまうのですが、1年目のワールドシリーズのミーティングで、松井を指名して、「相撲のしこでも踏むか?」とかそんなレベルの話が始まったわけですよ。これからワールドシリーズで戦わなければならないのに、これでいいのかな、と僕は思ったんですが、これでチームがどーっと沸くんですよ。笑いが取れるんですよね。で、ポンっと「じゃあ、行けー」て行くわけですよ。上手いですよ。

基本的に、楽天的な部分が多く、選手に安心感を与えるんですよね。いつも冗談ばかり言っているし、試合中ですら携帯用ゲームをやっているような人ですから(笑)。
常に限られた時間しかない、楽しみながら行こうぜ、と。


■プロとして
広岡

プロですから、負けたらだめですよ。でも負け方によります。 トーリ監督は結果が全てではなく、その過程も大事にする監督です。
だから、試合に勝っても突然ミーティングを開いて怒る時があるんですよ。「今日の試合は、今まで見た中でも最悪の試合だ。何十年も監督をしているが、ベスト10に入るくらいの、ファンに申し訳ない試合だった」とか。「打ってから、一塁までの全力疾走が出来ていない」とかね。そうかと思えば、勝利が確実になった後など、もうユニフォームを脱ぎかけていたり…。つまり、押さえるところは押さえて反省を始めるわけです。

選手からすると、「あぁ試合に負けた、今日はミーティングが長いな」というのが普通だと思うんですが、そういう緊張感はないんです。
大敗した時に明日練習しないから早く帰れ、と終えたり。その辺のところがうまいですね。

やはりアマチュアではなくプロだから、プロである以上はお客さんがお金を払って見に来るわけですよ。ということは、勝ち負けも大事ですが、プロとしてこう見せなければいけないという部分があると思うんですよね。プロとしての価値観、基準。それを下回った時は怒りますね。お金を払って見に来ているお客さんに対して申し訳ないと。


佐伯:

さっきからトーリ監督のお話を伺っていると、まさに私が目指している指導者像、そのままですね。競技を超えて思います。それはなぜかというと、私もシーズン中、負ける試合が多くても、勝ちさえすればいいというわけではない事を選手達には伝えていきたいと思っていました。

そして、「手を抜くことは許さない」ということ。
それはできるのにやらない、ということですよね。それだけは絶対に私は許さない、と選手達にも示してきたし、私はそんなに怒る方ではないけれども、そういうシーンだけは容赦なく叱るんですね。だから、ユリコが怒る時はどういう時だっていうのはすごく明確に、選手に伝わっています。相手の選手だって同じようにスポーツ選手なわけで、最低限のリスペクトを持って戦うべきだし、やっぱり正面向いて戦うべきですよね。例えば5点取って勝ったとしても、5点取ったらいいのかと言ったら絶対にそうじゃない。勝ち方や心の持ち方、心のあり方のほうが、実はすごく大事だって言うのは、選手達に常に伝えていることです。


広岡:

佐伯さんが仰ったように大事な部分は「ユリコはこれをやったら怒るな。明日ミーティングだな」という部分ですよね。つまり佐伯イズムがチームに浸透している証拠ですから、それを口で言って分からせるのではなくて、空気で分からせる。大事なんですよね。それができている時はチームにカラーができている時ですし、それをうまく作れることがリーダーとして、大事な要素ですね。


■人間としての器、人望
佐伯

以前自分のチームが悔しいプレイをして負けたとき、ミーティングを始める前に「昨日の試合、まず自分の采配が間違っていたのかもしれない。それが敗戦の一つの要因になることは間違いない」と一度謝ったことがあるんですね。スペインなんて絶対に自分の非を認めませんから、それが指導者であれ選手であれ、最初にごめんなさいを言った人が負けの国です。最初は、何が起こっているの?と選手達は驚いていましたが、その後、距離が縮まっていくのを感じました。私はそれを当然だと思うからやるのですが、この人は自分が間違ったら認める、というのが選手達に伝わるだけでも、関係性は変わってくるんですよね。

そして、もう一つ、これは私の今後の監督人生の課題でもあるのですが、サッカーのノウハウや知識、情報、戦術や技術の知識量ではなくて、人としての器を身につけていかなければならないですよね。何万という監督の中で差がついている部分は、その人そのものだと思うんですよ。だから14年指導してきて、次の指導教本を探している反面、実は映画を見たり、本を読んだり、全く違う分野の方の講演会を聴きに行ったり、違う方のドキュメンタリーを見たり、そういうことで感じながら得ていく、人間性みたいなものが、必要なんじゃないかと考えているんですよ。
広岡:

そうですね。人としての器、あと人望ですよね。でもこれは学校で学ぶものでもなければ、テキストがあるわけでもない。やはり人を見て学ぶものだと思います。リーダーとしての前に、人間として認められるか認められないかは大きな要素ですよね。


佐伯:

大事な事は、選手に好かれようとしないことではないでしょうか。サッカーの場合どんなに少なくても選手は20人から25人いて、その選手20人全員に自分を好いてもらおうと努力するのはものすごく無駄なこと。そうではなく、発想は自分がされて嬉しいこと、言われて嬉しいことを、してあげようと思うことですよね。例えば、部下に好かれようとする上司なんてたくさんいると思うんですよ。でもそうではなくて、自分だったらこうしてもらえたほうが嬉しいのではないかというところをよく考えて行動する。そのことのほうが、よっぽど大切だと思いますね。


広岡:

人間としての器、人望、これですね。



2/3   3ページ目へ


 

講演依頼.comのご紹介

あらゆるジャンルをカバーする沢山の講師の中から、講演主旨・講義テーマに合致する講師情報をご提供致します。
講演依頼の無料相談を是非ご活用ください。
人生・ライフスタイルから芸能・スポーツまで幅広いジャンルの中からお客様の目的に合った講師をご紹介させていただきます。
講師ジャンルカテゴリはこちら

 


講演講師の思いやメッセージを伝えるWEBメディア 提供サイト:講演依頼.com
心
講師の心.com 会社概要 講演のお問い合わせ 著作権 サイトマップ HOME

講師の心.comは、講師の紹介及び講演出演依頼を承るWebSite 講演依頼.comから
毎月旬でお勧めの講師の"心"="思いやメッセージ"をコラムやインタビュー形式でお伝えするWebメディアです。


Copyright(C) 2005-2010 PERSONNE,Inc,All rights reserved