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―吉越さんと言えば、「早朝会議」、「NO残業デー」、「がんばるタイム」など、徹底的に仕事の効率化を重視した、ユニークな仕組みを取り入れ、会社の成長に結びつけられたことで有名です。そういった効率重視の考え方は、前職のメリタ・ジャパン(株)など、外資系企業や海外での勤務経験から生まれたものなのでしょうか?
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<話題の著書> |
そうですね。トリンプはドイツに本社を置く世界企業で、私は香港支社のプロダクトマネージャーとして転職したのです。前職のメリタ・ジャパン(株)でも香港勤務をしていた時期があったんですよ。ちなみに、そこでは残業など一切しませんでした。皆、個室を与えられていて、1日8時間、シーンと静まり返った中でひたすら仕事をし、定時になれば退社する。私も初めのうちは電話も鳴らない静かな部屋で仕事をすることに違和感を覚えましたが、慣れてみると非常に効率が良いことに気づいたんです。
私がトリンプで実施したユニークな施策や仕組みには、
すべて「効率性」の追求が根底にあります。会社のために良かれと思い、残業して仕事をする日本人ってたくさんいますよね。でも、それは違うのです。実際に残業中の社員を見ても、だらだら仕事をしていて、いつその仕事が終わるのかもわからない。本来なら1時間で終わる仕事を、3時間かけてやっている。あげくの果てに、残業のために睡眠時間が削られて、健康を害したりする……。だから、社員の労働時間を伸ばして、業績を上げることはやめようと。
ドイツ本社と同じ労働時間の中で、売り上げを伸ばすことができて初めて、私のマネジメント能力も評価されるのです。当時、日本のホワイトカラーは世界で一番効率が悪い働き方をしているといわれていました。それをまず改善し、世界と同じレベルで戦いたい、そういう思いはありました。
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| ―早朝会議の開始時間は8時半。始めた頃は反対もあったのではないでしょうか? |
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「そんなに朝早くから会議をするの?」など、社内からの強い反発がありました。だからまず、社員に参加してもらうための努力が必要でした。一人ずつ飲みに誘って説得する、会議の中からできるだけ早く成功事例をつくる…。そうやって、少しずつ賛同してくれる社員を増やしていったのです。今思い返してみても、地道な作業でしたね。
「会議などしなくてもいい」という経営者がいらっしゃるようですが、私からすると会議をしないでどうやって会社を取りまとめていくのか、疑問に思います。営業、マーケティング、物流、広告とバラバラに考え、動くより、それぞれの部署のトップが集まって情報を共有し、方向性を決めていった方がよっぽど効率的ですし、結果が出ますから。会社はやはりコミュニケーションが大事で、全社員がしっかり情報を共有することができれば、絶対に強い組織になれる。そう信じ、どんな反発を受けてもめげることなく、早朝会議を継続してきたのです。最終的には、全国の支店7カ所にテレビ会議システムも導入し、総勢約70名でMS会議(マーケティング&セールス会議)ができるまでとなりました。それだけではありません。会議で決まったことは、会議終了後、すぐ全社員にメールで報告します。
そうやって徹底的に情報を共有することで、会社内の無駄なすれ違いをなくし、社員の仕事の効率アップに繋げていきました。
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―会議は実際にはどのように進めるのでしょうか?
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時間にして、だいたい1時間から1時間半。その間に、約50の議題を1件につき2分以内で決断していきます。この会議は、社員のスピード感覚を徹底的に鍛える役目もあったのです。前長野県知事の田中康夫氏も見学に来られたのですが、進行の早さに感動されていましたね。案件に関わる人に、私がどんどん質問をぶつけていくので、社員は質問にきちんと答えられる準備をし、なおかつ、想定外の質問にも対応しなければなりません。当然、社員にとってこの会議は厳しい仕事ですが、結果的には、論理的思考、瞬発的な対応能力がどんどん身についていくわけです。
そして、会議で決まったことに関しては必ず、「誰が、何を、いつまでに」というデッドラインを設定します。もちろん、期間設定は短ければ短いほどいい。基本は「翌日」までで、最長でも1週間。1週間を超えるものは、重要なタイミングで私がチェックを入れていきます。このチェックが非常に重要です。
デッドラインを短い期間で設定すると、必死にならないと仕事が終わりませんから、社員も私語をする暇などなくなります。通常のやり方をしていては間に合わないので、効率をあげるための様々な工夫もするようになる。もちろん、そのデッドラインを守らない社員がいれば怒りますし、徹底的にその理由を問い詰め、実現するまで結果を追いかけさせるのです。
また、時には決断に迷うような議題が出てきます。しかし、そのような場合は、トップが決めてしまった方が良い。いろんな部署が参加している会議ですから、あちらを立てればこちらが立たない、という状況になることもあるのです。それでも決断の中に遠慮が見えてしまうと、方向性が決まりません。だから、誰かが傷ついたとしても、会社として方向性を1つに定める決断は必ずトップが行う。その決断力をトップは常に鍛えておくべきですね。
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―残業を減らせない会社も日本には多く見られますが、トリンプではどのようにして「NO残業」を実現したのですか?
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社長自らが、電気を消してしまえばいいんです。私は、ひとつのボタンを押せば、自動的に全社内の照明が消えていくシステムを導入したんですよ。150万円もかけて(笑)。
トリンプが残業を禁止する理由は、効率性の問題ともうひとつ、女性社員が当社の大きな戦力であることが挙げられます。一般的にみても、「残業が多いため、家庭との両立ができない」という理由で退職する女性社員は多いのです。当社の場合、優秀な女性が多いですから、それでは大損に繋がります。いずれにせよ、人材を失うことは避けたいものです。
最初は水曜日と金曜日から始めて、徐々に浸透させていきながら、毎日実施に切り替えました。NO残業デーを開始した当初は、電気を消したとたん、「キャー」という悲鳴が社内から聞こえてきましたよ(笑)。
「残業はだめだ」、と口を酸っぱくして注意しても帰らない社員ってどこにでもいるんですよね。そこで始めたのが、罰金制度です。これでトリンプは「NO残業」を実現しました(笑)。私はマネジメントしていく上で、ゲーム感覚を大切にしているのですが、これも一種のゲーム。罰金を取られないように社員が必死に工夫して、仕事の効率性を上げれば良いわけです。ちなみに、罰金はボーナスから差し引きます。ただし、個人から取るのではなく、部署単位のボーナス予算から。そうすると、残業している社員は同じ部署の人から睨まれるでしょう。これは罰金よりもきついですよね(笑)。もちろん、罰金を科せられた部署はあります。有言実行ですから、私は。そして、最終的には残業する社員は当社からいなくなりました。罰金だけではなく、優秀な社員には社長賞などのインセンティブも出します。人を納得させる一番の方法って、笑いとか楽しいという要素が重要だと思うんです。だからこそ、このゲーム感覚がマネジメントにはかなり有効的。いろいろと応用してみるとおもしろいと思います。
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