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―――著書をお出しになられたきっかけは、どのようなものだったんですか? |
「若い人の言語的な伝達能力、コミュニケーション能力の低下については、いろいろなところで言われていますが、僕自身も感じるところでした。声と言葉のプロとして、伝達能力の訓練のお手伝いができるのではないかと早くから思っていたんです。
それともうひとつ、もともと僕は高校生クイズを担当して、10年にわたって全国行脚をしていたんですが、高校生の喜怒哀楽の表現方法がどんどん希薄になっていることに危機感を持っていたんですね。全国大会に進出する各県代表の高校生が、あまりうれしくなさそうにしているので、うれしくないんだな、と思っていたら、実際には『チョーうれしい』と言う。喜びを伝える術を持っていないんです。言語的伝達能力はアナウンサーとしての訓練を活用することができますし、僕は大学在学中から劇団に在籍し、演劇の勉強をしていて、これが感情を出す訓練に活用できるんです。アナウンサーの訓練と、演劇の感情解放の訓練という2つのいわばクスリを融合させ、ブレンドさせて、飲みやすくしたのがこの本なんです(笑)」 |
―――伝達能力の低下や喜怒哀楽の表現力の低下は、どうして起きたんでしょうか? |
「異世代コミュニケーションが不足していることが大きいと思います。昔は家におじいちゃん、おばあちゃんがいたり、地域社会にも近所のおじさんやおばさんなどと話す機会が多かった。つまり、世代を超えたコミュニケーションがたくさん必要でした。若者言葉のような、特定の世代にだけ通用するローカルルールを使っていては、コミュニケーションが成立しないことを実感する機会が多かったわけですね。
ところが今は携帯電話の登場などもあって、その機会が減ってしまった。かつては、彼女に電話するとなると自宅に電話をしなければいけなかったわけです。お父さん、お母さんが電話口に出るかもしれないと、ドキドキしながら準備することで、最低限の敬語や丁寧語が磨かれる機会があった。また子どもや赤ちゃんもたくさんまわりにいて、モノをわかりやすく伝えるという訓練が日常的にできたわけですね。音の高低、抑揚など、いろんな話術ものを使って子どもが飽きずに話を聞いてくれる伝達能力も磨けた。でも、今はそれもないでしょう。しかも学校教育でも、言語活動をバックアップする授業はない。訓練の機会がまったくないんです」 |
―――最近、話し方の本が次々とベストセラーになったりしていました。 |
| 「コミュニケーションや話し方を誰に聞いていいのか、実はみんなわからなかったんだと思うんです。だから本に走ったんでしょう。ただ、話し方の技術について触れた本はあまたあるんですが、コミュニケーションは言葉のテクニカルな部分だけで成立するわけではないと僕は思っています。心の震えであったり、思いであったり、喜怒哀楽であったり、そういうものがしっかりと相手に伝わって初めて、本当のコミュニケーションになる。実は足りないのは、テクニカルな話し方だけではない。ハートの部分も必要なんです。今回の本は、その両方をおさえることができたことが、大きな特徴だと思っています」 |
―――たしかにこれまでの話し方の本とはちょっと違うな、と思いました。 |
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| 「ありがとうございます。本もすばらしいと書いておいてほしいんですが(笑)、一方で演劇的な手法、アナウンサーの手法というのは、目の前にいるほうが何倍も伝わりやすい、というのも事実としてあったりするんですよね。僕自身、生でその人の声を聞けば、その人の声や言葉のどこに問題があるのか、すぐにわかります。200人、300人の方であっても、一斉に声を出してもらえば、何を矯正すべきなのか、把握できます。ここをこうしてください、とお願いして再度、声を出してもらうと集団でも大きく変わります。5分、10分で声の質、発声方法を改善させることができるんです」 |