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講師の心.com > 講師マガジン 「人」 > 出版記念インタビュー 福澤 朗

 

ちょっとした意識と訓練で印象は変えることができるんです

―――講演などでは、どんなことから始められることが多いですか。

 「まずは、座ったままの状態で全員で笑いましょう、とにかく笑ってみましょう、ということから始めることが多いですね。明るいと照れくさいですから、会場の電気を消して。笑うとストレスも発散されるし、気持ちよくなれるんです。これは感情解放のひとつの訓練です。
  それから、あくびをしてもらうんです(笑)。人が起きているとき、一番力が抜けている状態というのが、あくびをしているときです。発声の基本は力を抜くことから、なんです。座っている状態で上手に力を抜くにはあくびがいい。あくびをしながら「あーあ」と声を出すのが、実は一番いい発声の形なんです。大きなあくびをして、大きな声をいっぱい出す。これは一番の発声練習です。

  そして今度は立ってもらって、身体をリラックスさせます。マリオネット・バランスと僕は名付けているんですが、頭の上から操り人形の糸が垂れて、それに引っ張ってもらっているつもりで力を抜きます。日本人は子どもの頃から、立つとついつい気をつけの姿勢をしてしまう。全身に力が入っているほうがいい姿勢だと思われている。でも、こと発声の場合には、だらしないくらいがいいんです。そして腹筋に力を入れる。これだけで声と言葉は変わりますよ」


―――ちょっとした訓練で、話し方の印象を変えるようなこともできるんですか?

 「もちろんです。これは本でも紹介していますが、例えば、未使用のわりばしを1本、持ってきてもらいます。それを横向きにして奥歯で軽くかんでもらって、何でもいいからしゃべってもらいます。実は普通の人はこれではほとんどしゃべれません。唇にも舌にも異物がはさまっているわけですから。でも、それにあらがってしゃべろうとすると、口のまわり、舌のまわりの筋肉がどんどん開発されるんです。そして滑舌が劇的によくなる。

福澤 朗 出版記念インタビュー
福澤 朗 出版記念インタビュー

  早口言葉に『ブラジル人の ミラクル ビラ配り』というものがあるんですが、ラ行が多く難しい。でも、わりばしを入れて何度か練習し、はずしてやってみるとびっくりするくらいうまくしゃべれるようになります。

 また、声が暗いと言われる人は「う」と「お」の音が弱いんです。それをより明瞭にやや強く発音するだけで、その人の日本語はすごく明るくなる。話し方が変われば、印象も大きく変わります。表情の作り方の訓練もあります。コミュニケーションは表情で印象が変わりますから。世界一酸っぱい梅干しを食べる顔と、満面の笑みで顔のパーツを全部外側に飛び出すくらいの顔とを交互にやる。これを何度もやるだけで変わります。絶対に隣の人の顔を見てはいけません、とは申し上げますが(笑)」


―――企業向けの研修などでも、使えそうな内容がありそうですね。

 「コミュニケーションの技術は本当にたくさんあるんです。プレゼンテーションなどでの上手な話の組み立て方。間の取り方。まゆげの使い方…。意外に好評なものに、『言葉の距離感』があります。全員後ろ向きに5、6人、1m間隔で立ってもらって、最後尾から特定の誰かに声をかけてもらう。声をかけられた人は手をあげてもらう。これ、言葉の距離感のない人がやると、全員の手が上がるんです(笑)。3番目の人に声をかけたつもりが、2番目の人の手が上がったり。この技術は、誰に向かってしゃべるか、というプレゼンテーション技術としても生きます。

 また、『空気を読む訓練』もあります。5人が集まって、ランダムに「1、2」「3、4」「5、6」と一人ずつ数えていってもらう。できるだけ間を開けないようにするのがポイントです。しかし、順番ではなくランダムですから、どのタイミングで声を出すかが難しい。でも、慣れるとできるんです。誰が息を吸ったか、誰が声を出そうとしているか、わかるようになる。相手を感じられるようになる訓練です」


―――なるほど、テレビでおなじみの福澤さんですが、いろんな技術を持っていらっしゃって、それを伝えることもお仕事にしておられるんですね。
福澤 朗 出版記念インタビュー

「いずれやってみたいと思っているのは、話し方の訓練の授業を、小中学校、高校で行うことです。少子化が進む中、一人ひとりの能力を高めることは極めて重要な課題。そこに少しでもお役に立てれば、と思っています。それこそ、本に書けたことは僕の持っているノウハウのほんの一部。いずれはノウハウ全体を、福澤メソッドのようなものに体系化できれば、と思っています。日本人って、生まれてから一度も発声練習をしたことがない、という人も多いと思うんです。これでは、コミュニケーションの上達は難しい。でも逆にいえば、トレーニングをすることでこれから大きく変えられる、ということでもあります。ぜひ、トライしてみてほしいと思っています」

――本日はお忙しい中、貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございました。

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取材・文:上阪 徹 /写真撮影:野内 幸雄
(2009年10月 株式会社ペルソン 無断転載禁止)  
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