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  講師の心.com > 講師マガジン 「人」 >スペシャルインタビュー 平尾誠二
 
Keywords
  1) 我慢の時間も必要だ、とリーダーはしっかり伝えるべき
  2) 勝ち目のないゲームでは「やる気」は出ない
  3) 求められるのは「負」を「正」にする力


求められるのは「負」を「正」にする力


――マネジメントをするときには、部下の長所を伸ばすべきなのでしょうか。欠点をカバーすべきなのでしょうか?

平尾誠二
 「それは、両方しなければなりません。リーダーは両方を心がけなければいけないと思います。ただ、特にスポーツでも企業でも、日本の組織でリーダーが戸惑うのは、エゴの強いタイプの人間をどう扱うか、かもしれないですね。シュートすべきところでパスしてしまうなど、サッカーでも日本人のエゴの少なさはよく言われるところですが、それは日本の文化も影響しています。和を重んじる日本社会では、こういったタイプはチーム内で嫌われかねないからです。ただ、サッカーに限らず、日本はこれからこういうタイプの人間を飼い慣らしていかないといけないと思うんです。なぜなら、扱いにくさはあっても、その分、大活躍する可能性を秘めているからです。

  そこで組織全体で考えたとき、注意しなければならないのは、褒め方です。エゴの強いタイプを手放しで大きく褒めると、本人にはエゴを増長させてしまい、組織は盛り上がらなくなってしまいます。ただし、結果を出したのに褒めないというのは、ありえない。だからこういうときは、一人だけ呼んでリーダーが褒める。一対一でしっかり褒めるんです。そして、『みんなのおかげ』を強調するように伝える。それがお前のためになるんだ、とリーダーは自信を持って言うべきです。実際にそうなんですから。

 そして全体を前にした場合、貢献度がないように見えても、こっそり頑張っていたメンバーを中心に褒めるべきです。例えば、エゴの強いAが受注に成功しても、実は後ろで企画書を作ったBや、リサーチをしたCがいたりする。そのBやCをこそ、みんなの前で褒めるんです。これは盛り上がります。全体のモチベーションにつながっていきます」

―最近では、リーダーに求められる資質として、「人間力」というキーワードがよく聞かれます。どのようにすれば、人間力を高められるとお考えですか?

  「人間というのは、経験を力に変えていくことがとても大切になると僕は思っています。とりわけ、過去の失敗や後悔、辛くて苦しかった、いわば『負』の出来事を、自分の中でいかにプラスの方向へ転換できるかどうか。どんな経験も自分の肥やしにできてしまう。そういう力のある人が、『人間力』のある人だといえるのではないでしょうか。キャパシティのある人、と言ってもいいかもしれません。

 世の中には、不条理なこと、理不尽なこと、矛盾することが山のようにあります。それを真正面から受け止められるかどうか。チームづくりや組織づくりをする上で、こうしたものを徹底して排除するという方法もあります。すべてを規律で作り上げてしまうやり方もある。でも、その結果は、味気ない、そっけない、なんの面白みもないものになるんです。
 一見、負に思えるもの、無駄に思えるものが、すごい力になっているという面もあるんです。だからこそ、生産性や効率ばかりを追い求めることの危険に気づかなければいけない。リーダーシップというのは、そうしたネガティブなものを受け止め、自分の中で浄化していって、栄養にしてチームに与えていく役割があるんです。こういう力が、これからはますますリーダーには必要になってくると思います」

――中学、高校、大学、社会人とずっとチームのキャプテンを務めてこられた平尾さんだからこそ説得力がありますね。

平尾誠二
 「もちろん僕も、『リーダーとは』と最初から分かっていたのではなく、いろんな経験をすることで勉強することができました。でも最近、はたと気づかされたことがありまして、僕はそもそも、『リーダーとは孤独な存在である』と思っていました。メンバーのいやがる練習もさせないといけない。いやなことも言わなければいけない。彼らから見たら非常に“煙たい”存在です。ですから中学・高校時代は、練習が終わってみんなが遊びに行くときに、僕だけポツンと残るようなこともありました。でも、それは仕方がないことだと思っていました。むしろ、こっちからは近づかないでおこうと思っていました。重要なのは、勝利すること。これが求心力を生む。あいつならなんとかしてくれる、というメンバーの意識や信頼を生む。それはそれで必要なことだったと思っていますが、ようやく最近になってわかってきたことは、孤独だったと言いながら、実はこまごまとサポートしてくれていた人間が近くにちゃんといたのだということでした。また、それこそメンバーたちは実は優れたフォロワーであってくれたということです。そういう関係性があって、チームがうまくいっていた。ですから、彼らに言わせれば、『何が“孤独”だ。俺たちはお前に必死についてきたんだ』と怒られてしまうかもしれません(笑)。ですから、『孤独』という言葉の使い方に気をつけなければいけない、と思うようになりました」

――最後に、ご自身がリーダーとして持っている信念とはどのようなものか、教えてください。
 「特に何か強く持っているものがあるわけではありません。でも、責任がある、ということは常に意識しています。そして、自分が思ったことを絵にしていくこと。メンバーがその絵に共感してくれているからリーダーでいられる、もっといえばチームは成り立っているわけです。ただ、この絵を完成させるためには努力が必要です。時にはうまくいかないこともある。結果を出せず、支持を得られないこともある。でも、そうなったときにはリーダーは替わればいいんだと思うんです。大事なことは、リーダーでい続けることではありません。組織が勝つこと。リーダーはその覚悟を持つべきだと僕は思います」

――本日はお忙しい中、貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございました。

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取材・文:上阪 徹 /編集・写真:上原 深音
(2010年7月 株式会社ペルソン 無断転載禁止)  
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