今泉 清保(いまいずみ せいほ)
フリーアナウンサー/フリーライター
1968年、青森市生まれ。大学卒業と同時に、「やらなかったことを後悔するのが嫌だ」という思いから、福岡放送にアナウンサーとして入社報道記者としてドキュメンタリー番組の制作にも携わる。現在は、フリーとして、 「レディス4」(テレビ東京)の司会など、各局の様々な番組で活躍中。
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Vol. 2 『現場はずっと人手不足』
(2010年05月14日)
今回は看護師の話です。私が入院していたのは国立の大きな総合病院でしたが(現在は独立行政法人)、ちょうど内科病棟の看護師の二交代勤務が始まったところでした。二交代というと、単純に考えて一回の勤務は12時間。もともと大変な仕事なのに、勤務時間が長くなるのはどうなんだろうと思いました。たまたま総師長さんとエレベーターで一緒になったときに「二交代制って何がいいんですか」と尋ねてみたら「シフトが三交代より単純になるから休みは取りやすくなるのだけど、実際のところはやってみないとわからない」という返事でした。
ちなみに、看護師の勤務時間には三交代と二交代があります。病院によって違いますが、一般的には日勤(8時~16時)準夜勤(16時~24時)深夜勤(0時~8時)に分かれています(時間は目安)。実際の勤務時間は「申し送り」と呼ばれる引き継ぎ業務のためにこれより長くなるのが普通です。二交代では、一般的には日勤(8時~16時)と夜勤(16時~8時)という形が多いそうです。この場合、夜勤のときには2時間ほど仮眠をとることになっています。
仮眠があるとはいえ16時間勤務なんて大丈夫なのかと思いますが、二交代にはいくつかのメリットがあるそうです。ひとつは、先ほどの総師長さんが言っていた「休み、特に連休が取りやすくなる」という点。また、三交代では出勤時間が3パターンのため生活のリズムが狂い、不眠や疲労の蓄積に悩む人が多いのですが、二交代だとそれが多少は軽減されること。そして三交代の場合、準夜勤と深夜勤は深夜に出勤あるいは帰宅をすることになるため、女性にとっては不安が大きいのですが、それが解消されるという点です。
二交代にも問題はあります。夜勤では2時間仮眠がとれるといっても、もちろん患者の急変などでとれないことも多々あります。また、2時間程度の仮眠ではかえって疲れや眠気が増すという声もあるようです。
この二交代という勤務体制は、92年に当時の厚生省が「二交代も差し支えない」と容認し、95年頃から国立病院で導入し始めたことで広がりました。現在も全国の病院で導入が続いています。その背景には、87年に導入された、労働基準法の変形労働時間制があります。
それまでの労働基準法では、1日8時間、週40時間以上働かせてはならないという決まりがあり、これを超える分については残業手当を支払わなければなりませんでした。しかし変形労働時間制では「1か月の労働時間を平均して、週40時間を超えていなければいい」ということになりました。つまり、1日の勤務が8時間を超えていても、月平均で週40時間であれば、残業手当は支払わなくていい、という制度です。
これは財界の要求で取り入れられました。理由は人件費の抑制です。この仕組みを、厚生省は看護師にも導入したわけです。もちろん、人件費の抑制が狙いです。看護師にとってのメリットを考えたわけではありません。
ちなみにILO(国際労働機関)は「看護職員の雇用、労働条件及び生活状態に関する条約」で「1日の労働時間は8時間、超過勤務を含めて12時間以内」を規定しています。この条約が採択されたのは77年。今から33年も前のことですが、日本はいまだに批准していないどころか、逆行する政策をとっています。
もともと人手が足りないうえに、さらに人件費を削減するため、世界基準を無視して二交代制を導入し、負担を現場に押しつけているのが、日本の看護師の現状なのです。