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中村 勝雄のコラム「つながるチカラ」
中村 勝雄
中村 勝雄(なかむら かつお)
小学館ノンフィクション大賞・優秀賞 作家

長崎県生まれ。平塚養護学校・高等部卒業後、映画監督・木下恵介氏に師事。その後、短編小説集『涼子~Hello my love~』出版し、小学館ノンフィクション大賞・優秀賞を受賞。現在作家として、子育てをしながら異色のバリアフリー論を新聞・雑誌などに発表。重度の脳性マヒ、障害者手帳1級。



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Vol. 1 『つながって生きる』
(2009年04月01日)

 私は重度の障害者であり、物書きという安定も、また不安定もない仕事をしているから時流の影響をさほど受けていない。いわばギャンブルに似た職種だといえる。
 ある意味では、かなり特殊な人生の途中だからリーマンズショックも円高も日々の生活には、なんら関係なく生きている。
 いま様々な分野で、いろんなモノが崩壊している時代の中で、それを回復していくチカラをみんなが探している。
 いったいこの時代に、どんなチカラがあれば乗り切れるのか?

 これからも続けてコラムを書き続ることとなり、新しいテーマは『つながるチカラ』としたのは、この壊{こわ}れた時代の波をあたかもサーフィンのように楽しむヒントが、そこにある気がしたからだ。
 たとえば人は、それぞれに大変だった過去の経験というデータベースがあるとしよう。そして目の前に起こったトラブル(大変なこと)に驚き、その過去の経験(データベース)から解決方法を探す。
 普通の方は自分の人生経験の中から、私は障害者としてある意味で特殊すぎる経験の積み重ねがあったうえで、トラブルへの対処法をひねり出すのだから、その思考回路の違いなど説明できるはずがないが、やはり心の持ちようだということは間違いない。
 まさかばかりを上り下りしてきた私の人生は、たいていのトラブルは思い悩むほどの問題だとは感じない。少し時間をかければ、なんとかなる。

 最近、いつの間にか変わってしまった現実があり、あらためてその変化に驚いた。うちの最寄り駅でのこと、あいさつされてしまった。電車のドアが開いて、車イスに駅員さんが手をかけた。
「お帰りなさい」
「すみません。ありがとうございます」
「お気をつけて」
 この数年、ずっと喉{のど}に魚の小骨が引っかかっているような違和感は、駅員さんの車イスへの対応という変化だった。
 私が交通機関を使うようになったのは、1980年代の初頭からだ。
あの当時、あからさまな乗車拒否は少なくなっていたものの、いくら鈍感な私でも『招かざる客』あつかいされているのは分かっていた。思い出したくもないほどの言葉をあびせられ、しばらくは人間不信になったこともある。
 ところが近ごろでは、お気をつけてと言われてしまう。
 たまに車イスで電車に乗るのとき、あれほど大変だった時代は、どこへ行ってしまったのか? 気がついたら、そうなっていた。
 だから、笑ってしまう。

 健常な方でも障害者でも、まさかはあるし大変な出来事もある。それでも、ほんの少し時代が変われば、笑える現実にもなる。
 この何となく先が見えない時代をどう生きるかは、たぶん自分次第でしかない。




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