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鈴木 ひとみのコラム「人間の価値・生き方について」
鈴木 ひとみ
鈴木 ひとみ(すずき ひとみ)
エッセイスト

1962年大阪府出身。82年度ミス・インターナショナル準日本代表に選出。84年交通事故で頸椎を骨折。86年結婚。2004年アテネパラリンピックに射撃で出場。著書は「車椅子の花嫁」として、テレビドラマ化されている。

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Vol. 9 『駅と人情とバリアフリー』
(2005年07月01日)

先日、名古屋で乗り換え、飛騨高山へ行った。

数ヶ月ぶりの名古屋駅は、愛知万博の開催にあわせ、どの路線もすべて、エレベーターが完備していた。しかも、駅員さんの対応がすばらしい。笑顔とともに車椅子を押してくれる操作も慣れていて快適だ。

これはいつも感じることだけれど、どこのJRも、本社のある駅の職員が一番レベルが高いように思う。名古屋が本社のJR東海はいつでも、誰にあたっても親切で介助も上手なのに、東京駅は同じ東海でもなぜ?こんなに違うの?と。

また東京駅が本社のJR東日本の職員はさりげない介助で乗り換えの移動もテキパキし、着く駅への連絡もぬかりなく、プロらしい応対に、いつも安心していられる。

しかし、なぜ同じ東日本の駅で、これ?と疑問に思うこともある。
たとえば、車椅子で利用するとき、あからさまにいやな顔をされることがある。
これはまだ良いほうで、連絡を受けているのに"しらばっくれている"駅員にあたったこともある。

通常、乗る駅で着く駅に電話してくれるのだ。その理由は、電車からホームへ降りる段差と隙間に車椅子の前輪が落ちると前から転げ落ちるから。たいてい停車時間は30秒ほどしかない。
駅員がいないときは仕方ないので、近くにいるお客さんに頼む。

頼まれたほうも初めての経験で戸惑っている様子。
こわごわやってくれる人に身を任せることほど、怖いものはない。

ホームに無事降りたあと、ゆっくり、こちらへ歩いてくる駅員さんに「連絡が来なかったのでしょうか?」と尋ねると「いいえ、連絡をもらっていました」と、ただ、それだけ。同じことが続けて2回あったので、その駅を利用しなくなった。職員に対する教育が一元化されていないのか、駅員の教育は、その駅の駅長まかせなのか、駅によってレベルの差がはげしいのは不思議だ。

こういうことで一喜一憂することは全く無駄なことだ。
肝心の講演より、この道中の方がよっぽど疲れることもある。

バリアフリーについて、設備がよくなってもそこに、こころが伴っていないと意味がない。
たとえば、スロープの上や点字ブロックの上に自転車がとまっていて、利用できないとか、立派な車椅子用トイレが物置になっていたり、鍵がかかっている場合がある。こう言うと、必ず根性物語をもち出す人がいる。

「少々設備が悪くとも、そこにいる人の気持ちで車椅子を持ち上げれば、それでいいのだ」と。

私は違うと思う。人情に頼る関係はお互いに、気持ちの負担となり、
「そんなにまでして出たくない、気兼ねだ、」と外に出る意欲が失せてしまう。

それにもし、手を滑らせて落っことしたら、どうするのですか?
善意の人に責任をとってもらうのですか?とてもいやな後味を残すことになる。

情に頼ってなんとかする、という美しい幻想はそろそろ、卒業したほうがいい。

エレベーターのついた駅の駅員さんは以前より優しくなった。
これが人間の真理だ。




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