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午前4時、イラク南部サマワ郊外。荒涼とした砂漠地帯に人だかりができている。近寄ってみると大人から子供まで入り乱れて、手振り身振りで騒ぎ立てていた。ここはサマワにある羊市場。その名の通り食用の羊やヤギをここで売り買いする。多数の羊を育て上げた遊牧民の人たちが、この街に集まり羊をお金に変えていく。
この市場でひときわ目立つのは、頭に赤い刺繍の入った布を巻き付けた子供たちである。この少年たち、年齢は13歳前後、あどけなさの残る表情をしているが、羊をめぐる仕事の技量には目を見張るものがある。羊を売りさばくスピード、価格交渉、羊を手なずける方法、羊の体調管理など、瞬時に状況を見極める。子供とはいえ、その雄姿は職人そのものである。この少年たちは父、さらには祖父の代から引き継がれてきた羊飼いの職業を無条件に受け継いでいく。そこに選択の余地はない。
子供たちは興味深い話を聞かせてくれた。それは赤ん坊の頃から羊に接していると、羊と会話ができるということ。羊たちが何を食べたいのか、どこに行きたいのか、羊の鳴き声や歩き方を見るだけで羊の思いを理解できるのだという。
羊飼いの少年たちに「学校で勉強はしないの?」と問うと、どの子も「行ったことがない」という。小さい時からずっと家族で砂漠を遊牧しながら羊と生活をしており、行きたくても砂漠に学校は無いから仕方がない、そう教えてくれた。時折、子供たちは羊を売る為に村に立ち寄る。すると同じ世代の子供たちが制服をきて学校に行く姿を目撃する。学校では何を教えてくれるのか、それを知りたいという。
羊飼いの少年たちに夢を聞いた。子供たちはこう答える。「それは村に家を持って家族と定住すること。そこから学校に通いたい。制服を着て、教科書や文房具の入った鞄を背負って学校にいってみたい。これが僕の夢です。」
イラク、サマワの羊飼いの少年たちは学校に行ける日を待ち望んでいた。
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