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末吉 竹次郎のコラム「末吉竹二郎の環境塾」
末吉 竹次郎
末吉 竹次郎(すえよし たけじろう)
国連環境計画 金融イニシアチブ特別顧問

日興アセットマネジメント在職中に、UNEPFIの運営委員会のメンバーへ就任。02年6月の退社を機に、UNEPFI国際会議の東京招致に専念し、03年10月の東京会議を成功裏に終えた。現在も、引き続きUNEPFIでの活動、各種審議会、講演、TV等で啓蒙に努めている。

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Vol. 9 『緩和策と適応策』
(2009年01月26日)
「温暖化がもたらす洪水の被害は次のようになります。市内の15%が被害を受けます。そこには、125万人が住み、48万軒の建物があり、441の学校があり、75の地下鉄などの駅があり、10の病院があり、そして飛行場が一つあります。これらの経済的価値は30兆円にも上ります」。

「温暖化は、長くて暑い夏と暖かく湿った冬、そして熱波、干ばつ、洪水をもたらします。気候変動は市民の、中でも弱者の生活の質に深刻な脅威となっているのです」。

「世界のリーダイングシテイたる地位が脅かされているのです。市民の皆さん、この気候変動の危機から我われを守るために、もっと木を植えましょう。もっと配水施設を整備しましょう。もっと水の効率的使い方に取り組みましょう」。

こうロンドン市民に呼びかけたのは、当選したばかりのボリス・ジョンソン市長でした。2008年8月のことです。ロンドンといえば、前任のリビングストン市長も温暖化対策に熱心で、「2025年までに、CO2排出を1990年比65%削減」という極めて意欲的な目標を掲げていました。

ここで2人の市長の呼びかけを比較してみましょう。
先ず、リビングストン市長です。彼の呼びかけは「温暖化の原因であるCO2を皆ではやく、大きく減らそう」ということでした。この呼びかけは「緩和策」と呼ばれるものです。原因を取り除くことで温暖化の進行を「緩和」できるからです。

でも、CO2を減らすだけで温暖化対策は十分かと言いますとそうでは無くなってきたのです。温暖化をストップするにはもう手遅れだ。進む温暖化をどこで止めるか、それを目標にしなければならなくなってしまったのです。それが温暖化の現実です。

とすれば、温暖化は進み、当然に被害が発生します。それは不可避です。その被害から人々をどう守るのか。止まらぬ温暖化に我われ自身をどう適応させていけばいいのか。もう、そんなことまで考えなければならなくなってしまったのです。これが「適応策」と呼ばれ、新たな政策目標になってきました。ジョンソン市長の「気候危機対策計画」こそ、起こりうる被害を具体的に示すことで、適応策の重要性を訴えたというわけです。

では、日本はどうなっているのでしょうか。
依然として「温暖化を防止しよう」、「ストップ・ザ・温暖化」などのスローガンが残っています。緩和策以前の呼びかけです。我われも早く、温暖化の進行という厳しい現実に目を向けた政策を打ち出さねばなりません。いつまでも、「甘い呼びかけ」では適切な対応はできません。その結果、多くの国民が被害に晒されてしまうのです。

緩和策と適応策。
これらが温暖化対策の2本柱となる時代がもう始まっているのです。


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