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Vol.23 「コーチングで会話が変わる?」
今回はワークショップ第二弾として、先日、本田技研工業(株)浜松製作所で行ったワークショップの様子をレポートすることにした。今回与えられた使命は・・・?
1.今回のテーマは、コーチング
「川村さん、今度はホンダの浜松ですよ。お願いします」――こう講演依頼ドットコムのスタッフから電話が入り、前回のソニーでのワークショップを終えたばかりだった僕はすかさず「よし。まず工場見学いってもいい?」と聞き返した。
なぜなら前回の経験から、ワークショップは事前の準備がほぼ成否を決めるとわかったからだ。聞けばホンダの浜松製作所では、僕の大好きなオートバイも作っているという。「ひ、ひょっとしてバイクの製造ラインも見れるってこと?!」そうワクワクしながら、12月の初旬、浜松製作所を工場見学を兼ねて下見に訪れる。
2.なぜコーチングなのか
コーチングとは、指示命令をするのではなく、問いかけをすることによって部下の当事者意識、やる気を引き出すコミュニケーションの手法。そして今回のワークショップ対象者は、生産ラインで50名ほどの部下をかかえるユニットリーダーと呼ばれる方々約40名。年齢は30代後半から40代がほとんどだ。
今回の研修においては、自分のユニットをまとめたり、「2way」と呼ばれる二者面談をする中での部下との接し方についてコーチングの要素を取り入れたい、というのが大まかな趣旨だ。また、難しいレクチャーでなく、現場で明日から使えるようなスキルを教えてほしいとのリクエストもあった。
その後、オートバイの製造ラインを見学。タンクが溶接されるところやエンジンが搭載されるところなどを見て回る。バイク好きの僕にはたまらなくうれしかった。
現場のユニットリーダーの方々に「現場で困っていることはなんですか?」「皆さんのやる気の源は何なのですか?」などと質問をしながら、ラインを見て回る。
このように直接当日の参加者とふれられる機会はものすごく貴重だ。現場の雰囲気、そして彼らのニーズなどを十分に感じて東京に戻り、ワークショップのデザインを練った。
3.鼻がつまりながらスタート!
講演は無事終わり、その後すぐ浜松市内のホテルへ移動。宴会場の一室が会場だ。グループごとのテーブル、フリップチャート、プロジェクター、コーヒーサーバーなどが並ぶ。
「よしっ」と気合を入れはじめたころ、講演の後半からつまりだした鼻がまたつまる。しゃべるのもちょっとつらい。「すいません、ティッシュありますか?」とホテルの人にお願いし、スクリーンの裏で鼻をかむ私。お茶を飲み、つばを飲み込みながらなんとかごまかす。
3時半、ほぼ全員が揃って、いよいよ開始。はじめはいつも「これから何をされるんだ〜」という緊張感が必ずただよっているので、それをなごませるために「はいっ、じゃ目の前の人とペアになって、相手になりかわってその人を紹介してください」とやる。だいたいこれで肩の力が抜けてくる。さあ、いよいよ本題だ。
4.「聞く」「問いかける」「伝える」
この3つは、コーチングの基本三要素だ。今回は時間の都合上、「聞く」「問いかける」だけを扱うことに。まず二人組で向き合ってもらい、相手の話を聞く実習。普段、私たちは人の話を「聞いて」いるつもりで聞いていない。ほかのことや次にどう言うかを考えていたり、話を腰を折ったり・・・。
相手の話を100%聞くには、まず体の構えが大事だ。軽く目を合わせ、深呼吸し、肩の力を抜いて、体を開く(腕組み、足組をしない)。そしてうなずき、相手の言うことをあいづちで受け止め、ときにオウム返しで返してあげる。
意外だったのは、この「聞く」ということにとまどいを感じている人が多かったことだ。あとで感想を聞くと「目を合わせるのが恥ずかしい」「あいづちを打っている自分がわざとらしく感じてしまう」など、一番気づきが多かったのは、とても意外だった。
5.自分の頭でなく、相手の頭を使うには?
コーチングで相手のやる気を引き出すには、自分で考えてはいけない。いかに相手の頭を動かすかがポイント。なのでたとえ自分が答を知っていても「こうしたらいいよ」と言いたいのをグッとこらえ、できるだけ「君ならどうする?」と相手の頭を使うことだ。
もうひとつは未来質問。たとえば部下が失敗をしたとき「なぜ失敗したんだ!」「あれだけ時間があったのにどうしてやらなかったんだ」と失敗した原因、過ぎてしまったことに意識を向ける人がほとんどだ。
しかし、失敗した本人も、怒っているほうも、進んで行きたいのは「うまくいく」状態のはず。ならばそちらへ意識を向けるほうがより建設的なのでは。なので「次からどうしたらうまくいくと思う?」「うまくいくためにできることはなんだろう?」と問いかけていくのが望ましい。
こんなことをレクチャーで解説したあと、悪い例をプロジェクターで写し「では、あなただったらこの会話をどう進めていきますか?」という課題を各チームごとに発表してもらった。
6.ケーススタディ:やる気のない中堅社員
次はより現実的なケーススタディだ。「自分のチームのベテラン社員が、やる気を失い惰性で仕事をしている。ミスをしても悪びれる様子もない。そんな社員に、どうやって声をかけ、彼をチームに巻き込んでいくか」という課題を出した。
各チームでテーブルを囲み、真剣に話し合いがはじまる。制限時間15分。会話の流れをフリップチャートに書き出していく。そして発表。ベテラン社員を励ます会話、若手との会話をお膳立てしてノウハウを伝えてもらおうとする会話など、とても現実的で、こちらが勉強させられる。
7.役者が揃いに揃ったコンテストで大盛り上がり
さて、最後のしめくくりは、今日学んだスキルを使った上司と部下のスキット(寸劇)の発表だ。30分の試行錯誤の後、チームごとに二人が前に出て発表する。これが大ウケ。
現場の人しかわからないギャグ、シュールな役回り、リアリティたっぷりの会話、吉本喜劇さながらの掛け合い・・・。本当にホンダマンは芸達者の人が多く、おおいに楽しませてもらった。
笑いの中にも、いまさっき学んだばかりのスキルを、皆さんなりに応用した成果がみえる。その後投票し、結果発表。今回も皆さんの貢献のおかげで、大成功のもと、ワークショップを終えることができた。
8.相手に考えさせる。素晴らしい!
以下、いくつか感想を紹介させていただく。
・「可能性は無限だから、長所を生かす問いかけをする」を心がけたいです
・聞くことの大切さと難しさを改めて考えさせられました
・上司でなく、パートナーとして部下を育てていきたいと思います
・悪い例がすべて自分にあてはまりました
・言葉ひとつで、相手の気持ちが変化したり、やる気が出たりすることを再認識しました
・答を先に言わずに言わせるように今後していきたい
・普段一方的な会話になりがちなので、今後、部下や家族との会話に生かしたい
・目線を変えた見方ができました
・相手に考えさせる!すばらしい
・日頃の部下に対する対応について今一度見直すことができ、非常に有意義だった
9.答はすべて相手の中にある
世の中の多くの人は、自分が答を知っていて、それを教えてあげることに価値があると思っている。あるいは知っていても教えず、「自分で盗め」と思うかどちらかだ。コーチングはいずれでもない。ここでコーチングに大切な3つの原則を紹介しよう。
@人の可能性は無限大
A答はすべて相手の中にある
Bそれを引き出すにはパートナーが必要
私が特に好きなのは、ふたつめの「答はすべて相手の中にある」だ。ワークショップもこの考えがベースになっている。ファシリテーターはあくまでも進行役でお膳立てをするだけ。その中から自分がやってみながら答を見つけていくのは参加者自身だ。
今回も、ユニットリーダーの皆さんが、短い時間の中で自分なりに新しい知識をかみくだき、自分のものとしてアウトプットしていただけたことに尊敬と感謝の念を捧げたい。「答はすべてその人の中にある」、まさにその通りだと思った。
ワークショップ終了後の懇親会では、和気あいあいとお酒を酌み交わし、大変楽しい時間を過ごすことができた。今回のワークショップをきっかけに、コーチングのスキルが少しずつ会社内に浸透していくことを心から願ってやまない。皆さん、本当にありがとうございました。
今月のレッスン:相手の可能性を信じ、指示よりもまずは問いかけよう
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