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Vol.27 「いまから遅すぎることはない!」
〜50代に学ぶ「すがすがしさ」〜
いま、50代が元気だ。父の友人や周りで、サラリーマン生活に見切りをつけ、自分の人生、納得のゆくように生きはじめている人生の先輩たちが明らかに増えている。10年前だったら考えられなかった。これも日本人の職業観、働き方の変化により、価値観、人生観が変わってきている結果なのだろう。
今回は、私が身近で出会った、50代で新しいことを始めた元気な人達を題材に、「仕事に大切なもの」は何かを探ってみたい。
●若者にはないものがある
50代で新しい仕事を始める人たちには、みなはっきりとした志がある。それがぶれていないのだ。「なぜ、この人がこれをやっているのか」という理由が、ストンと心に落ちるのだ。僕は相手をみるとき、なぜかこの基準でみてしまう。別にそんなものなくてもいいかもしれない。しかし、それがはっきりとわかると、なぜかその人をすごく好きになってしまうのだ。人間として。
若い人達に「なぜ、それをやっているの?」と聞いても「お金をもうける手段として」「人に使われるのがいやだから」と言うのが多いが、50代企業家は、これまでの人生で、自分のやりたいことが十分に熟成し、また人間的にもまとまってきているからだろうか、それがとても明確で、何の曇りもなく、実にすっと心に響いてくるのだ。
このさわやかさ、潔さを感じるのは、私だけだろうか。次に私が会った人生の先輩を3人、紹介したい。
●若者の町、代官山にエステサロンを
代官山に「サボワール」というエステサロンがある。こちらは50代の今井さんという女性が1年ほど前にオープンさせたサロンで、テラスに植えられた色とりどりの花が遠目にも美しい。
今井さんは元々、代官山でお菓子のショップの運営を任されていた人だが、あるときから美の意識に目覚め、勉強を重ねてついに念願かなってお店を開くことができた。しかし、はじめの数ヶ月は閑古鳥。お金を節約するために、店内の装飾はほとんど手作り。ビラを配って歩いたり、看板を出すのもままならぬ状況だった。
ところが幸運がやってくる。雑誌Hanakoで代官山のエステの特集をする月があり、その号の入校はすでに締め切っていたのだが、たまたま編集の人が今井さんのお店を聞きつけ、取材したところ「こんなにきちんとした考えの中でやっているなら、ぜひ紹介させてください」ということで即採用に。
ギリギリ発刊に間に合った。これを機に、徐々にお客さんが増えだす。これも「なぜ、私はこれをやっているのか」という理由が、今井さんを取材した記者の心に、ストンと入ったからだろうと僕は思っている。
先日などはNHKのニュース番組でも取り上げられていたから、彼女の思いは本物に違いない。エステという業界、いろいろな噂もあるが、その中でもしっかりとした考えの元、今井さんのお店は着実にファンを増やしている。
●自宅を改造して『手打ち蕎麦』屋を
日野市に「ほそ川」という手打ちそばの店がある。といっても、普通の民家を改造した店で、電話帳にも載っていない。ここのオーナー、細川さんはとある食品メーカーに勤めながら趣味で蕎麦打ちを習っていたのだが、この御時世、会社の先行きも不透明な矢先「いっそ辞めるならいまだ」と思いきって退職し、1年がかりで自宅を改築。
1階の3室をぶちぬいて家の梁をむき出しにし、板の間にして囲炉裏をつくり、それはそれは立派な雰囲気のある店をオープンした。全国の蕎麦屋を食べて歩いて研究したという。
店は奥さんと二人で切り盛りし、営業時間は昼三時間、午後二時間。休みも週に二日はとっている。ご主人の細川さんはまったく肩の力が抜けている。自然体なのだ。
いわく「何とか夫婦二人食っていければいいから」と屈託がない。客にこびず、自分の好きなものを、好きなペースでやる。なんとすがすがしいのだろうか。
●出版社を立ち上げ、自分で書いて売る
昨年、「半蔵門出版」という聞きなれない出版社が産声を上げた。代表の渡辺さんは、長年大手出版社で編集に携わった後、半蔵門のマンションの一室で出版社を立ち上げた。
この出版社の一番の書き手は、なんと渡辺さん本人だ。自分で書き、自分で売る、こんな幸せなことができる人は数少ないだろう。そのまま企業に残っていれば、そのまま退職を迎え、悠々自適の生活が待っていたであろうに、渡辺さんはあえて冒険の道を選び、舵を切った。
「このまえさ、書店に売り込みにいったらさ、本を扱ってくれるって!すごいだろ〜」と言って楽しそうに話してくれる渡辺さんは、若者そのものだ。こちらが圧倒されるくらい、元気一杯なのである。世の中の50代の人達がみんなこうだったら、高齢者社会は明るいだろうなと思わずにはいられない。
彼らは、みな自分のポリシー、価値がはっきりとしている。そこには一点の曇りもない。彼らに会ったら、一本筋が通った思い、そしてすがすがしさをきっと感じるはずだ。
●やりたいことをやるという、シンプルな気持ち
このすがすがしさは、僕がアメリカでの留学時代に感じたものととてもよく似ている。僕が1年間大学生活を送ったミズーリ州コロンビアは、中西部の田舎のせいもあってか、大企業などというのはほとんどなく、みな名もない小さな会社に自信を持って就職していく。
「僕は広告をやりたいから」といって広告会社に行く者、「将来はNYで記事を書くために」まずは地元のローカル新聞社につとめる者。そこには自分の選択に対する自信がみなぎっていた。
日本で「どちらの会社にお勤めですか?」というと、「い、いや、モゴモゴ・・・」と口ごもる人が多いが、それは自分が選んだ仕事に自信がないのか?
世間の基準と自分を比較する必要はない。もっと自分の選択に自信を持ち、『自分がこれをやりたいから、この仕事を選んだんだ』と堂々とすればいい。会社を辞める必要もない。いまの職場から自分が得られるものがある限り、そこをステージにすればいいのだ。
なぜ、いま、自分がこの仕事をやっているのか、それがはっきりしていると、仕事も楽しいし、自分で主導権をとれる。それがあいまいだと、世間の格付けに流されてしまう。
自分の「これがやりたい」という気持ちに素直になろう。それを身を持って示してくれているのは、いまをときめく若手経営者ではない。実は2,3軒隣にいそうな、カッコいいオジサン、オバサンなのだ。
今月のテーマ:50代の企業家から、すがすがしさを学ぼう。
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