|
Vol.32 「裏返し」
次の写真をみてほしい。ホテルのカードキーだが、さて皆さんパッとみてどちらを表にして入れるだろうか。
先月、岡山に講演に行った帰りのことだ。ホテルに帰り、部屋に入ろうとカードキーを差し込む。「むむむ…!」どうやっても緑のランプがついてくれない。改めて図の説明を見る。速さが問題なのかと思い、そぉーっと入れる。次はシャシャッっと素早く入れる。だがダメだ。今度はカードを入れている間にドアノブに手をかけ、ガシャガシャやってみる。ウーン、やっぱり開かない。おっ人が来る。今着いたようなふりをして、やり過ごす僕。ふぅ。
もう11時近かったし、荷物も抱えていた私はギブアップ。ついにエレベーターホールに戻ってフロントに電話。ボーイさんにきてもらう。
「ああ、これ、こっちが表ですよ」
「な、なんと!」
写真の、ホテルのマークがあるほう(磁気テープみたいのがあるほう)を表にしていれるというのだ。そんなこと、思いもよらなかった。たったいま、「もののみかたを柔軟に」という話をしてきた当の本人がこのありさまである。
僕はこれまで、講演で全国いろいろなホテルに泊まっているし、海外のホテルにだって泊まっている。イタリアだってアメリカだってドイツだって・・・。でも、これまで一度も部屋に入れなかったことはなかった。不慣れなおばさんなどを見つけては得意げに「こうですよ」って教えてあげていたものだ。それなのに・・・。
ボクは「磁気テープみたいなのがあるほうが裏」と思い込んでいた(講演を聞いていただいた方、そう、あのロックオンですね)。だってクレジットカードだって、ANAのマイレージカードだって、スタバカードだってみんなそうでしょ。
しかし、先日、たまたまホテル業界の方向けに講演があり、ためしにそのことを聞いてみると、私の自信はもろくも崩れた。聞くと、ホテルのロゴがある面が上、というのが常識らしい。また、友人に聞くと、カードの差し込む方向を示す三角矢印がある面を見て、いつも判断するという。なるほど、人によって物事を判断する基準はこのように違うのだ。
まったく、固まったもののみかたとはおそろしい。もし、背後に火の手が迫っていて、これを開けないと逃げられないとしたら(ちょっと極端な例だけど)僕は焼け死んでいただろう。
きっと世の中には、今回の僕のように、ドアが開かなくて途方にくれている人がいると思う。いや、ホテルのドアでなくて、自分の可能性のドアだ。どうもがいても青ランプがついてくれない人が。
そんなときは、思いきって自分をひっくり返してみよう。それはやり方を変える(キーを素早く抜き差しする)というより、根本的な考え方を変える(面を逆にする)ということだ。できない自分をできる自分に、自分や会社のピンチ、デメリット、マイナス面をプラスに変える方法を思うことだ。そうすることで、人生のドアが開くかもしれないから。
「裏返し」、これはなかなか思いつかなんだー。
夜、「こんなのわかりにくいったらないよ!ったく」とホテルの従業員に食ってかかった僕だが、朝、チェックアウトの際には「これはいい連載のネタじゃ!」と思い、ニコニコしながら「すいません、あのぅ記念にこのカードいただけますか」と上機嫌だった。これも感情の裏返しか(笑)。
「人生もカードの裏にチャンスあり」
|