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川村透
川村透 講師プロフィール

「あなたは自分の力を
        信じていますか?」

川村 透(かわむら とおる)
川村透事務所 代表
・モチベーティブ・スピーカー
・翻訳家
・企画コンサルタント

 
Vol.37 「海に散ったウィンドサーファー

  3月2日の朝。いつも見ている朝のワイドショーの最後に、こんなニュースが飛び込んできた。
 「昨日、ハワイでガンとの闘病生活を過ごしていた元プロウィンドサーファー、飯島夏樹さんが亡くなられました…」

ウソだろ!奇跡を信じていたのに

 あわててネットで彼がつづっていたブログを開いてみた。2月19日で終わっている。
「そうか…ついに時がきたんだな」

 テレビや新聞で目にした方もいるだろうか。飯島夏樹。プロウィンドサーファー。ワールドカップに出場し、世界を舞台に戦い続けた男。

 彼と僕は、実は同じ高校の同級生である。僕が留学して帰国し、留年して入った学年に彼はいた。全然知らない中ではなかった。一時期、彼は僕のいたバスケット部で練習に参加していたし、バイク好きで一緒に走ったこともある。彼は女の子にもモテた。また、体育祭では、一緒に応援団長を務め、僕が赤組、彼が白組の団長だった。応援合戦の軍配は、接戦の末、彼の白組に上がり、僕の赤組は同窓会杯を取った。

卒業後は会う機会もなかったが、風の噂で彼がウィンドの世界で活躍していることを聞き、書店でウィンドサーフィンの雑誌をみては彼の記事を探したりしていた。彼はその後、グアムで観光客相手のビジネスを展開、これも成功する。そして4人の子どもにも恵まれ、幸せの真っ只中にあった。

『彼も頑張ってるな。よしオレも』と勝手に人生のライバルのように思っていた。その彼が亡くなった。38歳だ。肝細胞ガンだった。一八〇センチはあった恵まれた体格。誰が見ても病気とは無縁の、屈強な体の持ち主だった。

テレビで久しぶりに再会した彼は・・・

 ちょうど今年の2月頃、彼をテーマにした番組が放映され、久しぶりに彼の姿を見た。筋肉は落ち、以前のたくましさはなかったが、高校時代と変わらないものがひとつだけあった。それは人なつっこく屈託のない笑顔だ。真っ白な歯を見せて、ニコニコしながら「川村さん」と言ってくれた、その笑顔はそのままだった。彼の表情は、とても穏やかで、何の暗さもなかった。とても余命半年と宣告されているとは思えなかった。

 彼の場合、はじめ腫瘍が見つかったとき、肝移植を考えたが、それもできないと言われ、うつ病とパニック障害になったと言う。そのショックは察して余りある。しかし、家族に支えられ、自分の運命を受け入れ、自分なりの「死の哲学」を作っていったように思う。テレビを通して聞こえてくる彼の言葉のひとつひとつが、心に突き刺さった。

 「今日も活かされている」「わりいなあ、オレだけ先に天国っていういいところにいっちゃって」「すべてが感謝しかなくなる」こういう時期の人の言葉って、本当に中身が詰まっている。

「闘病記を書いてたら滅入ってしまったが、小説なら書けた」

 彼が言っていた言葉のなかで、とても興味深かったのがこの言葉だ。確かに、闘病記の類は、本人が病気と戦っている真の姿には違いないが、読んでいるほうも、書いているほうも気が滅入る。しかし、小説という形で、ハッピーエンドの物語を書き、その中に自分が入り込めれば、死に対する不安も和らぐのではないか。実際、彼も「書き始めたら、うつも癒えた」と言っている。

 小説は想像の世界だ。しかし、その想像の世界で楽しいイメージ、良いイメージを書き出すことで、気持ちが変わり、ものの見方が変わる。

 僕はよく、講演で『一〇年後、自分の夢がすべて叶った場合の自分のプロフィールを書いてください』と頼んだりするが、飯島君の言葉で、やはり、書くということには力があるのだと確信した。それも「こうなりたい」とか「今の苦しさ」を書くよりも「すでにそれが実現した」「うまくいった」ときのイメージを書き出すのだ。これはやる気だけでなく、人に生きる力さえ与えてくれる。

 今回、飯島君は新しい死の迎え方を多くの人に伝えてくれたのだと思う。つねに明るく、ユーモアたっぷりにブログをつづり、これまでの自分の人生を下地に心あたたまるハッピーエンドの小説を書き続ける、というスタイル。

僕も、正直言って死ぬのは恐い。急に病気になって余命宣告をされたら、どうなってしまうかわからない。しかし、飯島君のスタイルは、僕にもできそうだ。これなら、慌てることなく、自分らしさを最後までもてそうな気がする。

死に際からいまをイメージする

 もちろん、誰だって自分がこの世からいなくなるなんて、考えたくもないだろう。でも死は確実に、誰にでもいつかはやってくるイベントだ。ならばその死に際から目を避けるのではなく、あえて『自分ならどうしたいか』を考えることで、心の準備もでき、最後まで無駄なく過ごせるのではないか。いま、僕もこうして書きながら、自分の最期の迎え方のイメージを持つことができた。僕も、ブログや小説を書き、何かメッセージを発信しながら旅立っていきたい。

 「問題は起きてから考える」的に、リスクヘッジの下手な私たち日本人だが、つねに「もし起きたらどうするか」を具体的にプランしておくことが大事だと思う。自分の死に方についても。皆さんは自分の死に際のイメージを持っておられるだろうか。そこから発想をいまに戻していくと、とても潔い人生が送れる気がする。いまの自分にいるもの、いらないものが見えてくる。ちなみに僕は、いまのところ、かつて白州次郎さんが言ったように「葬式無用、戒名不用」がいいと思っている。

 飯島君の遺骨は、本人の希望でハワイの海にまかれたそうだ。きっと天国でも波と戯れているに違いない。飯島夏樹君のご冥福を心よりお祈り申し上げます。ありがとう。

PS:飯島君の追悼番組があるようです。
3/13(日)16:00〜フジ系列 『天国で逢おう 追悼編(仮)』
ご興味ある方はどうぞご覧ください。

今月のメッセージ:いまあるものを喜び、自分が活かされていることに感謝しよう。



<川村 透講師のコラム バックナンバー>

Vol.36 「これっておかしいんじゃない?」

Vol.35 「凶は吉なり」
Vol.34 「あと一回」
Vol.33 「いまに見てろ」
Vol.32 「裏返し」
Vol.31 「20年前の自分に出会う」
 
Vol.30 「ミスしたときこそチャンス!」
Vol.29 「自分をRe-framingしてみよう」
Vol.28 「上司をコーチングしてみませんか?」 〜逆コーチングのススメ〜
Vol.27 「いまから遅すぎることはない!」 〜50代に学ぶ「すがすがしさ」〜
Vol.26 「組織でうまく動けなかった自分」
Vol.25 「形のない贈り物」

Vol.24 「何が私を変えたのか? 〜いまの自分で相手にウンと言わせる5つのヒント〜」

Vol.23 「コーチングで会話が変わる?」 

Vol.22 「可能性のドアをたたく」

Vol.21 「ワークショップで組織が生き返る!」 
 
Vol.20 「企画を通す喜び」 
Vol.19 「僕ってクレーマー?」
Vol.18 「倒れた父がはじめて見せた笑顔」
Vol.17 「人は変わらない」
Vol.16 「やると決めてからやる人、ただやる人」
Vol.15 「イアン・ソープの翻訳やらない?」
Vol.14 「こだわりがある人は、成功しない」
Vol.13 「人と自分を比べてしまうあなたへ」

Vol.12 「自分のプリンシプルを持つ」

Vol.11 「さあ何か、新しいこと始めよう」
 
Vol.10 「ALS患者から学んだこと」
Vol. 9 「コンプレックスは自分の原動力」
Vol. 8 「自分のものさしを持つ」
Vol. 7 「言葉があなたの人生を決める」
Vol. 6 「未来へ帰る」
Vol. 5 「小さく考える」
Vol. 4 「自分の論理よりその場の論理」
Vol. 3 「2つの悪い知らせ」
Vol. 2 「自信に根拠はいらない」
Vol. 1 「みなさんこんにちは。川村透です。」
 

 

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