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Vol.41 「気働き」
「気働きはできないが、仕事はできる部下。さあどうする?」
もしあなたがいま、40歳前後の世代なら、きっとこうつぶやいているはずです。
「まったく、最近の若いのは、気配り、気遣いができないよなぁ」
同感です。本当に、これまでできて当たり前と思われてきた気働きができない人が最近多い。
相手の立場に立ったり、気を煩わせたりしないような、ちょっとした心配りなのですが・・・。
「書類、届いたのかなあ」
この前、ある書類を仕事を依頼しているAさんに送ったときのことです。Aさんは留学経験もある、とても優秀な20代の女性です。お互い関東なので翌日くらいには届いているはずなのですが、送ってから2,3日たっても音沙汰がありません。おそらく届いているはずなのですが・・・。こんなとき「相手がきっと気にしてるだろうな」と察してくれ、「届きましたよ」の一報を入れる。これを気働き、というのですが、ところがこれが、できない。
「それ、オジサンですよ」「!?」
そんなことを、あるときお付き合いさせていただいている、とある人材サービスの会社社長にこぼしたところ、彼がおもしろいことを言ってくれました。彼も40歳前後ですが、仕事柄、若者に常に接していて、彼らの様子をよくわかっている人です。
彼いわく
「そうでしょう。それはわかりますよ。でも、気が利く人ばかりいいといって採用していると、気がつくとその集団はオジサンばかりになっちゃいますよ」
「??」
私はその意味が最初よくわかりませんでした。けげんそうな私を見て、彼はこう続けました。
「確かに気は利かない連中が多いのですが、ほかの部分をみると、いまの20代っていうのは僕ら以上に優秀ですよ。売り手市場だった僕らの就職時期と比べて、彼らは荒波に揉まれている。自分をよく掘り下げているんです。ですから、表現力、行動力、プレゼン力、コミュニケーション力、協調性、パソコン、英語、資格、どれをとっても彼らはよくできます。ただ、気働きというのは、極めてあいまいな評価基準で、そこはその人によるんですよ」
確かにそのとおりです。彼のいうように、「こいつは気が利かないから」という烙印を相手に押した瞬間に、彼のほかの能力がすべて封印されてしまうのです。ところがオジサンの価値観は、この一点を絶対に許せない。なのでほかの能力より、「気が利く」人をひいきにしたがる。その結果、集まった人材は、仕事ができるかどうかより、「気が利くかどうか」が優先されてしまうのです。こうして同じようなキャラクターの人が集まり、その組織は見事にオジサンの一歩をたどるのです。
■客観的な基準が大事
昭和40年生まれの僕らの世代までは、仕事でのスキル、資格などより、まだ「上司にうまく取り入る」スキルや、酒飲みのスキル、場を盛り上げるスキルなどに重きが置かれていた気がします。どれも定量化できないグレーゾーンですね。
一方、いまの20代前半の人たちは、そんなとこにあまり重きを置いていません。
もっと客観的な基準、つまりTOEIC、簿記、IT資格などを身につけようとしているのです。
それらがないと、仕事にありつけないのですから。
まったく、それに比べると、私たちが社会に出た当時は、のどかな時代だったものです。
■気配りチェックリスト?
たしかにこれらのスキルはあるに越したことはありません。
でも、やっぱり気配りや気遣いって、仕事や人間関係において絶対に必要なもの。何とかして彼らにそのことを伝えたいではありませんか(と、こう思う時点でもうオジサンですかね)。
そこでその社長さんに相談してみました。
「でも、どうしても彼らに気配りを教えたいんですが、どうしたらいいのでしょう?」
「それは、マニュアル化すればいいんですよ」
「?というと?」
「つまり、僕らからすれば当たり前のことでも、それをチェックリストにするんです。そうすれば彼らはそれをやりますよ。何をすればよいのかがハッキリとわかっていることについては、彼らはきちんとするんです」
【気働きチェックリスト】
□朝、会社にきたら机を拭く
□知らない人が来社したら挨拶する
□人を紹介されたら、仲介者に報告する
□エレベータのドアを押さえる
□モノが届いたら先方に一報入れる |
私は彼の話を聞いて、正直「そんな発想はなかったな」と思いました。
「なぜ、そんな当たり前のことができないんだろう。社会人として失格だ」こう考えていたのです。
私と同じように感じた方、あなたはもうすでにオジサンかも?
■ルール化する
この若者の実態を詳しく知る社長さんのおかげで、
私の頭は「オジサン化」する一歩手前でとどまることができました。あーよかった。
これぞ、まさに「もののみかたの転換」なのです。「気が利かない」――その一点にこだわっていると、彼らが持っているほかの優秀さが曇ってみえません。私は英語講師の派遣の仕事にも携わっていますが、多くの人を面接する中、どうしてもそういう細かい部分で彼らを判断しがちです。たとえ英語力が優秀だったとしても、はじめての面接に遅れてきたり、電話をしてもコールバックがない人はその時点で「問題外」として排除してきていました。
しかし、この社長との話の中で、少し考えが変わったのです。
「もしかすると、ほかのいい部分があったのに、そこを見ていなかったかな」と思うようになりました。
はじめの例にもあったように、モノが届いても連絡がないのは、そういう発想自体がないのかもしれません。いままでに誰からもそんなことを言われなかったのかもしれません。
ならば、それをルール化すればいいのです。前もって次のように伝えるのです。
ルール:
・モノが届いたら、メールを入れること
・面接時間厳守。遅れる場合は必ず2時間前までに連絡入れること
・留守電やメールの返事は2日以内にすること。
※これらを守れなかったら、500円の罰金
こうすれば、おそらく皆きちんと守ってくれるはずです。
■人の良い部分を見るのは難しい
人生の諸先輩方からは「そこまでやらんといかんのか」とため息が聞こえそうですが、ぜひ発想の転換をお願いしたいところです。いまの時代の人たちには、客観的基準と気働きの順序が、僕らと比べて逆転しているのです。彼らを取り巻く環境がそうさせたのでしょう。「相手を思って連絡を入れるより、TOEIC800点のほうが確実」だと。
相手の良い部分を見るのは難しい。なぜなら、私たちはつい、相手の悪い部分に目が行きがちですから。でも、どんな人にも必ず優れたところがあるはず。相手のマルを欠かすことを考えるのではなく、相手をマルに持っていくにはどうしたらいいか、そう発想してみてはどうでしょうか。「これができない、あれが足りない」より「こうなったらもっといいよ、これができたらよりすばらしいね」、こういう視点で人を見ることの大切さをぜひ、今月は提案したいと思います。

今月のメッセージ:相手のどこが欠けているのかではなく、
どうしたらマルになるかを考えよう。 |
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