| 川村: |
今、世の中はリーダー不足と言われ盛んに研修が行われていますが、松尾さんはこうした現象をどうお考えになっていらっしゃいますか?
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| 松尾: |
そうですね、まずは今ちょうどバブル崩壊後の新卒採用控えのツケがきて、リーダーになるべき人材世代が不足しているということが挙げられますね。それ自体は時代の流れですから仕方のないことですが、ここには根本的な問題が潜んでいます。
ちょうど新・リーダー世代と呼ばれる20代後半〜30代前半は、「お受験ブーム」で小さいころから塾や学校で人に言われたことを「ただこなす」という習慣ですから自分の人生の舵取りを人に任せる、出る杭は打たれないようにという処世術が身についているのですね。だからすべてにおいてなんとなく他人任せという感じがします。リーダーの大きな素養には自立する、責任を取るということがとても大切です。
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| 川村: |
確かにそういう感じはします。優等生が多い。周りが基準で、常に周りからどうしたら気に入られるかということを気にしている。自分の評価が気になって、なかなか個性を出せない。 |
| 松尾: |
それにあまり外で遊んだりもしてこなかった。友達と野山を駆けずり回って遊んでいた子供は、その中からチームメイキングを学ぶんですよね。だから机の上の勉強オンリーで育った世代は、組織マネジメントのイメージが持てないということもあると思います。
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| 川村: |
なるほど。イメージできると言うのは、大事ですからね。
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| 松尾: |
それと、もうひとつ。リーダーがいないと言っている側が本物のリーダー像を認識できているのかという問題もありますよ。
何でも知っていて、何でもこなす万能型のスーパーリーダーをイメージして、リーダー不足を訴えているのは大きな間違いです。そんな万能な人間はそうそういませんから。リーダーとは、誠実に仕事をしている人たちの中から、見つけて育てることが必要なのです。
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| 川村: |
今までのリーダーはカリスマでないといけないイメージがありました。ですが、今は情報社会で、誰でも調べればいろいろなことがわかるようになった。情報をトップだけが握っている状況ではなくなりました。それに加え、価値観が多様化してきたことで、今までのように出世することが一番正しく偉い道だ、という共通認識が崩れてきた。リーダーになりたくない人も多いと思いますよ。
だからリーダーシップと言っても、一方的に旗を掲げて後ろについて来い、では済まなくなったということですよね。夢や願望は十人十色の状況になってきた、ということは「君はどうしたいの」という部分まで考えないと、人を動かすことが出来なくなってきたということなのです。だから、カリスマでなくてもリーダーはできるという新しいイメージを与えてあげることも大切なことだと思います。
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| 松尾: |
そうそう、まさにコーチングですね。
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| 川村: |
そうなんですよ。コーチングとは、横に並んでサポートする姿勢が基本です。話し上手でなくても、聞き上手であればいいんです。これはそんなに難しいことではありませんよ。
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| 松尾: |
今の企業の風潮としては、成果が出ないと責める。でも誰もが楽しいビジネスライフを送りたいと思っているわけですから、責めるのではなく一緒に成果を出していこうとするスタンスが重要ですね。成果がでると共に楽しくなる。
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| 川村: |
そういう意味では、今の時代に求められているリーダー像というのは明確なものがないような気がしますね。漠然とリーダーの役割を求められても全うするのは難しいですよ。
松尾さんは今の理想のリーダーはどんな人物だと思われますか?
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| 松尾: |
私がよくお話するリーダーの条件は、みんなの英知を集められること、みんなの成功を実現させられること、の二つです。 自分が一番でなくてもいい。メンバーそれぞれのいいところをうまく集めて形にする。そして、部下の成功のサポートをしてあげられる人ですね。
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| 川村: |
私もそう思います。例え自分に専門性がなくても、周りに専門性のある人がいればいい。その事柄については誰に聞けばいいかを知っていればいいと思うんです。ファシリテーターの様な役目を担う人、それが今必要なリーダーだと思いますね。
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| 松尾: |
現代はインターネットであらゆる情報を集めてくることが出来ますからね。
ある分野についてはリーダーよりもずっと詳しい部下がたくさんいますよ。
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| 川村: |
そう。リーダー自身はスペシャリストである必要はない。
だから誰でも出来ると思うんですよ。
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| 松尾: |
そうです。それと理想のリーダーになるために必要なことは、見識と思いやりの心と胆(はら)の据わり具合。皆の英知を集めるにもそれが正しいかどうかの先見性がないと方向を誤ってしまう。それに相手を思いやってこそフォローができる。そして最後にはきちっと責任を取れるだけの豪胆さ。それだけそろっていれば完璧。しかもこれは一朝一夕に身につくのではなく日々の生活の中で磨いていくものばかりです。
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| 川村: |
先見性は大事ですよ。カリスマ・リーダーシップと違って、立てる旗は小さくていいけれど、立てる方向を間違ってしまったら進んでいきませんものね。
その点はコーチングと似ていますね。先見性を持って相手を導くかなくてはいけません。それがコーチングでは「質問」という形になるのですが。
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| 松尾: |
コーチングって、結構簡単に実践できると思うのですが、
組織の中ですぐに始められることって何でしょうね?
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| 川村: |
まず(1)相手の可能性を信じること。はじめから「どうせできない」と思っていては何も引き出せません。そして(2)相手に問いかけること。ついアドバイスしたくなっても、そこをぐっとこらえて「君はどうしたらいいと思う?」と聞いてみる。すると相手は考えますから。それと(3)自分のスタンスを変えること。上司と部下、上と下という関係ではなく、パートナーとして隣に座り、一緒に目標に向かっていくという姿勢が大事です。
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| 松尾: |
この「自分で問題解決できるように」というところが肝心ですね。リーダーは自助、つまりセルフヘルプの精神がないとやっていけないと思います。この仕事に自分が関るからには、自分がなんとか工夫しよう、いい方向へ持っていこうという気持ちがないと周りを動かせない。その自助の精神を育てるということが、次のリーダーを育てることにも繋がっていきますからね。
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| 川村: |
そうですよね。被害者意識でいてはだめなんです。自分から変わっていかないと。自分次第でどうにでもなるんだ、と自分を信じてあげることです。そう自分が変われば必ず周りも変わっていくものです。
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| 松尾: |
このことは、リーダーを育てる立場の方にも言えることですよね。コーチングって時間のかかることですから、そういう数値化できない部分もきちんと認めてあげて、建設的な企業文化に変えていかなければならないと思います。
気付きを与えてあげるような環境を用意してあげることも必要です。リーダー候補になるような人は、仕事が出来る場合が多い。そうするとどんどん仕事を振ってしまって、マネジメントという部分を考える時間的余裕と精神的余裕を奪ってしまう。それでは見識も思いやりの心もましてや先見性など育たない。リーダーは組織のミッションやビジョンを考えて行動していかなければならないのに、それを考えることができなければ、テクニックだけ磨いても意味がありません。そこを間違ってはだめです。
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| 川村: |
リーダーを育てる側の方も、自分の考えの枠を広げて欲しいですね。自分は上司だ、何でも知っている存在でなくてはならないというプライドは横に置いておく。新しいリーダーを育てるには、自分だって新しい上司にならなければ。
日本には、昔から自分のことは自分でやる。自分ひとりでやり遂げてこそ賞賛に値する、という考え方があるように思います。だから耐えるとか、努力という言葉がとてももてはやされる。
でもアメリカには、何かを達成するのに誰かの力を借りればいい、そのほうが効率的だしより大きな結果が得られる、という考え方があったんです。これがコーチングの基本概念でもあるわけですが、ひとりより誰かと成功した方が喜びが大きいという考え方なんですよ。それって言われてみればすごく簡単なことですよね。
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| 松尾: |
確かに、みんなでやった方が大きい成果を得られますよね。
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| 川村: |
はい。そうした喜びを伝えることも上司の役目だと思います。 さて、いろいろお伺いしてきましたが最後にこれからのリーダーについてひとことでまとめるとなんでしょうか。
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| 松尾: |
「人間力」だと思います。
コーチングはスキルであって、やはり最後は人間力だと思います。相手が心から喜ぶようなことを日頃から与えていると、その人の人間的魅力が高まるものです。与えるものは情報だったり、経済的なものだったり、あるいは心身の健康かもしれないですが、人間力を磨くコツは「与え名人」になることです。
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| 川村: |
そうですよね。この人にコーチをして欲しいと思われるような人間力のある人でなければコーチングも逆効果になってしまう。
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| 松尾: |
その通り!
では川村さんは?
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| 川村: |
やはり相手の可能性を信じる人であってほしいと思います。
それによって信頼感も生まれますし、すべてはそこから始まると思うんですよ。
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| 松尾: |
そう、人材育成には愛と時間が必要だと私も思いますよ。
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| 川村: |
松尾さん、本日はありがとうございました。

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今月のメッセージ:
真のリーダーシップとは人間力である、
そして相手の可能性を信じるところからすべてが始まる。 |
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