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Vol.54 コーチングで音が変わる!
先日、とてもユニークな講演に行ってきました。オーケストラの指揮者がリーダーシップやコーチングを語る、というものです。
以前、テレビで似たようなものを見たことがあったので、これだ!と思いさっそく参加してきました。感想は…「Blavo!」の一言です。
歌い方は一通りじゃない
彼の名はベンジャミン・ザンダー。ボストン・フィルハーモニー管弦楽団の指揮者。彼はオーケストラの団員をまとめ、音を引き出していくプロセスから、人の可能性を引き出す術を会得。それをビジネス界のリーダー向けにセミナーとして提供。演奏前に行う彼の講演はいつも大人気。世界中を飛び回っている人です。アメリカ人て、こういう参加型アプローチがとてもうまいですよね。とても楽しみにしながら参加しました。
開演後、まもなくザンダー氏が壇上に登場。二、三分話すうち、彼のあふれんばかりのエネルギーやあたたかさにみなどんどん引き込まれていってしまいました。よく、コーチングの概念を伝えるのに、ゴルフの素振りのデモや、会話例を見せたりするのですが、彼が最初にやったのは、「歌う」ということ。
まず、「今日、お誕生日の人はいらっしゃいますか?」の問いに一人の男性が手を挙げて答えます。彼が舞台の上に上がると、ステージでザンダー氏はみんなで彼にハッピーバースデーを歌うことを提案。
皆、最初は、ぼそぼそと、仕方なく歌うのですが、彼は、そこでこう言います。
「皆さん、これをただ、まじめくさって、仕方ないなあという調子で歌うこともできます。
あるいは、本当に彼を思って、感情を込めて歌うこともできますよね。そう、手も体も動かして」
こうして、彼はひとつ歌を歌うのも、いろんなやり方があることを教えてくれます。すると、彼のエネルギーに誘われて、会場全体のテンションがだんだん盛り上がり、最後には会場の1300人が、一人の男性の誕生日を心から祝っての大合唱になりました。
「ハッピーバースディ、トゥユー!」
これにはぞーっと鳥肌が立ちました。そしてなぜか目頭が熱くなってしまいました。
音に息吹が吹き込まれる瞬間
続いて、チェロ奏者の男性が登場。最初、何の指示もなく、普通に弾きます。それはそれで上手なのですが、そのあとに、ザンダー氏が少しずつコーチングをしていきます。
「マサ、なにか楽しいことがあるというフリをしてくれるかい?」
「両方のお尻でドンと座ってちゃダメ。ほら、一方のお尻だけで座ってごらん」
「人の予想を反した音が次にくるときは、眉毛をあげて驚いたジェスチャーをね」
と、彼のユーモアあふれるアドバイスに、とてもまじめそうな彼の表情がやわらぎ、体が左右に動き出します。それをみて会場からもあたたかい笑いが。 そして不思議なことに、アドバイスのあと、彼が弾く音は、なんだか命が宿ったように聞こえるんです。
ザンダー氏は、こうして指揮者の仕事の醍醐味、つまり人の可能性を引き出すという作業を、音を通じてわかりやすく見せてくれたのです。うん、これはおもしろい。「クラシックに興味がなく、じっと座っていない小学生も、皆、目をキラキラ輝かせて聴いている」という理由がわかったような気がしました。
僕も、もし小学生のときに彼の話を聞いていたら、指揮者っていう仕事に興味をもったかも…と思ったほど、明快でわかりやすかったです。
最後に、ベートーベンの第九をみんなで合唱。よく年末にやるやつです。会場にいたのは、おそらく、およそクラシックには興味のない人たち。みなワケもわからず、配られたドイツ語の歌詞をカタカナ読みし、最後には「それっぽく」第九を1300人で合唱。それでも十分、大勢で合唱することの素晴らしさ、チームワーク、感動を体験することができました(中学とかの合唱祭じゃこんな感動はなかったな)。
でも、なぜ大勢で合唱すると、じーんとくるんでしょうか。僕は何に感動したんだろう?普段1300人がひとつになることなんてありえない、その有難さに心が揺さぶられるのでしょうか。たしか日本語の「ありがとう」は、「有難し」、つまりありえないことが起こったときに、人ではなく神様に感謝したのが起源だというのをどこかで読みましたが、それを感じたのかも。はじめて年末に第九を歌う人たちの気持ちがわかったような気がしました。
人に最初からAをつける
ザンダー氏は、たくさんエピソードを話してくれたのですが、その中でも僕がおもしろいと思ったのが「人に最初からAをつける」話。
彼は、音楽学校でも教えていますが、自分の授業の生徒を評価することをやめたそうです。その代わり、学期のはじめにある課題を提出するのを条件にAを与える。その課題とは、生徒に、翌年の5月(学期末)の日付入りで、先生宛の手紙を書かせるのですが、その内容がひときわユニークです。
「私がAをとったのは、懸命に練習し、自分がその意義を深く考えたからです」
と、言うように、まだ実際には起きてはいないが、そうなったらいいという自分の姿を勝手に描く、いわば到達するまでのシナリオを創作させるのです。
そして、先生は、いまの生徒ではなく、5月にそうなったときの生徒に対して接する、つまり「Aをとっている生徒」として扱うので、おのづと相手の可能性も開けてくるのだといいます。うーん、枠を飛び出した素晴らしい発想。
これは、僕が講演でよくやる「5年後の自分を演じる」というワークにもつながるものがあったので、とても共感できました。
間違わないことが正しい?
ザンダー氏が台湾からの留学生の話をしたときのことです。
「なぜ、台湾からの留学生は手を上げないか。それは間違うことはいけない、正しいことに価値がある、そう教えられているからだ」
これって日本でもそうですよね?正解を言う人に価値がある。なので私たちも、授業や講演などで質問をされても、「正しいことを言わなくてはいけない」「間違ったらどうしよう」との恐怖感から、皆、手が挙がらない。
これは日本人のDNAに染み付いているようで、僕は大きな問題だと思います。アメリカの授業なんかに出てみると、皆、間違っていようがトンチンカンだろうが、とりあえず手を挙げて何かをしゃべっている。彼らには「正しいことを言わなくては」という観念はないようです。
本当は、人間、失敗しないと何も学ばない。自分がやってみないと何も学ばないのに。日本や台湾のように「正しいことに価値がある」という考えも、私たちがハマッている枠組みなんだな、と再認識しました。
今回の感想
今回は、コーチングというビジネスのテーマだったんですが、コーチングって感性の仕事、まさに芸術の世界にふさわしいものだなとつくづく思いました。
いままでは、売上目標の達成や、問題の解決方法、コミュニケーション手法としてのコーチングしか考えていませんでしたが、今回の講演をみて、「人の可能性を開く」感性の仕事だと実感。やはりコーチングって素晴らしい。気づきを与えてくれたザンダー氏に感謝します。
ザンダー氏の講演、いままで聞いた中で、一、二を争うほどよかったです。ぜひ機会があったら聞いてみてください。
最後に、ザンダー氏は話の中でこういっていました。
人の話(抱えている問題)を聞いたとき、私たちには3つの選択がある。
1.
無視する
2. ただ聞き流す
3.相手の可能性を開く手伝いをする |
あなたはどれを選びますか?(僕は3です!)
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