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川村透
川村透 講師
プロフィール

「あなたは自分の力を
        信じていますか?」

川村 透(かわむら とおる)
川村透事務所 代表
・モチベーティブ・スピーカー
・翻訳家
・企画コンサルタント

 
Vol.58 ノーブレス・オブリージュ

 突然ですが、皆さんは寄付とか募金ってしてますか?
 僕は、そうですねえ、最近では、街頭での赤い羽根募金に100円、足なが育英会募金に1000円、高校の同窓会に3000円、インドネシアの津波被害で3000円、とまあ、この程度。
(なんて俺って小さい人間。ちいさっ!)恥ずかしい限りです。
 しかし、この私、何を思ったか、この前、急に「ん、どれ寄付でもするか」って、いきなり5万円ほどをある犬関係の協会に振込んだのですが、そこで感じることがあったので、それを今回書こうかと。
 寄付って、そもそも「俺いくら寄付したよぉ」っていうもんでもないのですが、今回は皆さんにもひとつ寄付っていう行動を考えていただこうと思い、あえて恥を承知で実例を書いてみましたので、お許しください。


■寄付をしなかった理由

 僕は、元々、ボランティアや慈善活動ってのが好きじゃなかった。その理由は
 「釣った魚をあげるんじゃなく、魚の釣り方を教えるべき」という考えがあったから。
 また、どうも僕には街頭募金ってのが怪しく見えて。だって本当にその人たちが善人なのか、見分けがつかないから。それに、せっかく募金しても、それを必要としている人に直接届く前に、その協会の運営費や独身寮の維持費、職員の給料なんかに使われちゃうんじゃ、なんかおもしろくないし。
 でも、最近ちょっと考えが変わりました(遅いよ)。
 それは、自分でどうにも出来ない人たちもいるんだってことがわかってきた。
 子どもたちとか、自分は悪くないのに、弱い立場に追いやられてしまった人とか。
 そういう人たちに「自分で稼ぐ方法を考えろ」っていうのはちょっと違うかな、と。それって電車の車内でつらそうに立ってるお年寄りに「あんた、もっと足腰鍛えたほうがいいんじゃない」っていってるようなもんですよね。
 またいつも僕は、「誰かほかの豊かな人が手を差し伸べればいい」って思っていました。
「俺なんか自分の生活で精一杯だぜ。世の中にはもっと金持ちがたくさんいるでしょ?」って。
 つまりは社会に対する責任を少しも感じていなかったんですね(反省)。


■きっかけは、節税?


 そんな僕がなぜ、突然、寄付をする気になったかというと、「納める税金を少しでも減らしたい」っていう、これまた利己的な考え(どこまでも身勝手な奴)。
 税金は所得(売上−経費―各種控除)にかかってきますが、確定申告書には「寄付金控除」という欄があり、これを使えば、払う税金が若干少なくなるっていう単純な発想です(冷静に考えると、その分仕事で使うものを買って経費に算入したほうが、自分のために使えるから、そのほうがいいのですが)。
 まあ、そんな軽い考えで、郵便局で振込用紙を書き、5万円を窓口に出しました(さらば我が5万円よ!)。しかしそのときから、何かこれまで感じたことのなかった感情が僕の中にわいてきたのです。なんか、俺って偉い?俺って社会のどこかの役に立ってるかも?


■自分の枠の外にでる

 普通、自分で稼いだお金は、自分、または家族のために使いますよね(当然)。そして払ったお金に対する見返りを期待します。3万円の見返りにおいしいステーキを食べる、おしゃれなスーツを買う。
 でも、3万円寄付しても、何も返ってこないんですよ。
 「じゃそんなバカなこと、なんでするの?」
 でも、この普段の自分じゃしないような行動が、考えの枠を打ち破ってくれるんです。
 何か、不思議な力に押されるような感じ。罪悪感、責任感・・・。そこで、その理由を色々探していたときに、自分にしっくりするいい言葉を見つけたのです。
 
  「ノーブレス・オブリージュ」
 
 
そう、これはフランス語でnoblesse oblige:高貴な人は社会的責任を持つ、という意味。
 ヨーロッパ社会で、貴族など身分の高い者にはそれ相応の責任、義務があるという考え方です。
 「これだ!この感覚なんだなあ」
 
 僕は、正直、ずっと自分のためだけに生きてきたのですが、最近、ようやく「自分のためだけに生きてちゃいけないよな」っていう責任感、つまりこの「ノーブレス・オブリージュ」的感覚が芽生えてきたんです(もっと早く気づけよ)。

 でも、この見返りを求めないお金を使うってことは、ちょっと気持ちがいい。
 もちろん、自己満足かもしれないけど、「自分で素敵」って思えるし。
 「俺って、社会の役に少しは立ってるかな」っていう自覚。
 この感覚って、人を成長させますね。

 ここにおもしろい数字があります。1家計における平均寄付額の日米比較ですが、日本2936円に対し、アメリカは約19万円なのです(2001年調査)。もちろん、税の制度的な違いもあって、一概には比較できないけど、僕の寄付の出費額をみても、あーそんなもんだなあと悲しいかな納得。日本て、あまり寄付という文化が芽生えないのでしょうか。
 ある本によると、日本の武士道精神の本質も、この「ノーブレス・オブリージュ」に通ずるものがあるいいます。ということは、100年も前の新渡戸稲造の時代には、日本人の品格として、きっとこの「ノーブレス・オブリージュ」が浸透していたのでは。
 「ローマ人の物語」の中で、塩野七生さんが書いているのですが、「ローマ帝国1000年を支えた根本こそこの精神。戦争が起これば率先して最前線で戦い、公共の利益のためには私財を快く社会に提供した」といいます。
 ということは、そうした精神を持つ人が多いほど、国は栄えるっていうことですよね。いまの日本、大丈夫かなあ。


■自分にできることを

 寄付金といえば、その大きさで有名なのはビルゲイツ。アメリカの成功者は多く寄付をしている人が多いですね(もちろん、税制的な意味や社会貢献度が評価される土壌もありますが)。
 日本でも、意外なところでは(失礼!)、あのソフトバンクインベストメンツの北尾さんも、50を過ぎてから、私財を数十億円投じて、児童施設に寄付したり、子どもたちのケア施設を回ったりなどの活動をしているそうです(ホリエモンもそういうことをしていたらよかったのに・・・)。
 まあ、私たちにそこまではできませんが、たとえば自分の収入のうち、1%(500万円だったら5万円)でも、0.1%(500万円だったら5千円)でもいい、そのお金を自分以外のところに使ってみてはどうでしょう。
 きっと思考がポーンといままでの枠を飛び出しますよ。

 たしかに、金銭的見返りは何もかえってこない。でも、「こんな自分でも、少しでも社会の役に立っている」という自覚は手に入る。そうすることで、自分の人間力がひとつ上がると思います。
 「人って、お金の使い方だよね」とよく言われますが、こうしたお金の使い方を、自分の支出ポートフォリオの一部にちょっと加えると、なにか必ず自分に発見があると思います(僕は心のバランスがとれたような気がしました)。

最後に。
 まあ、寄付って強制するものでもないし、その人なりの考えもあるでしょうから、今回のコラムは、あくまで私見であることを強調しておきます。

 ということで、今年一年、お付き合いいただきありがとうございました。
 皆さん、よいお年をお迎えください。

 



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Vol.56 「私と仕事と会社」
Vol.55 「教育はエデュテイメントへ!」 特別編
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Vol.52 「任せっきりにしない」
Vol.51 「変わる!リーダーシップ〜魅力的なリーダーとは?」 特別編
 
Vol.50 「人はアウトプットしないと変わらない」
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Vol.48 「頑張ることより大切なもの」
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Vol.13 「人と自分を比べてしまうあなたへ」

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Vol.11 「さあ何か、新しいこと始めよう」
 
Vol.10 「ALS患者から学んだこと」
Vol. 9 「コンプレックスは自分の原動力」
Vol. 8 「自分のものさしを持つ」
Vol. 7 「言葉があなたの人生を決める」
Vol. 6 「未来へ帰る」
Vol. 5 「小さく考える」
Vol. 4 「自分の論理よりその場の論理」
Vol. 3 「2つの悪い知らせ」
Vol. 2 「自信に根拠はいらない」
Vol. 1 「みなさんこんにちは。川村透です。」

 

 

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