| 川村: |
今日は、加賀屋感動ストアマネージメントの加賀屋克美さんをお招きして、コミュニケーションをテーマにお話を伺っていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
さて、加賀屋さんはディズニーランド、ディズニーストアとサービスの最高峰でのご経験をお持ちでいらっしゃいますが、ディズニーでのサービスは他とちょっと違うようですね。
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| 加賀屋: |
はい、ディズニーがサービスを考える上で大切にしていることは、「すべてのお客様がVIP」であるということです。特定のお客様を特別扱いするのではなく、すべてのお客様に同じように最高のサービスを提供しよう、と考えています。
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| 川村: |
実は昨日、私もディズニーランドへ行ってきたのですが、確かにみんなに平等に親切という印象を受けました。最近ではデパートなどもそうした流れになりつつありますよね。
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| 加賀屋: |
そうですね。でもディズニーではそうしたサービスを会社の理念としてきちんと教育しているんですよ。
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| 川村: |
さすがディズニーですね。
加賀屋さんがディズニーランドで働くことになったきっかけは何なのですか?
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| 加賀屋: |
僕がディズニーランドでサービスという仕事をするようになったきっかけは、12歳のときにディズニーランドに行ったことがはじまりです。本当に楽しくて、そして働くスタッフの方が優しくて、大人が働くということは、こういうことなのかと思うと同時に、お客様に喜んでもらう仕事として、サービス業を意識しました。人を元気にする仕事がしたいな、それはディズニーで働くことなんだな、と思ったんですね。
それから大人になって念願のディズニーで仕事をするようになったとき、そこで一番初めに学んだことは、「ゲスト(お客様)にハピネスを」ということでした。これは何のために仕事をするのかという気持ちの部分です。ディズニーにはいろんな職種があるのですが、どんな仕事であろうと、お客様にハピネスをという精神で働こう、ということなんです。
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| 川村: |
なるほど。自分の仕事は、お客様に喜んでもらう仕事だ、という根本の部分をまず教わるわけですね。
昨日のディズニーランドでも立ち寄ったお土産屋さんで、商品の説明をしてくれた女の子が、一生懸命で、ディズニーや自分の売っている商品が本当に好きなんだな、ということがわかってなんだかうれしくなりました。それは、お客様に喜んでもらいたいというディズニーの精神が一生懸命に商品を説明するという行動に繋がっているということだったのですね。
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| 加賀屋: |
好きだ、という気持ちはとても大切なことだと思いますね。そして知識をつけておくことも。勉強することは大変だけれど、それはすべてお客様のためになることなのですから。
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――「いらっしゃいませ」ではなく、「こんにちは!」
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| 川村: |
でも、お客様のためにいろいろ商品について説明をしたりアドバイスするためには、お客様とうまく会話をしなければなりまんせんよね。僕は、あまり積極的に声をかけられたり、ついて回られると、買い物がしにくいのですが・・・
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| 加賀屋: |
いかにお客様によいお買い物をしてもらえるか、それはお客様と上手にコミュニケーションをとることだと思うんです。そしてそのためには、まずお客様との距離を縮めなければいけません。
例えば、ディズニーでは感動サービスの4つの鍵として大事にしていることがあります。それは(1)安全 (2)礼儀正しさ (3)演出 (4)効率 です。
この「礼儀正しさ」の中にも入ってくると思うのですが、ディズニーでは挨拶を非常に大切にしています。
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| 川村: |
挨拶ですか?きちんといらっしゃいませ、とお客様を迎えるということでしょうか?
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| 加賀屋: |
ディズニーの挨拶は、「いらっしゃいませ」ではないのです。「こんにちは」というごく普通の挨拶なんですよ。むしろディズニーでは一度もいらっしゃいませと言いません。
「いらっしゃいませ」は、一方通行のコミュニケーションだからです。「いらっしゃいませ」、といわれて、「いらっしゃいました」というお客様はいないでしょう(笑)。「こんにちは」、という気持ちよい挨拶にはお客様も「こんにちは」という挨拶を返してくださるものなのです。こちらの投げたボールをお客様からも投げ返してもらって、初めてそこでコミュニケーションが成立するのだという考え方をしています。お客様から反応が返ってくることで、私たちはお客様と会話をするきっかけができるわけですね。
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| 川村: |
なるほど。サービスという仕事で「いらっしゃいませ」と言わないことは不思議ですね。でもそれが逆にお客様との距離を縮める良いコミュニケーションになっているのですね。
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――もののみかたを変えれば、コミュニケーションが楽しくなる!
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| 川村: |
今、コミュニケーションの話が出ましたが、コミュニケーションのベースにはふたつあると思うんです。ひとつは、自分の中のものを出す。これは自分の知っていることをアピールするということですよね。先ほどのお土産屋さんの例で言えば、商品の説明をするという場面です。
またもうひとつは、相手の中にあるものを引き出す。これは、お客様がどんなものをお探しなのかを察知するということです。特にこのニーズを引き出すコミュニケーションというのは、なかなか難しいですよね。
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| 加賀屋: |
そうですね。ディズニーでもお客様との良い関係作りは、まずコミュニケーションからということは変わりません。ただ、それが相手のために何かをしてあげたいというところから始まります。相手の気持ちを察するときに、その気持ちがあるかどうかで、ぐっとコミュニケーションの質が上がります。
ディズニーでは、お客様を大切な自分の家族や友人だと思って挨拶をし、そしてその人のために自分は何かできないかな、という気持ちで接していくということを実践しています。また、自分の目の前のお客様に幸せになっていただくためには、同時にお客様が何をして欲しいのかをコミュニケーションを取りながら考えることも重要です。
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| 川村: |
自分がこうしたいではなく、お客様が何をして欲しいかを考えるということですか。「自分は」ではなく「相手は」に切り替えるということですね。
それは僕の考える「もののみかたを変える」ということに、非常に考え方が似ていると思います。人は普段、自分がどうしたいかということに従って行動していると思うんです。でもお客様は何をしてほしいかを考えると言うことは、相手に基点を置くということで、普段の「もののみかたを変える」ということに通じると思います。
僕は、いつもお店で感じるのは、もっと「提案型コミュニケーション」をしてほしいということなんです。こちらの要望が何かの事情で叶えられなかったとき、気持ちを察して別のものや代案を提案してもらえると“お、気が利くな”と思う(笑)加賀屋さんのおっしゃるように、相手の気持ちを察するということは、もののみかたを変えないとできないことではないかと思います。
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| 加賀屋: |
コミュニケーションは、キャッチボールだと思うんです。でもただ普通にボールを返すだけでは足りないんですね。そこに思いをのせて返してあげなければならない。その思いこそが、相手のことを考えて、ということなんですよね。
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| 川村: |
提案型のコミュニケーションができるということは、相手を思うことが出来ているということですし、さらにきちんと会話のキャッチボールができているということなんですね。
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| 加賀屋: |
そうですね。私たちは人であって機械ではないわけですから、その部分はきちんと考えていきたい部分です。物を売ることのゴールは、お客様の喜びです。そのことを自分たちの使命だと思って、ひとりひとりのスタッフが仕事をしているのがディズニーなんです。
もののみかたを変えるといえば、僕らはディズニーで働くスタッフのことをキャストと呼んでいます。パークは舞台で、そこで働く人は役者なわけです。自分たちはキャストなんだから、どこから見られても恥ずかしくないサービスをしなさいという意味です。
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| 川村: |
呼び名を変えることで、そこに新たな役割ややりがいが生まれる。これって、素晴らしいことですね。
物を買いに来る人は、もちろん最終的な目的は買うことですが、コミュニケーションをしに来るんじゃないかと思うんですよ。ディズニーストアに来るお客様だって加賀屋さんとディズニーの話がしたくて、それが楽しみで来ているはずです。コミュニケーションを楽しみに来る。それももののみかたを変えることに繋がると思いますね。物を売ることだけに気持ちがいってしまうとコミュニケーションを楽しむことができなくなりますよね。
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| 加賀屋: |
まさにそうですね!その人から買いたいと思ってもらえることが、大事なことです。人にお客様はついてきます。
ディズニーストアでは、ディズニーランドよりもお客様の数が少ないので、たくさん会話をすることができます。それだけお客様との距離も近くなるわけです。だから、よりきちんとコミュニケーションをとっていかないと、その販売員にはお客様がついてこないんです。まずお客様と仲良くなる。そして思いをのせた言葉で、キャッチボールをする。これが売りたい、このお客様にはこの商品は必要ない、など自分の感情だけでサービスをしてはだめなんです。
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| 川村: |
確かに売ろうという気持ちが強く見えると、ちょっといやになりますね。
買う側としては、商品のよいところだけではなく、悪いところもきちんとアドバイスしてくれると信頼感がアップしますよね。すべてをお客様に任せるのではなく、自分の知識やポリシーに従ったアドバイスができるとその人から買いたくなります。
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| 加賀屋: |
先ほどもお話しましたが、販売の最終目的はお客様の喜びです。どれだけお客様のことを考えていられるか、本当にお客様に必要なものを提供できるかがお客様の喜びになります。そのためにはお客様のことをどれだけ知ることができるかということなんです。
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| 川村: |
ますますコミュニケーションの重要さや考え方の切り替えが大切だ、ということを感じますね。
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| 加賀屋: |
コミュニケーションはお客様とだけではなく、店内でも非常に重要です。
お客様の情報を店内で共有しておくのです。いつものスタッフがいなくてもきちんとそのお客様に対応できる。これはお店として非常に大事なことです。
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| 川村: |
なるほど。確かにいつ行っても同じサービスが受けられることは、うれしいですよ。
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――「伝える」だけでなく、「伝わる」ことが大事!
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| 川村: |
でも、コミュニケーションは重要なだけにそのテクニックも求められますね。
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| 加賀屋: |
もちろんです!お客様を気持ちよくさせる話術を磨くことは、欠かせません。
自分は伝えているつもりでも、伝わっているかどうかまでは意外にみなさん考えていないんですよね。話す側は、伝える、そして伝わるまでできてこそ自分の思いをのせたコミュニケーションができる。そしてそれを受け止める側も聞く、そして訊く(質問する)ことができてこそ、十分に理解することが出来る。
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| 川村: |
どうすれば「伝わる」、というところまでできるようになりますか?
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| 加賀屋: |
訓練ですよね。自分にどのくらいコミュニケーション力があるか知って、訓練することです。僕も講演では、楽しみながら出来るワークで訓練してもらっています。
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| 川村: |
本当にコミュニケーションなしでは、成り立たないことが多いということが良くわかります。なぜ今、こんなにもコミュニケーションが必要になってきているのでしょうか。
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| 加賀屋: |
物を置くだけでは売れない時代になってきたからでしょうね。今は何でもすぐ買えますし、日用品であればどこででも買えますよね。そうした中で、今お客様が求めるものが、物そのものではなくて、そのお店や販売員が提供する感動や喜びということに変わってきたからだと思います。そして、「人から買う」という行為だからということでしょうか。
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| 川村: |
同感ですね。いま世の中にはたいていの物がある。そうした中で、お金で買えないものを求めだしてきていると思いますね。愛されたいとか、気にかけて欲しいとか。最近の人は、携帯電話やメールのせいでコミュニケーション下手になってきているように感じます。だからこれからは、もっと意識してコミュニケーションをとっていく時代になっていると思います。
コミュニケーションはコツもありますよね。僕は、まず相手と自分の共通項を探すようにしています。それから、あまり及び腰にならず、もっとこうしたらいいのにと思うことはどんどん相手に伝えていきます。そうすればお互いを理解するだけでなく、もう一歩進んで何かを生み出せるコミュニケーションが出来ると思うんですよね。
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| 加賀屋: |
僕は、挨拶ですね。挨拶は先手必勝だってディズニーで教わったんですよ。はじめのとっかかりの部分が大切ですから。相手を自分の家族だと思って気持ちよい挨拶をする。こちらから心を開いていくということですね。
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| 川村: |
まずは自分から動いていかないとだめですね。
僕は、コミュニケーションはお互いを知ることでさらに新しい関係を生み出すためのひとつの方法だと思います。加賀屋さんはどうお考えでしょうか。
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| 加賀屋: |
そうですね、ひとことでいえばコミュニケーションは「言葉と感情のキャッチボール」でしょうか。
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| 川村: |
なるほど!とってもわかりやすいですね。
今日は本当にどうもありがとうございました。
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