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先日靴磨きの体験に行ってきましたが、今回は改めて長谷川裕也さんに靴磨きにかける情熱をお伺いしました。
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| 川村: |
先日実際に靴磨きを体験してみて、すごく感じたところなのですが靴磨きって本当にアナログな仕事ですよね。でもなんだかきちんと人が仕事をしているという感じがして、いい仕事だな、と思いましたよ。 |
| 長谷川: |
確かに基本的な仕事ですよね。
でもすごく大事な仕事だと思っているし、今こどものためのパークとして人気のキッザニア東京に靴磨きの職業も入れて欲しいと思っているんですよ(笑)目の前にお客様がいて、そしてお金をもらうしくみもわかりやすいでしょう。
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| 川村: |
キッザニアね!いいかもしれませんね(笑)
今のこども達はそういう仕事を見る機会はないしね。
ところで、長谷川さんはどうして靴磨きを始めたのですか? |
| 長谷川: |
きっかけは本当に偶然なんです。
もともとは高校を卒業して鉄鋼会社の協力会社で肉体労働をしていたんです。その会社で
働く人たちは、基本的に流れ作業でひとつの作業を黙々とこなす仕事だったからでしょうか。
ネガティブな考え方をする人たちが多かったんです。目標を持っているとかそういう感じでは
なく、本当に自分の仕事を黙々とこなしている。そんな人たちが働いていました。僕はそんな
周りの雰囲気にずっと不満を持っていました。
そんな時、ひとりの人との出会いが僕の考えを変えたんです。
その人は、溶岩を鉄鋼場の中を走っている電車に乗せて運んでくる人で、僕の働いている会
社と同じように協力会社の人でした。他の会社の人なのにちょっと横柄な態度で、初めは「感
じ悪いな」と思っていました。
でも、あるとき休憩時間にその人が英語の勉強をしているのを見かけたんです。僕は何だか
その人の印象と違ったので不思議な感じがして、ちょっと声をかけてみました。「どうして休み
時間にみんなと同じように休憩しないで、英語の勉強をしているんですか?」って。
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| 川村: |
その人はなんて答えたの? |
| 長谷川: |
「自分のやりたいことのためだ」って言っていました。 |
| 川村: |
自分のためだって言ったんだね。それはどういうこと?
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長谷川:
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その人、その会社で働くまではワーキングホリデーの制度を利用してオーストラリアにサーフィンの修行に行っていたそうなんです。そのままひとりでいろんな国を旅していたんだそうです。それで、その経験を活かして、数年後には自分で貿易会社を作りたいという夢があったんです。その為の準備として、大学の通信学部に通いながら、さらに休み時間も惜しんで一生懸命に英語の勉強をしていたんです。
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| 川村: |
ずいぶん見かけの印象とは違ったんだね。
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| 長谷川: |
そうなんですよ!
でも、ここにもこんなに前向きな人がいるんだ!と思ったら、居ても立ってもいられなくなって・・・。会社が終わってその足で英会話教室に入会しました(笑)
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| 川村: |
その人の存在が長谷川さんの行動力と向上心に火をつけたということですね。でも英語でなくてもよかったと思うけれど、どうして同じ英語にしたの?
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| 長谷川: |
確かにその人に出会ったことで、自分でもやりたいことのために一生懸命頑張ればできるんじゃないかって思えて。それにその時初めてワーキングホリデーという制度があることも知ったので、ワーキングホリデーでスケートボード修行に行こうと思って。僕も同じように仕事の合間に大好きなスケートボードを練習していたりしたので、その人のことをとても身近に感じたんですよね。
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| 川村: |
でもそういう行動力は大切ですよ。まずやってみることも重要なこと。
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| 長谷川: |
とにかく何かをしたかったという気持ちが強かったんでしょうね。
そうしたら、次に働きながら英語が学べる仕事っていう求人を見つけたんですよ。コレだ!と思って、英会話のレッスンと教材を販売している会社に入社しました。それなら一石二鳥だと思ったんですけど、フルコミッションの仕事だったので、さすがにきつくて。結局身体を壊して辞めてしまいました。
でもそのおかげで靴磨きに出会ったんですよ。
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| 川村: |
その出会いが気になるんですよね。靴磨きに注目した理由が。もっと聞かせて! |
| 長谷川: |
仕事を辞めてしばらくは日給の肉体労働のアルバイトで生計を立てていたんですけど、さすがにお金が続かなくなることがあって・・・。それでとにかくその日の食事代をと思い、靴磨きをはじめたんですよ。何かできることはないかと考えに考えて、簡単そうに思えたんですね。キラってひらめいたんです。何故だか絶対いけるという自信がありました。友人を誘って、お風呂用の椅子と靴クリームを買って。元手のかからない仕事だったのもポイントでした。
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| 川村: |
確かに元手はかからないけれど、なかなか靴磨きをやってみようと思わないよね。だってこういう言い方は何だけれど、靴磨きって底辺の人がするイメージがあるでしょ。少なくても普通の人はやろうと思わないよね。 |
| 長谷川: |
そうですね(笑)とにかくお金が欲しくて。
でも最初は恥ずかしかったんですよ。手を叩いて呼び込みをしたりしましたから。あげくに見よう見まねでやっているものですから、お客さんに「靴磨きへただね。もっと勉強したほうがいいよ」なんて言われて(苦笑)
でも意外とお金になったんですよ。
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| 川村: |
それで、これはいけるぞと(笑) |
| 長谷川: |
そうです(笑)
もともと事業を始めようという考えはあったのですが、丁度アパレル会社の就職も決まったので、会社の休みを利用して靴磨きを続けていた時期もありましたが、やはり靴磨き一本で頑張って行こうと思い、本格的に独立しました。
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| 川村: |
僕はシンプルな仕事であるほど、広がりを感じるんですよね。だからとても可能性があるんじゃないかと思う。今はネットとか込み入ったものが多く、難しいことをしようとしている時代だから逆にシンプルな仕事は人と繋がれると思うんですよ。人と人が向かい会える瞬間が生まれるというか、その人の思いに触れることが出来ると思うから。
だから靴磨きはそういう意味でもとてもチャンスが多い仕事なんじゃない?
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| 長谷川: |
そうですね。特に靴磨きは技術があれば海外でも十分通用すると思うんです。もちろん今みたいにお客さんとたくさんおしゃべりはできないけれど、それでもきれいな靴をみて喜んでくれたりというのは感じることができると思います。
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| 川村: |
その通りですよね。長谷川さんの靴磨きを体験してみて、技術にお客さんをもてなすという要素がついているまさにサービス業だな、と感じたんです。
他にまだ技術に人的な付加価値がついてサービス業になっていないものって、もうないかもしれないと思うほど、日本はサービス業が発達している。きっとあるとすれば世の中で3Kといわれているようなものだったり、古めかしくて武骨なものだったりで。でもそれは意外にビジネスチャンスなのかもしれないですね。
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| 長谷川: |
僕はビジネスといっても、フランチャイズを出すとか、ただ会社を大きくすることは目指してないんです。あくまでも職人でありたいと思うんです。
原宿にね、シルバーアクセサリーのお店があるんですけど。そこはひとりの職人さんがやってるんですが、みんなその人の作ったアクセサリーを買うために5時間も並ぶんですよ。でも他の誰でもない、その人の作ったものを買いにくるんです。僕もそういう職人になりたいんです。
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| 川村: |
長谷川裕也にだから磨いて欲しいと!
そういうのって、自分で自分にブランドをつけていくという考え方ですよね。
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| 長谷川: |
そうです。なんだかブランドと言うと恥ずかしいですが(笑)
僕に磨いて欲しいと思う人だけに靴を磨くような職人でありたいと思うんです。ただ、僕の理想は「日本の足元に革命を」ということなので、まだまだたくさんの人の靴を磨かなくちゃいけない。そこが葛藤なんですけどね。
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| 川村: |
長谷川さんは何でも輝きを見つけ出せる見方ができるんですね。
はじめは元手のかからない仕事だと思って始めたことが、よくよく紐解いてみたら奥の深い仕事だったということでしょ?そういうものを見つける感性があるんだな。
長谷川さんみたいにルーティンワークの仕事でもその中に何か輝きを見つけられる感性が、誰にでもあるといいんだけど。そういうのをどうやって見つけたらいいのかなあ。 |
| 長谷川: |
僕は靴磨きの素晴らしさはお客様から教えてもらったんですよ。 |
| 川村: |
長谷川さんには、普段の生活の中から輝きを見つけ出す能力があるんだし、靴磨きを教えてもらったお客さんのように、今度は長谷川さんが誰かの可能性を見出してあげる側になってみるのはどう?
長谷川さんみたいな人を育てればいいじゃない。裸の自分でも、まだ自信がなくても何かやろうと思えばできるということを今の若い人に教えてあげる使命があるような気がするよ。 |
| 長谷川: |
でも僕が目指す会社は、ひとりひとりが職人であるような会社なんです。ビジネスとして仕事をするのではなく、あくまでも職人として仕事をする集団を。ひとつひとつの仕事にこだわりを持ち続けたいんです。プライドを持って仕事が出来るような会社であればいいな、と思うんですよ。 |
| 川村: |
なるほど。
今まで僕らは「靴磨き=寒い、辛い、汚い」という勝手なイメージを持っていたんだよね。でもそれを長谷川さんが変えたと思うんだよね。それで世の中みんなの見方も変わった。それが素晴らしいと思う。長谷川さんが変えられたのは靴磨きに「足元が変われば世の中が変わる」という切り口を見つけたからなんだよね。何かにそういう切り口とかヴィジョンがついたことで、そのもの自体の素晴らしさが浮き上がるような感じ。輝きを見つけ出すというのは、そのヴィジョンを見つけ出すことができるかどうかなんだよ、きっと。
さっきも話してくれたけど、自分にブランド(価値)をつける発想。それがあることで、みんなが注目する。自分もキャッチフレーズとかヴィジョンをみつけてみようとすることが重要なんだよね。そういう中で長谷川さんは靴磨きが素晴らしいという見方が自然にできた。 |
| 長谷川: |
それはフルコミッションの営業をやった経験があったからだと思うんですよね。
上司にもすごくそういうことを教育されました。例え話をしながら、同じことをしていても見方が違うと意識も違って来るんだぞって。常に前向きであることを教わりました。 |
| 川村: |
それって経験の組み合わせだと思うんだよね。
人にはそれぞれその人ならではの経験があって、その組み合わせはその人だけのものなんですよ。だからとんでもない経験でないとしてもその組み合わせはとても価値のあるものだと思います。営業の仕事があったからこそ、その経験が靴磨きの発想へ生きた。 |
| 長谷川: |
本当に経験て重要だと思いました。僕、アパレルでの経験も高校のときの簿記部の経験も役に立っていると思っています。
来年は、NYで靴磨きをしてみたいんですよね!それも僕にとっては素晴らしい経験になると思うんです。やっぱりNYは靴磨きが一番商売として成り立っている国だと思うし、憧れもあってやってみたいんですよ。 |
| 川村: |
いいね!靴磨きだったら今日すぐにでもできると思うよ!
誰でも今まで歩いてきたことは大切な経験だから、まずそこに価値があるってことをわかって欲しい。それを今やっている何かに生かせる切り口があるはずなんだよね。自分で今の自分に価値があるって思うことが大事だと思います。
それにね、やっぱり路上で何かしてみたいというのは、みんな憧れのような気持ちはあると思うんだよね。だけどそれをすることが怖くて出来ないんだよ。みんなに白い目で見られたらどうしようとか、認めて欲しい気持ちと裏腹に認めてもらえない怖さもある。そこに踏み込んだ勇気はすごいと思う。 |
| 長谷川: |
はじめは恥ずかしかったですよ。手を叩きながら東京駅で呼び込みもしましたし。でもその時はとにかくお金がなくて、背に腹は変えられないし・・・。生活がかかっているわけですからね。 |
| 川村: |
うーん。路上で不特定多数の人に何かをやるってことは出会いのドラマがありますよね。
やってて特に辛いことって何ですか?寒かったりとか?
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| 長谷川: |
寒いのは大丈夫です。そのうち忘れちゃうんで。
でもやりたくても出来ないときは辛いですよね。本来路上では靴磨きは認可がないとできないんです。だから今度お店を出すことにしたんですよ。 |
| 川村: |
すごいね!靴磨き専門のお店なんてそうそうないと思うよ。
路上だと1日に何足くらい磨くの? |
| 長谷川: |
20足くらいでしょうか。 |
| 川村: |
そんなにたくさん磨くとなると大変でしょ。仕事にムラが出来たりはしないの? |
| 長谷川: |
靴を磨くときには心がけていることがあるんですよ。
1. 最大限にお洒落でかっこよく仕上げること
2. お客様を楽しませること。 |
靴のよさを引き出してやるために、そしてその靴がはいている人をかっこよくみせるために磨いてやる。そして靴がきれいでも寄ってもらえるように、お客さんに靴磨きの時間を楽しんでもらえるように。 |
| 川村: |
まさにサービス業です! |
| 長谷川: |
自分でも他の靴磨きの人に磨いてもらいながら技を盗んだりとか、靴とお客さんをセットで覚えて、そのときの会話を覚えてまた来てくれたときにそのときの話をしたり。試行錯誤でした。 |
| 川村: |
たくさんの靴を磨いていると靴から何かわかったりするの? |
| 長谷川: |
結構いろんなことがわかりますよ。
まず仕事が分かります。どんな仕事でどの職種で、さらにどのくらいの地位なのかもわかります。靴にその人の人生が表れるんですよ。 |
| 川村: |
靴は奥が深いね。靴のどんなところが魅力的? |
| 長谷川: |
「靴は10年履いて靴になる」ていう言葉がありますが、いい靴は立体的で、履けば履くほど味わいが増していくんです。僕が磨くことでよりいい靴にしてあげたいな、と思うんですよね。 |
| 川村: |
そうかー。長谷川さんのモットーは「日本の足元に革命を」だったね。 |
| 長谷川: |
日本人全員の靴を光らせたいんですよ。自分で自分の靴に気を遣える国にしたいんです。
靴が光っていると、せっかく磨いた靴を汚さないようにしようと気を遣うじゃないですか。そうすると行動が変わってくるんです。所作が違うというか。それにピカピカの靴を履くと自信が湧いてくるようで、他人にも気を遣えるようになる。そういう人が増えたら、日本は絶対に良くなると思っているんです。
だから今、若者のマナーや生き方が問われているけれど、そういう若者をどう取り込んでいくかということはこれからのテーマです。 |
| 川村: |
未来の日本を動かしていくのは若者だしね。 |
| 長谷川: |
自分が一生懸命に靴磨きをして、その背中を若者に見せていきたいです。
そこから少しでもいいから何かを感じて欲しいと思っています。 |
| 川村: |
力強くていいですね。
これからも路上は続けていくの? |
| 長谷川: |
日本では難しいかもしれないですけど、NYの路上での靴磨きという夢は目指していきたいですね。いろんな人に体験して欲しいということと、初心を忘れない為にも。
路上では自分の姿に何かを感じてくれる人も多いですし。 |
| 川村: |
何かを感じてもらって、またその人から何かをもらう。それが路上の良さなんだろうね。もののみかたをちょっと変えると新しい世界との出会いが広がる。それが人生の楽しさでもあるんですよね。僕も改めてそのことを感じました。
今日は楽しいお話をありがとうございました。 |
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