山崎 雅保のコラム「子育てカウンセリングレポート」
山崎 雅保(やまざき まさやす)
心理カウンセリングルーム「ハートピット」所長
心理セラピストとしてカウンセリングを担当する一方、親子問題、教育問題、更には心の健康に関する執筆活動や教育関連の団体での講演会を精力的に行う。講演は全国の教育関連担当者達の間でも好評。
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Vol. 11 『人は「マトリョーシカな心」だから過去を癒せる』
(2009年02月05日)
ご存じですか、ロシアのマトリョーシカ人形。
大きい人形の中にそれより小さい人形。その中にさらに小さい人形。その中にさらに小さい人形。そんな具合に通例は5体ほどの相似形の人形が中に入っています。
日本式にいえば入り子人形。多いものだと計10体という手の込んだものもあります。
半年ほど前のこと「インナーチャイルドのイメージはマトリョーシカにたとえると理解しやすいな」と、ボクは気づきました。「インナーチャイルド」とは、前回に紹介した心理カウンセリング上の概念です。
同僚のカウンセラー=山口成子さんに「人の心はマトリョーシカ人形だね」と話すと、彼女も「あら、たしかにそうですね」と同意。早速、9体入り計10体の美しいマトリョーシカ人形をみつけてきてくれました。
さて、マトリョーシカ人形を初めて手にしたときのボクは、予想していたよりもはるかに深い感動を味わいました。
洋ナシほどの大きさのマトリョーシカ人形。これはお腹のあたりで上下に分割されます。分割すると中から一回り小さな相似形の人形が出てきます。これも上下分割すると、また一回り小さな相似形の人形が出てきます。これをくり返すと計10体の人形が居並ぶことになります。もっとも内側の、もっとも小さい人形は、小指の先ほどの小ささです。
ボクはこの極小から次第に大きくなる10体の人形をながめながら想定してみました。
もっとも小さい小指の先人形は、胎児であるインナーチャイルド。
胎児が中におさまる次の大きさの人形は、生まれたときの心であるインナーチャイルド。
その次の大きさの人形は、ほぼ1歳ほどのインナーチャイルド。
次は3歳ころ。その次は6歳ころ。さらに、10歳ころ、思春期真っただ中の15歳ころ、青年期真っただ中の20歳ころ。
その次は大人になって以降。残るもっとも大きな人形は、胎児からこれまでのインナーチャイルドすべてを内包する今の自分。
そのように想定した上で、ボクは「思い出す作業」をしてみました。
もっとも小さい「胎児チャイルド」を手に取ります。そして胎児であったボクは、母のお腹の中に育まれながら、どのような気分だったのだろうかと想像しました。
胎児時代の記憶が残っているか否か。残っていると断言できる論拠はないでしょう。かといって何の記憶も残っていないと証明できる論拠もないはずです。
だから想像するのは自由です。母のお腹の中で、ボクはきっと安心して幸せだったのだろうな。いやいや、戦後の混乱期を生きていた母の気苦労を、胎児は胎児なりに感じていたのかもしれないな。そんな想像をめぐらせました。
「胎児チャイルド」を「生まれたてチャイルド」におさめて、それを手にしながらも想像しました。
ボクの誕生を、母はどのようによろこんだのだろうか。父はどんな表情でボクを迎えてくれたのか。兄は、祖父母は。そこから当時の、ボクが生まれたばかりのころの家族の状況などへと思いはめぐり、悲喜こもごもの感慨が去来しました。
「生まれたてチャイルド」を「1歳チャイルド」の中におさめる。「1歳チャイルド」を「3歳チャイルド」の中におさめる。「3歳チャイルド」を「6歳チャイルド」の中におさめる。そのたびに「その時代」を想像したり思い出したりしました。
誰の人生でもそうであるように、その時期その時期には必ず出来事があります。悲しみの記憶も苦しみの記憶も残っています。「チャイルド」ごとに心には傷があり、喜怒哀楽すべて記憶されているのです。
この作業をしていながらボクの感情は大きく波打ちました。胸熱くし、涙する場面も少なくありませんでした。
お気づきの方もあるかと思います。「過去に味わった感情なのに過去になっていない」のが「心」なのです。たとえばイジメにあって悲嘆した感情は、大人になった時点でも「悔しさ、悲しさ、切なさ、怒り」などが混在する感情そのものとしてよみがえります。
「心」においては「過去」が過去にならないで残っている。そこにこそ「人の心」が救われ癒される可能性もみえてきます。「過去の感情」そのものを保ったまま自分の奥底に今も存在しているインナーチャイルドが、心理的に存在しているからこそ、人は過去にさかのぼって心を癒すことができるのです。
インナーチャイルドをケアする手立て、インナーチャイルド・ワークには幾つもの手だてがあります。次回はインナーチャイルド・ワークの中でももっとも取り組みやすい方法を紹介しながら、心理カウンセリングを上手に利用することが、人の心にどれほど劇的な変容をもたらすかについても触れることにします。
劇的な変化。そうです、前回に紹介した春乃さん。わが子を虐待せざるを得なかった彼女の「心の傷」が癒され、虐待などとは無縁の心豊かな母へと変容できたのも、インナーチャイルド・ワークの成果でした。