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山崎 雅保のコラム「子育てカウンセリングレポート」
山崎 雅保
山崎 雅保(やまざき まさやす)
心理カウンセリングルーム「ハートピット」所長

心理セラピストとしてカウンセリングを担当する一方、親子問題、教育問題、更には心の健康に関する執筆活動や教育関連の団体での講演会を精力的に行う。講演は全国の教育関連担当者達の間でも好評。

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Vol. 13 『体罰の弊害を知っていますか?』
(2009年04月03日)
 Mさん。女性、大学4年生です。ある日、彼女がクラスメートらと談笑していたら「親や教師に叩かれた体験」が話題になりました。

 話をしていながら、彼女は驚きました。そこにいた10人ほどの中で、親による体罰を受けたことのなかった人は、彼女を含めてたった2人しかいなかったからです。もう一つ驚いたのは、教師による体罰を受けたことがある人も、ほぼ全員だったことです。彼女もその一人でした。

 教師による体罰は、学校教育法(1947年・昭和22年の法律第26号の第11条)によって明確に禁止されています。親による体罰を明確に禁止する法律は定められていないようですが、いうまでもなく虐待は禁じられています。虐待と体罰の境界が曖昧であることは自明のことだと、私は考えています。

 親や教師による体罰。これに関しての論が分かれているのが日本の現状であることは十二分に承知していますが、私は「体罰は不要であり、弊害が大きすぎる」と主張するべき立場にいるのだと自認しています。

 念のために記しておけば、国連のユネスコの「子どもの権利条約委員会」は、10年余以前に、日本政府へ向けて「貴国においては学校でも家庭でも体罰が少なくないことを懸念する」旨を含む「警告」を発しています。

 さて、冒頭のMさんは、前期の話をしたあとに、以下のエピソードを語ってくれました。

「中学のときです。私は担任に殴られたことがあるんです」。私はたずねました。「何で?」。
「う~と、授業中に隣の人と話をしてたから、かな...」。「そのていどのことで殴られるの?」。「あの先生って、ときどきキレたんだよね。だからクラスのみんな、けっこう殴られていた」。

Mさんは自己主張のしっかりした子です。だから殴られた直後にしっかり抗議しました。
「先生! 気分で殴らないでください!」
教師は応じたそうです。
「気分で? 違うぞ、お前のためを思ったからこその愛のムチだ!」
「愛だったら、私の両親ほど私を愛してくれてる人はいません。私の両親は私を一度だって叩いたことありませんよ! 私は叩かれなくたって言葉で分かる人間ですよ」

それを受けた教師は、ほぼ以下のように応じながらほくそ笑んだそうです。
「へえ、お前の親は叩かないのか。甘い親だな。あとあと後悔することになるな。そんな親だからお前みたいに生意気な女が育っちまうんだ」

 教師による体罰が「事件」として報道されるたびに、テレビのワイドショー類のキャスターやコメンテーターは「愛のある体罰もある。全面禁止はいかがなものか」に類する意見をいいがちです。テレビは原点において大衆に迎合するメディアでもあります。彼らは世論の中庸を手探りしながらコメントします。したがって「愛のある体罰もある。全面禁止はいかがなものか」は日本社会の中庸的意見でもあるのでしょう。

 けれど、仮に体罰の有用性を容認したとしても、それでも「体罰は厳禁に徹する」ほうがよいと私は確信しています。なぜなら暴力はエスカレートするからです。
 多くの人が体感したことがあるはずです。私も体感したことがあります。以前の私は、我が家にいた犬を叩くことがありました。そのたびに後悔したのは、いつも必ずといってよいほど「暴力」の方向に暴走しかけたからです。つまり、体罰は常に虐待への危険を孕んでいるのだと、私は私自身の体感として幾重も実感させられてきたのです。

 読んでいながら「異論あり!」と腹立ちを含みながら思っている方も少数ではないはずです。意地悪くいいいます。それが今の日本という国の現状です。日本は、すでに「暴力社会」に落ちぶれてしまっているのです。
 今年3月、DVに関する内閣府の調査結果が公表されました。DV=ドメスティックバイオレンス。主として夫婦間の暴力をいう略語です。その調査結果は、近年の日本ではいつものことですが、きわめて厳しいものでした。

 「夫から何らかのDVを受けたことがある、または受けている」と答えた女性の比率は3割以上。ほぼ3人に1人でした。「命の危険を感じたことがある」と答えた女性が8人に1人以上でした。
 人は「親にされたことは他者にしてしまう」傾向がきわめて強い生き物です。叩かれて育った人は、多くの場合に配偶者やわが子を叩くという「癖」から逃れがたくなってしまうのです。これはカウンセリング現場に身をおきながら常に実感している「事実」です。
 この話題は、次回にも続けさせていただきます。異論・反論のある方にも、どうか次回も読んでいただきたく心を平らにしてお願いします。

 次回は、親を含む大人による暴力が、子どもに深刻な発達障害を招くという話題にも触れます。仮に「体罰は有用でもある」との立場に立ち続ける親・教師であるのだとしても、そうであればなおさらのこと「体罰が招くかもしれない深刻な障害」への認識をしっかり胸にしておいていただきたいのです。


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