山崎 雅保のコラム「子育てカウンセリングレポート」
山崎 雅保(やまざき まさやす)
心理カウンセリングルーム「ハートピット」所長
心理セラピストとしてカウンセリングを担当する一方、親子問題、教育問題、更には心の健康に関する執筆活動や教育関連の団体での講演会を精力的に行う。講演は全国の教育関連担当者達の間でも好評。
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Vol. 18 『韓国には大量のオンラインゲーム中毒者。対岸の火事ではない日本の現実』
(2009年09月04日)
8月26日(2009年)の朝日新聞朝刊に『韓国ネットゲーム中毒/5年間毎日10時間の若者』と題する記事が載りました。記事は以下のリードで始まります。
【ブロードバンド大国を自任する韓国で、オンラインゲーム(ネットゲーム=ネトゲ)がやめられない「中毒者」の存在が社会問題化している。ゲームセンターに入り浸る小中高生、部屋に閉じこもる若者......。政府も対策に取り組むが、成長産業でもあり、根本的な解決策は見えない。】
ボクがカウンセリングを担当している事例の中にも、比較的重度のオンラインゲーム依存症(中毒者)だった青年が複数います。あるいは、息子をゲーム依存症から離脱させようとして苦慮を重ねている母親もカウンセリングに訪れています。
重度のゲーム依存症は、少年や青年の社会適応力を根源のところから崩壊させかねません。日本ではあまり大きく報道されることなく過ぎていますが、ゲーム依存症傾向となっている青少年の存在比率は、韓国の場合ほど高くはないのだとしても、すでに決して少数ではないのが確実です。「対岸の火事」的に高をくくっていられる状態ではありません。
オンラインゲームは大変に依存者を作りやすい、麻薬にも近い習慣性を有しています。ゲームと麻薬を同列に論じることに違和感を覚える方もあるかもしれません。しかし、コンピュータによるゲーム類は、麻薬類のように違法ではないのが恐ろしいところです。加えてきわめて安価に、または無料で無制限に遊べてしまう点も厄介です。
上記の新聞記事には、韓国情報化振興院(政府機関)が9歳から39歳を対象とした全国調査結果だとして以下のデータも紹介されていました。
【食事時間すら惜しんで一日の大半をインターネットで過ごす「高危険使用者群」と中毒の注意が必要な「潜在的危険使用者群」を合わせた割合は04年には14.6%に上がったが、社会的関心が高まるとともに徐々に下がり、08年は8.6%。8割をオンラインゲーム中毒が占める。】
14.6%は大変な数字です。低下したとはいえ8.6%も大変な数字です。9歳から39歳の人々の中の10人に一人近くがインターネット依存症(主としてオンラインゲーム依存症)であり、現実社会との適切なコミュニケーションがとれていないのです。
そのような事態を招いた背景はインターネットが普及しきっているからだけではないでしょう。韓国の過度な受験競争から脱落した青少年たちが逃げ込む先がオンラインゲームでありがちだったのだとも想像できます。
オンライゲーム依存症およびコンピュータゲーム依存症となってしまっている人を、依存症状態からの離脱に導くカウンセリングはかなり厄介です。彼ら(ほとんどが男性。女性がゲーム類の依存症に陥るのは例外的です)は「ゲーム世界」にだけ人生を見出しているからであり、「ゲーム世界」に生きる正当性に固執しています。とくに20歳以上ですでに長期間にわたって依存症状態で過ごしている人の場合には、離脱不可能である可能性が高くなります。仮に「ゲーム世界」からは生還できるとしても、社会適応は不可能となってしまう危険性もあります。
ボクはずいぶん以前からゲーム依存症が多発している現状を、講演会や雑誌記事などで警告してきました。しかしその警告に真剣に耳を傾けてくれる方は少数派でしかありませんでした。
コンピュータゲームのメーカーが、大金を投じて「ゲームはおもしろいよ。大人だって楽しめるよ」とばかりにテレビCMを流し続けている以上、「ゲームには依存症に陥らせる危険が潜んでいるのだ」とまで気づける人が少数派にとどまるのは無理ありません。
冒頭に引用した記事には、次の一文もありました。
【韓国はインターネット普及率95%で世界第1位(米研究機関調査)という「ブロードバンド大国」。政府はオンラインゲームを文化産業分野の5大重点輸出産業の一つに指定し、国を挙げて振興に努める。韓国情報化振興院の担当者は「これだけ成長すると政府も産業として無視できない。中毒者がいるからゲームを作るなとは言いにくい」。】
お気づきですか? オンラインゲームについては、韓国にとって重要な輸出産業なのです。しかしコンピュータゲーム機やコンピュータゲーム・ソフトは、日本にとってこそ重要な産業であり輸出産業です。
同僚のカウンセラー=Nさんがいってました。
「この記事って、メーカーからの反発が恐くて日本の深刻な実情を書けない代わりに、韓国の実情を引き合いに出したのではないですか?」
ああ、その可能性はあるな、と思いました。テレビでも決してゲーム依存症の危険性を報道しないのは、やはりその手のメーカーがよいお得意さんだからなのでしょう。
つい最近、『ネトゲ廃人』と題した本が目にとまりました。興味のある方、とくにご自身の家族や子どもにゲーム依存傾向がみられる方は読んでみるとよいですよ。オンラインゲームやコンピュータゲームによって「廃人」となってしまう様子や背景が分かるはずです。すでに生易しくはない事態が進行し続けているのだと気づけるはずです。