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山崎 雅保のコラム「子育てカウンセリングレポート」
山崎 雅保
山崎 雅保(やまざき まさやす)
心理カウンセリングルーム「ハートピット」所長

心理セラピストとしてカウンセリングを担当する一方、親子問題、教育問題、更には心の健康に関する執筆活動や教育関連の団体での講演会を精力的に行う。講演は全国の教育関連担当者達の間でも好評。

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Vol. 21 『子どもが詩人に戻るとき~心の蘇生』
(2009年12月04日)

 ♪いらない いらない
   しんぱい いらない
  みんなが いるから♪

 幼稚園児のA子ちゃんの「思いつき歌」です。A子ちゃんは、お母さんと一緒にボクのカウンセリングルーム『ハートピット』にやってくる道すがら、この「思いつき歌」を口ずさんだのだといいます。

 ハートピットのドアを入ってすぐに、お母さんはいいました。
 「この子ったら、みんながいるから心配いらない、って唄いながら来たんですよ。なんだかうれしくて...」
 お母さんがうれしいのは当然でした。ボクも「へえ」と驚きながらよろこびました。「ああ、この子はもう大丈夫だな。あとは時の流れにまかせて待てばよいだけだ」と思いました。

 A子ちゃんは幼稚園年中のときから荒れはじめました。登園渋りが次第に激しくなり、手に負えない駄々こねも常となり、ついには一日に3回ほどはパニック状態を呈するまでになってしまいました。
 「もうどうしようもない。こんな子、投げ出してしまいたい」
 途方に暮れたあげくに初めてカウンセリングに訪れたころのお母さんは、親としての責任を放棄したい衝動に駆られることさえありそうな様子でした。

 A子ちゃんの駄々やパニックの根底にあるのは激しい葛藤でした。甘えたいのに甘えられない。我慢したくないのに我慢せざるを得ない。そのように相反する感情を抑制し続けてきたA子ちゃんの堪忍袋の緒は、ついに限界を越え、ブツンと切れてしまったのです。

 そんな状態の子どもを前にして、親としてやってやれること、やったほうがよいことの基本は「受容」です。お母さんは、自身の内側にうずく辛い葛藤にヤリクリつけながら、とにもかくにもA子ちゃんを受容し続けました。それも並大抵のものではありません。徹底受容を求めてやまぬA子ちゃんであっただけに、お母さんとしてはどれほど辛くても悔しくても、限界を越えてでも応えざるを得ない日々が続きました。

 A子ちゃんが「♪いらない いらない♪」と口ずさみながらハートピットにやってきたのは、そんな母子ともどもの苦闘の日々が10ヶ月間ほど続いたあげくのことでした。
 この「思いつき歌」が象徴していたのは、お母さんと家族への安心と信頼だったに違いありません。その後のA子ちゃんは、とうとう幼稚園には行かないままだけれども、駄々もパニックも滅多にない中で安定を深めながら、小学校入学の時期を迎えることになりました。

 ボクはといえば、そんなA子ちゃんの「思いつき歌」を土台にして作った歌を、楽しく唄い過ごしながら、A子ちゃんのめざましい成長ぶりを見守らせてもらいました。

 ♪いらない いらない しんぱい いらない みんながいるーから~
   いらない いらない しんぱい いらない わたしはだいじょうぶ~
    わたしが うれしいと わたしのこころは おーどーる~
    わたしのこころが おどれば~ みんなのこころも うれしそう♪

 いまA子ちゃんは小学校2年生。とても元気に楽しそうに日々を過ごし、小学生活を満喫しています。

 もう一人、不登校だった男の子・N君を思い出しました。あのころ、N君は小学校2年生だったかな。N君のお母さんも悪戦苦闘の末に、不登校を続けるN君をそのまま受け入れて過ごせるようになりつつありました。そんな中、お母さんは手帳のメモをみながら「Nったら、こんなこといったんですよ」と話してくれました。

 「空気に色を塗れたらいいのに。そうしたら風がみえるのに」

 N君の素晴らしい感受性の片鱗です。それより少し前から、N君はとてもしなやかな感受性をかいま見せていました。不登校せざるを得ないほどに圧迫・抑制されていた感情が、弾力を取り戻してきた時期だったのです。

 ボクは、N君のそのフレーズもいただいて、一つの歌に仕上げました。

 ♪絵具でさ 空気に色を塗れるかな
   塗れるといいな そしたらさ 風が見えるよね
   緑の風はこっちから 青空風はあっちから
   赤や水色 ピンクや黄色 いろんな風が吹いてくる きれいだね
    川の流れをながめていると 川には色が流れてる
    青い空色 白い雲色 低くかすめる鳥の影 岸辺の緑もとかしてる
    いろんな色が流れる川と ボクの心も同じだね♪

 今、N君は小学校4年です。いつの間にか不登校は終わり、誰に強制されたのでもないまま登校し続けるようになりました。

 篠木真さんという方が、子どもたちばかりを撮った写真集の中に書いています。
 「子どもは 子どもなんだから 子どもでいい」
 子どもは、あるがままの子どもとしておおらかに振る舞えるなら、みなしなやかな感受性を発揮します。しなやかな感受性こそが、適応力や自発性の源。A子ちゃんもN君もそうだったのだとふり返ります。心に詩人の感受性が蘇るとともに、二人は生命力・自発性・意欲・適応力を取り戻したのです。

 彼らの感受性を蘇らせたのは、それぞれのお母さんの愛でした。受容し、許し、手間を惜しまずにつき合い触れ合う、誠意を尽くした愛でした。




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