山崎 雅保のコラム「子育てカウンセリングレポート」
山崎 雅保(やまざき まさやす)
心理カウンセリングルーム「ハートピット」所長
心理セラピストとしてカウンセリングを担当する一方、親子問題、教育問題、更には心の健康に関する執筆活動や教育関連の団体での講演会を精力的に行う。講演は全国の教育関連担当者達の間でも好評。
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Vol. 22 『大事な言葉たちとの出会い』
(2010年01月05日)
新しい年が始まりましたね。ついこの間、「いよいよ21世紀だ」と喜んでいたのに、なんとまあ、すでに2010年と相成りました。切りも良くって、なんだか節目の年のような気がします。
新年おめでとうございます。きっとよい年になり、よりよき歳月の始まりともなるような、ボクはそんな予感とともに2010年を迎えることになりました。
さて、ボクは思っています。心理カウンセラーは総じて「得な仕事」だと。
たくさんの人々の心に触れ感じることができるからだし、それはそのまま己の心に触れ感じ洞察することに直結するからです。
何かを読むときにも、誰かの声を聞くときにも、この世のさまざまを観たり感じたりするときにも同様です。あらゆる意味で「心」を想いながら生きる役割に位置しているおかげで、大事な事々を――すべてであり得るはずがありませんが――いくらかは深く心に留めることができているようです。
そのような大事な事々の中でも「ひとまとまりの言葉」として出会ったものを、ボクは「大事な言葉集」としてファイルし、それらの中から一つ二つと、そのときに応じて、その人に応じて、手渡し続けています。
今回はボクがこれまでに出会ってきた「大事な言葉」のいくつかを紹介させてもらうことにしました。これが新たな年を祝いながらの小さなプレゼントになってくれればよいな、とも思っています。
最初は、子どもの心を描く達人だったいわさきちひろさんの言葉です。この言葉には、信州・安曇野のいわさきちひろ美術館で出会いました。ちひろさんが54歳、他界される2年前の1972年に記した言葉です。
「大人というものは どんなに苦労が多くても
自分のほうから 人を愛していける人になることなんだと思います」
ボクはこの言葉を見つめながら「大人」を「親」に置き換え、「人を愛して」の「人」を「わが子」と置き換えました。
カウンセリングの場で多くのお母さんたちと触れ合っていて痛感しています。親であること、とくに母親であることは本当に大変です。どんなに苦労が多くてもわが子を愛する。それは、現実には並大抵の大変さではありません。
本来、たやすく何事もなく育つ子どもなんて一人もいないからです。親に苦労をかけるのが子どもの本来だし、親に苦労をかけぬまま育つ子だとしたら、それは本当なら親が負うはずの苦労を背負ってしまっている子なのです。
次の言葉は、かつてボクが担当させていただいたクライアントさんの言葉です。彼女は息子さんの心に生じた激しい葛藤と対峙し、彼の再生をサポートする親であろうと格闘する中で、この思いにたどりつきました。
「やっちまったとうなだれる君に そんな時もあるよと声をかけ
飛び上がるほど喜ぶ君に よくやったねと声をかけ
出来るかなと首を傾げる君に 出来るよと声をかけ
歯をくいしばる君に そんなに頑張るなと声をかけ
悲しみに肩震わす君に 一緒に涙する」
ボクは痛感させられています。たったこれだけのことができない親・大人だらけの国。それが今の日本だと思い知らされています。多くの親たちが、そうと意識できないまま、逆の言葉、子どもを追い詰める言葉を投げかけがちです。
同じ女性が、つい最近、以下の言葉を記しました。
「こぼれおちた命よ もう一度土に帰り芽を出しなさい
ぬくもりが必要なら この手で温めてあげよう
あなたの命が生まれ変わるまで 何度でも」
次は、信州・白馬村に暮らすボクの友人がつづった言葉です。子どもたちはみな、母親の胸に安心したいし、ゆったり安心できてこそ「自立」へも歩めます。おだやかな愛で包まれる。それが「自立」の大前提。「自立」を強いられた子は、いつしか必ず心理的に挫折します。
「卵の殻をやぶってひよこがでてきました。
まだ羽はぬれていて明るい光におびえています。
おかあさん、おかあさん、どこ? ここはなんなの?
おかあさんはここにいますよ。だいじょうぶよ。
なんだかさむい。 おかあさんの羽の中におはいり。
おかあさん。 なあに? ううん。なんでもない。
ほら、おひさまがポカポカ。あったかいよ。風がそよそよ。きもちいいよ。
遊んでおいで。 でも、いじわるされたらどうするの?
おかあさんがおこってあげる。 雨がふってきたらどうするの?
おかあさんの羽の中であったまればいいよ。 おなかがすいたらどうするの?
おかあさんがエサをさがしてあげる。 でも......
だいじょうぶだよ。みんなおまえが大好きさ。 みんな? そうだよ。
おかあさんは? きまってるじゃないか。
おかあさんはだれよりもなによりもおまえが一番大好きだよ。 ほんと?
ほんとうだとも。遊んでおいで。みんなおまえと遊びたいといってるよ。」
子どものあるがままを撮り続けている写真家・篠木真さんは、写真集『子どもは...』(現代書館)の中に記しています。
「子どもは 子どもなんだから 子どもでいい」
「子ども時代に 心の池が満たされると
生涯涸れることのない 泉になるでしょう」
かつて、おそらくは100年ほど前までの日本は、世界に冠たる豊かな子育て文化を擁していたのだと、ボクは思っています。その豊かな文化を失い続けてきた歴史を、2010年、ちょうど切りもよいことだし、そろそろ終わりにしたいなあ、と、貴方も、どうか共に念じてくださるといいな、と思っています。