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「負けてたまるか!」

濱宮 郷詞(はまみや さとし)

福祉講演

 この度、「講演依頼ドットコム」さんのご好意により、コラムを掲載させて頂くことになりました濱宮郷詞と言います。末永くよろしくお願い申し上げます。と言いつつ、実際コラムと言っても何を書けばよいのか。文才の無い私は戸惑いを感じながら書いている次第でありまして、…恐縮しているというのが現実です。結局、何を書こうかと考えたところ、講演で話しているお話を含め、自分自身が車椅子生活になってしまい色々体験した事をここに書かせてもらおうと思います。それが私を知ってもらうことの一番近道だと思います。そして、読んで頂いている中で、きっと何かを感じてもらえると思います。文才無く読みづらいかも知れませんが皆さんお付き合いください。

第16回 あっ泥棒!あいつ泥棒だぁ。

  そんな良い仲間に支えられ、高校生活を過していました。いつものように朝、後輩達が迎えに来てくれました。姉が車を運転し、皆と通学します。

家を出たところに電信柱がありました。後輩に押され、ふと、電信柱に目がいき、そこにはある男性が立っていました。その時は気にもせず、家の隣の空き地で車へ乗り込みました。そんな時、何か感じたのです。まだ、その時は何だか分かりません。そのまま学校へ向かいます。家の前は一方通行で大きく家の周りを一周し、又、家の横を通ります。一周まわり、家の近くに来た時、先ほどの男性とすれ違いました。その瞬間「ピンっ!」と来たのです。「あっ泥棒!あいつ泥棒だぁ。」私は大きな声で叫びました。「車止めて!どろぼうだぁ。あいつ絶対に泥棒だぁ。家に戻ってぇ!」

家に戻ると母に何か盗まれていないか尋ねました。「ねっねぇ。なっ何か盗まれてない?」辺りを見渡してみると案の定、手提げ金庫が盗まれていました。(やっぱり・・・)私は妙にこういう感が働きます。私はひと言、「きっと、南東にある川で見つかる」そう母に言いました。二週間後、私の指摘どおりの場所で手提げ金庫が見つかりました。不思議なものです。

 時は流れます。春に入学し、夏が過ぎ、二学期も半ばになると周囲は進路の話に入ります。私の周囲は、進学、就職と進路が決まりだしました。しかし、私だけが「蚊帳の外」。先生方も何を指導していいのか分からない様子です。

私は私なりに色々と考えました。「この間々親に迷惑をかけて生きていくのは嫌。だから自分の進むべき路は自殺かな」私の進路は自殺と考えるようになりました。私は、誰にも言わず、死ぬ場所を探しました。とはいえ、中々死ねるものでもありません。そんな時、ある先生が「おまえコンピュータの勉強しないか?」そう言ってくれました。「身障者にコンピュータの技術を習得させ仕事を斡旋してくれる作業所があるぞ」その先生の勧めで、コンピュータの勉強をする為に作業所の試験を受けることになりました。

 全国から30人が集まりました。定員は5名。テストが始まります。初めて一人で見も知らぬ施設へ。トイレも自分では出来ず、大変緊張しました。試験の結果は合格。その作業所へ通えることになりました。しかし、私の前に難問が立ちはだかりました。その施設は全寮制なのです。トイレ、お風呂、着替え、すべてが自立していなければなりません。私は自分の身の回りの事が自力で出来ません。なので、そこへ入所出来ないのです。(せっかく受かったのにぃ・・・)私は悔しさでいっぱいです。結局、学校の先生方と話し合い、身の回りの事が自立するよう、もう一度リハビリ訓練をしよう!そういうことになりました。

 今度は、入院中にお世話になったリハビリの先生方に相談しました。「先生!入院中にしていない訓練。トイレ、お風呂、着替え、車の運転。もう一度リハビリをして自律させたいんだ!」私は懇願しました。しかし、訓練の先生は冷ややかに「あなたの障害レベルで出来る事と出来ない事がある。おそらくボタンの無い洋服であれば着替えられるようにはなる。しかし、他のものは無理だよ。あなたはそんなに軽い障害ではないんだよ。何でも訓練をすれば出来るようになるものじゃないんだ。」そう言いました。

私は思わず口にしました。「やって見なければ分かりませんよ。」そう言ってリハビリをお願いしました。「まぁ出来る限りやってみるか。」先生はそう言い、訓練の再開が決まりました。高校卒業後の私の進路はリハビリ訓練。他の生徒とは、少し違いますが進路が決まったのです。

 一年と言うのは早いもので、あっというまでした。時はすでに三月になり、もう卒業式です。雨の日も雪の日も、家族と姉、陸上部の後輩、先生方。皆の手を借り、車椅子で通うことが出来ました。進路はリハビリ訓練。まだまだ、先の見えない私の人生は続きます。卒業式、私は先頭で入場しました。入場と共に溢れる涙を堪えきれません。複雑な、複雑な心境です。オリンピックを目指し、その先生を慕い入学。高校記録を目前に寝たきりに。そして、車椅子姿で復学。すべてを失い、そして卒業。なんとも言い表わせない心境が涙の量を増幅させます。

 やがて式も終わり、担任、つまり陸上部の先生が近寄ってきました。そして、普段涙を見せることのないその先生も号泣です。私の頭に手を乗せ「頑張ったな。頑張ったな。」そう呟いては私の頭を振ります。今もその言葉が甦ります。期待していた生徒が車椅子になり、今ここに卒業。その先生の心中が手にとるように伝わってきます。それは私の人生の中で「師弟愛」というものを感じさせてくれた一瞬でした。



第16話完


<濱宮 郷詞講師のコラム バックナンバー>

第15回 独りぼっちのお正月、そして復学の日
第14回 えっなんだってぇ!自殺したぁ!
第13回 外泊訓練。えっ!まさか!
第12回 卒業!?僕は嫌です。卒業しません。
第11回 うっ!うわぁぁ〜!
第10回 リハビリ開始
第 9回 人形のような身体
第 8回 見えた!見えたよ!
第 7回 告知
第 6回 絶対安静
第 5回 運命の日 Part2
第 4回 運命の日
第 3回 母子家庭
第 2回 父の死
第 1回 私は死にました

 

 
 

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