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Vol.72 「進まなくても焦らないこと」
社会人になって働いていたころ、たった30人しかいない小さなオフィスの中で、走り回っていました。働くことにワクワクし、少しでも学びたい、何かを得たい。そう思いながら、目を輝かせて1つ1つの新しい仕事を覚えたあのころ。
しかし、どんなに大きな夢をかかげて走っていても、何度も、現実の壁にぶちあたりました。予算の面で折り合いがつかなかったり、上司の許可がおりなかったり、いろいろ。上司とケンカして、怒られて、何度も席についてから涙を浮かべました。自分の思い通りにならないはがゆさと、自分は間違っていないのに理不尽な怒られ方をする悔しさと。
そのときは、前に進んでいる感覚がまったくなかった。ズシーンと重く、身動きが取れないような錯覚に陥っていました。でも、今思えば、あのときは最高に楽しかった。思うようにならない楽しさ、怒られる楽しさ。挑戦する意欲がわくのは、きっとそんなときなんだろうと思います。
ぬるま湯の中からは、出ようとは思わない。少し出ると寒さを感じるから。
でも、少し辛いくらいの環境だと、そこから何とかして這い上がろうと必死にもがく。
進んでいる感覚はないけれど、そのとき、確実に、人間として何かを得ているのだと思います。
風船に空気を入れているような時期なんだと思います。中にどんどんたまっていって、そのつかんでいる手を離すと一気に空に舞い上がるために、いま、空気をためているところ。そう思うと、ぜんぜん進まなくて、何も変化がなくてただ苦しい時期というのも、乗り過ごせる気がしています。
「花が咲かないそんな日は、下へ下へと根が伸びる」
誰かの詩にそんなのがあったように思いますが、まさに、辛い時期というのは、自分の基盤を作る時期なのかもしれないですね。進まなくても、あせらないこと。そう、自分に言い聞かせています。
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