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「反骨の魂」
〜失った栄光から、メジャーリーグへの挑戦〜


今関 勝(いまぜき まさる)
ベースボールコメンテーター

 武相高校をいじめにより1年で中退。翌年県立大楠高校再入学。しかし3年時に、高校野球連盟の規則により、試合に参加できず、クラブチームのウィーンベースボールクラブに所属。
 その後NTT東京を経て、93年にドラフト3位で日本ハムファイターズへ入団。その後ローテーションの一角として活躍、96年にはオールスター戦にも出場、自己最多の11勝をあげた。
 00年に日ハムを解雇され、野球を続けられる環境を探し、アメリカ独立リーグ(メジャーリーグの組織には属さない独自のリーグ)の球団に入団。昨年まで、メジャーリーグのスカウトの目にとまる事を信じ、ひたすら投げ続け、ローテーションの軸になりメジャー昇格も間近と思われたが、家族の事情でアメリカでの活動を断念し、帰国。

現在は、日本のクラブチームで好きな野球を続けながら、「日本のプロ野球」と「メジャーではないアメリカ独自の野球」の両方を経験した事を活かし、講演、文筆活動を中心に、野球の発展に貢献していく。その厳つい風貌とは裏腹な、その心優しさ、そして純粋さに周囲は惹かれる。


Vol. 2 「プロ野球目指して」

 今回は、社会人に進んでからの話です。NTT東京に就職しましたが、所属していたクラブチームも社会人野球連盟に登録しているので、2年間移籍ができません。そのため練習はNTTでするものの、1年間試合には出られませんでした。月曜日から土曜日まで午前中は会社勤めをし、午後から練習。日曜日にはクラブチームの試合で投げるという1年間でした。

 NTTの試合の時には、バックネット裏からビデオ撮影をしました。自分が投げる時のために相手チームの研究をするのです。この打者はどのコースが好きか嫌いか、どのような球種を張ってくるか、積極的に打ってくるか、チームバッティングは出来るか、足が速いかなどの情報を手に入れることが出来ました。その甲斐あって、NTT東京で社会人チームと対戦しだした時には、割とすんなりとゲームに入っていくことが出来ました。

 社会人での練習は大変きついものでした。それまで、しっかりとしたきつい練習をしたことがなかったので、夏の練習には2度倒れました。人間、きつい、倒れる、もうだめだと言ってるうちは、まだまだ余裕があるし、自分で調整がきくので倒れることはないでしょう。本当に倒れる時は、意識がなくなって倒れるもので、何か考えてる時はまだまだ余裕があるのです。

 社会人に入ったときには、プロ入りを意識していました。プロに入るためにはどうしたらよいか。そして思いついたのは、全日本に入ることでした。そこで目標としたのは、NTTでエースになること。社会人の3大大会(スポニチ東京大会、都市対抗野球、日本選手権)で活躍することでした。

 スポニチ大会で良い成績を上げ、全日本の合宿に呼ばれました。全日本に来るような選手は、プロレベルの選手が多く、その合宿には、西武新谷さん、オリックス大島さん、ジャイアンツ西山、ロッテ吉田、中日佐藤など、後にプロで活躍する選手が大勢いました。自分の実力が周りの選手レベルに届いていなかったものの、プロ入りできるレベルがどのぐらいのものか分かりました。

 2度目の全日本合宿の時、紅白戦で投げるチャンスをもらいました。次のキューバとの交流試合に残るための絶好のアピールの場でした。2アウトは順調に取ったのですが、3人目の打者にピッチャー返しを受けました。この時、打球が胸に直接当たりました。直後はすぐにボールを拾ってファーストでアウトを取りました。試合の緊張感と、“このチャンスをものにしたい”という強い気持ちのため、平然として特に何も感じませんでした。その時、トレーナーに動くなと怒鳴られ、その場に座りました。その時は本当になんともないと思っていました。自分は続投を望んでいましたが、当然のことながら却下。そして肩、肘、打球が当たった胸にアイシングしながらトイレへ行きました。急に気持ちが悪くなり、タンを吐いたのですが、それは真っ赤に染まっていました。鮮血を吐いたことをトレーナーに伝えたところ、すぐに救急車が呼ばれました。そのまま入院です。結果、肋骨骨折と肺座礁で全治3ヶ月。3週間入院しました。

 この怪我をした時、都市対抗予選の1ヵ月半前でした。都市対抗に出場することは、社会人野球をしている選手の義務のようなものです。都市対抗はメディアの取りあげ方も大きく、東京ドームに出場することで、社員の愛社精神、士気の向上など、社員の結束が生まれます。出場できなかった時には、他の社員からすごく冷たい視線を浴びせられます。社会人野球の選手が都市対抗に賭けるのも、こういうところがあるからなのです。

 全治3ヶ月と診断されましたが、退院直後から練習を開始しました。医者からは、血痰を吐いたら再入院と言われていましたが、血痰を吐きながら練習を続け、そのまま都市対抗予選に出場しました。

 しかし、当然といえば当然ですが、そんな状態で出場した所で結果が出せるはずもなく、予選で敗退しました。自分は運良く熊谷組の補強として、都市対抗に出場することが出来ました。そしてまた、ここでもいい出会いがありました。

 当時、NTTでのきつい練習も貴重な経験でしたが、熊谷組の「自分で考えて練習する」というのも新鮮で貴重な経験でした。熊谷組には、阪神弓長さん、ロッテ中山さん、横浜波留、中日遠藤と、プロを目標とした選手が多くいることも、すごく励みになりました。残念ながら都市対抗では1回戦で負けたものの、忘れることのできない経験でした。

 その年にはスカウトも少しは着ていたようですが、下位指名ということと、会社に恩返しをしたいということで(都市対抗にNTTで出場していないため)、プロの各球団にはお断りをしました。

 翌年には、NTTのエースになり、都市対抗、日本選手権にも出場し、ドラフト3位で日本ハムに入ることが出来ました。ドラフトの当日は野球部の旅行と重なっていました。野球部の副部長の計らいで、旅行に参加していました。これはよくある話なのですが、ドラフトにかかるといわれながらかからないことが良くあるのです。

 しかし、自分としては旅行どころではありません。本当にプロにいけるのか、夢のままで終わるのか。バス旅行だったのですが、トイレ休憩のたびに電話へ走りました(当時は携帯電話もなかったので)。 何度目かの電話で、彼女(今の家内)から日本ハムに3位指名されたことを聞き、ほっとしたことを今でも昨日のことのように覚えています。

 


<今関 勝講師のコラム バックナンバー>
Vol. 1 「高校中退」

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