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〜できる人が備える〜
「勝利のための発想法」


生井 利幸(なまい としゆき)

生井利幸事務所代表

明治大学大学院 法学研究科 公法学専攻 博士前期課程修了。
米ペンシルベニア州ラフィエット大学講師、
オランダ王国国立フローニンヘン大学法学部客員研究員等を歴任。
11年の海外生活において主にアメリカの大学で教鞭を執る一方、在ニューヨークの企業を中心に法務・経営・ビジネス戦略に関するコンサルティングを行う。
2003年、日本に帰国。現在、作家として多方面において執筆・講演等を行う。

Vol.6 日本人は常に"組織の名前"にしがみつく

 巷で高校生からよく耳にする会話といえば、「いい大学に行きたいから受験を頑張ろう!」という会話である。では、"いい大学"とは一体どんな大学なのであろうか。恐らく、彼らの意味する"いい大学"とは、難易度の高い大学、知名度の高い大学を指すのだろう。

高校生の多くは、端的に、「いい大学に行けばいい会社に就職できる」と考える。彼らの言う"いい会社"とは、いわゆる大企業であり、知名度の高い企業ということだ。

 日本のほとんどの若者は、この「いい・・」という表現について、そのすべてを組織体の知名度や規模を基準として考えてしまう傾向にある。残念なことに、それぞれの大学や企業の中身をじっくりと見極め、自分なりの尺度で組織を見ようとする人はかなり少ないといえる。彼らの心の中には、「世間が"いい"と言うから、そして、他人が"いい"と言うから自分も"いい"と思う」という"追従型ステレオタイプ思考"をする心理作用がそこにあるわけだ。

日本の多くの若者は、「自分は一個人として一体何をしたいのか」ということを考える前に、できるだけ大きな企業体、できるだけ知名度の高い企業体に就職し、"一生安泰"というギャランティーを手にしたいと考える。

概して、大学生も社会人も、自分が所属している組織(大学・企業)の知名度が高ければ高いほど、初対面の人には「自分は・・大学(株式会社)の学生(社員)である」という事実を相手に伝えたいという欲求を持っているものだ。そして、そうした人々は、自身の心の中で、「誰もが知っている有名大学に通っている、あるいは大企業で働いているというその事実こそが、自分の"個人としての格"を決めるものだ」という大きな勘違いをする。

 言うまでもなく、実際は、そんなもので"個人の格"など決められるものではない。大学でいえば、たとえ有名大学でなくても、充実した教授陣、教育・研究施設を誇る大学はいくらでもある。企業の場合も、たとえ大企業でなくても、正しい経営を行い、単なる利益追求だけでなく、コツコツと社会貢献をしている企業も数多く存在する。

  このような観点から言えることは、大学に入学しようとする者、企業に入ろうとする者は、もう少し個々の組織の「中身」を調査・吟味し、自分の個性・持ち味に合った選択をするべきであるということだ。

  そもそも「組織」という代物は、より広い考え方をするならば、個々の人間が"一個の個人"として成長する場であり、自らの力量を発揮する場であると解してもよいのではないだろうか。そして、限りない可能性に満ちた若者たちが自らの進路を選択する際には、「自分の個性や実力を発揮するためには一体どの組織が妥当なのか」という問題意識を持って決めることこそが、妥当な決め方であると私は考える。

さらに述べるならば、「一流」というその概念は、単に"組織が大きい"とか"有名である"ということではない。

真の意味での一流大学(企業)とは、「いかにして組織を通して"一人ひとりの個人"に活躍の場を提供することができか」という考え方ができる組織をそう呼ぶのだと思う。

これをわかりやすく言えば、他人がどう考えようと、自分にとっての組織が、自分にとって一流であればそれでよいわけだ。古今東西における様々な成功者の生き方を考える時、「一流の人生」を謳歌した人物は皆、このあたりの発想法が普通の人とは根本的に違うといえる。

西欧諸国が見る個性

西洋諸国においては、概して、どんな組織に属しているかということよりも、「本人が"一個人"としていかなる能力・個性を持っているか」という問題のほうがより重要視される。

例えば、ハーバード大出身のアメリカ人が、頻繁に「私がハーバードの学生だった時には・・だったんです」と自慢そうに話をしていると、周囲の人々から、「彼は一事が万事においてハーバードの名を出せば通用すると思っている。彼は、暗記力には優れているかもしれないが、本当は単なる"世間知らずのお馬鹿さん"ではないか」というネガティブな印象を持たれることになる。

その理由は、一般的なアメリカ人にとっては、目の前の人間がどこの大学を出たかということよりも「その本人が"一個人"としてどんな人間なのか。一体どんな個性・能力を持っているのか」という問題のほうが、より重要な問題であると考えるからだ。

私は、この"島国日本"においても、どんな組織に属しているかというその事実よりも、「人間一人ひとりが、自分は"個人"として一体どんな人間なのか」という事実を大切にする社会風潮が構築されるべきだと考える。

 そうでなければ、この国の人々は、いつの世になっても常に組織の名前に"タダ乗り"することばかりを考え、「個人としてどうあるべきか」という問題について深く考えようとはしないであろう。

日本は、自他共に認める世界第二位の経済大国である。だが、世界の国々と比較すると、日本の哲学・思想はその経済力に見合うほどの注目度はない。日本の経済は確かに強いが、哲学・思想については、その経済力に肩を並べるだけの影響力は持っていない。

率直に言えば、「一人ひとりの日本人は、"一個人として"もっと深く思索し、哲学するべきだ」と私は考える。日本でも、皆が、個人として自分自身の在り方を重要視する考え方を持つようになれば、意味もなく組織の名前に自分の身を寄せ、「"知名度のおこぼれ"を頼りに生きていく」という本末転倒な生き方をしなくて済むに違いない。


<生井 利幸講師のコラム バックナンバー>

VOL.5 「スーツの買い方でわかる意思決定のスマートさ」
VOL.4 「勝ち組人生」とは?
VOL.3 「上司の力量次第で部下の仕事ぶりが決まる」
VOL.2 日本人がアメリカ人から学ぶべき「ビジネスにおける“心の余裕”」
VOL.1 「現実」を踏まえた上で一歩一歩確実に歩む人が、仕事人生を成功させる
 
 

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