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〜できる人が備える〜
「勝利のための発想法」


生井 利幸(なまい としゆき)

生井利幸事務所代表

明治大学大学院 法学研究科 公法学専攻 博士前期課程修了。
米ペンシルベニア州ラフィエット大学講師、
オランダ王国国立フローニンヘン大学法学部客員研究員等を歴任。
11年の海外生活において主にアメリカの大学で教鞭を執る一方、在ニューヨークの企業を中心に法務・経営・ビジネス戦略に関するコンサルティングを行う。
2003年、日本に帰国。現在、作家として多方面において執筆・講演等を行う。


Vol.12 
一連のIT革命が齎した<負の遺産>

 21世紀のビジネス社会においては、一連のIT革命の恩恵を受けて、人間同士のコミュニケーションを図る上において実に多様なツールが用いられている。

 承知のように、1990年代後半は、携帯電話が爆発的に売れた時代だ。同時に、パソコンやファックス機も"黄金時代"を迎え、インターネットやイーメール(以降、メールと呼ぶ)の普及率も急速に進んだ。2005年の現在においては、携帯電話とパソコンは、仕事においても日常生活においても必要不可欠なツールとして君臨している。

 考えてみると、これほどまでに高度な通信手段が発達したという事実は、「技術立国」日本として誇るべきことだ。しかし、一方では、このことが、「人間相互のコミュニケーションにおける様々な弊害を齎す原因を作ってしまった」という見方も可能だ。

 確かに、遠く離れていても、不特定多数の相手とコミュニケートする手段が豊富にあるということは便利ではある。だが、その反面、我々は、「利便性」のみを追及するあまり、大切な用事がある場合であっても、それぞれの相手と実際に会って話すというよりは、「ツール(パソコン・携帯電話でのメール)を使ってコミュニケートする」という傾向が強くなってしまった。

 このような風潮は、人々が歴史的・伝統的に継承してきたコミュニケーションにおける「礼儀」「作法」のクオリティーを著しく低下させ、それと同時に、「昔ながらの心温まる交流を減少させる」というネガティブな要因を作ってしまっている、と私は切実に感じる。

 このことは、メールにおける「利便性」と「弊害」を考えるとわかりやすい。

メールにおける「利便性」と「弊害」

言うまでもなく、メールの利便性は、相手がどこにいようともリアルタイムで伝えたい用件を相手に伝えられる、というところにある。例えば、かりにあなたが今、東京にいるとした場合、連絡を取りたい相手が遠く離れた京都にいようと、あるいは札幌にいようと、瞬時にしてメールを送ることができる。さらには、日本国内だけではなく、相手がニューヨークにいようとアムステルダムにいようとも、一瞬にして、どこにでもメールを送ることができるのだ。一連のIT革命の恩恵を受け、我々は、まさに世界中の人々とリアルタイムでやり取りできる時代を迎えたのだ。

 だが、その反面、メールのやり取りから"ある種の弊害"が生じている。それは一体何かというと、人間社会における多くのコミュニケーションがメールという"ツール"に依存し過ぎているあまり、「人々において、実際に会って話すコミュニケーション能力・スキルがことごとく低下している」というネガティブな現象を生んでいるということだ。

 加えて、現代においては、用のある相手と実際に会った場合においても、その相手と別れる際に、「後の話は今晩メールしますから!」というセリフを言うことが多い。思うに、この場合、お互い実際に会ったわけだから、その場で必要な分だけトコトン話し合えばよいのではないだろうか。

ところが、メール三昧の毎日を送っている我々現代人は、相手と会っている間にすべての用件を伝えるのではなく、「家に帰った後に、話の不足分をメールで伝える」という"不自然で不効率なコミュニケーション"を日常茶飯事としているのだ。このような現象においては、人々のメンタリティーの中に、「お互い、面と向かっては言えない。でも、メールだったら堂々と言える」という独特の心理作用が働いているわけだ。

 人間社会におけるコミュニケーションのこのような変化の有様は、「人々におけるコミュニケーションをどんどんと無味乾燥なものとし、"生のコミュニケーション"を楽しむ機会を減少させてしまっている」という不幸を招いているのだ。そして、より不幸なことは、今の世の中において、このことに気づいている人は極めて少ないということである。

 一連のIT革命は、人々におけるコミュニケーションの態様を多様化する役割を果たした。しかし、一方では、人間社会に従来から存在する古き良き「マナー」「エチケット」を大きく崩壊させた。これは、まさにIT革命が齎した「負の遺産」というべきものである。このような負の遺産は、現代人の「生のコミュニケーション力」をどんどんと低下させ、「年々、コミュニケーションが下手な人間を増やしている」という不幸な結果を生み出している。

思うに、「文明の利器」というものは、それを"便利な道具"として使う分にはいいが、決してそれに溺れ過ぎないように注意を払う必要があるといえる。溺れ過ぎれば、人間は、自分たちの本来の姿を忘れ去り、「人間にとって最も大切な"心"を軽視し、利便性のみを追及する」というネガティブな方向性に向かってしまう危険性があるのだ。


<生井 利幸講師のコラム バックナンバー>

VOL.11 「プロのエンターテイナーから学ぶ 自己表現を高める方法」

VOL.10 「セールスの達人は<1秒のリズム>で勝負する」
VOL.9 「経営者はCSRの執行者でなければならない」

VOL.8 「<お茶目な人>がビジネスを成功させる」

VOL.7 「給料は、貰うものか、それとも稼ぐものか?」
VOL.6 「日本人は常に<組織の名前>にしがみつく」
VOL.5 「スーツの買い方でわかる意思決定のスマートさ」
VOL.4 「勝ち組人生」とは?
VOL.3 「上司の力量次第で部下の仕事ぶりが決まる」
VOL.2 日本人がアメリカ人から学ぶべき「ビジネスにおける“心の余裕”」
VOL.1 「現実」を踏まえた上で一歩一歩確実に歩む人が、仕事人生を成功させる
 
 

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