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〜できる人が備える〜
「勝利のための発想法」


生井 利幸(なまい としゆき)

生井利幸事務所代表

明治大学大学院 法学研究科 公法学専攻 博士前期課程修了。
米ペンシルベニア州ラフィエット大学講師、
オランダ王国国立フローニンヘン大学法学部客員研究員等を歴任。
11年の海外生活において主にアメリカの大学で教鞭を執る一方、在ニューヨークの企業を中心に法務・経営・ビジネス戦略に関するコンサルティングを行う。
2003年、日本に帰国。現在、作家として多方面において執筆・講演等を行う。


Vol.39 労働の価値の重さ

巷では、「人を見かけで判断してはならない」とよく言われます。これは、人の価値を外見のみで決めてはいけないということですね。この理屈は、言うなれば、子供でもわかる理屈ですが、実際、私たちは、人を“目に映ったままの人物像”として捉えてしまうことが多いものです。

唐突ですが、駅やデパートには、必ずトイレがありますね。私もよく利用しますが、そこでいつも感じることがあります。それは、そこで見かける清掃員の「働きぶり」です。たいていの清掃員は高齢者ですが、その働きぶりは実にテキパキとしていて、私自身、その働きぶりを見ると、そこで様々な「人生における大切な気づき」をいただきます。

一般の人々にとって、トイレは必要不可欠な施設です。トイレは、誰にとってもそれがなければ困る施設ですが、実際、その施設を管理・清掃する人々に対して「感謝の念」を抱く人は非常に少ないでしょう。

概して、人は、個人の価値を、社会的地位や職業で決めてしまうものです。ほとんどの人は相手が「どんな仕事をしているのか」、そして「いくら稼いでいるのか」ということで、その相手の「個人の価値」を決めてしまう傾向にありますね。

ここで考えてみましょう。1)「月給50万円の会社員」と2)「月給20万円のトイレ清掃員」には、「個人の価値」において一体どのような差異があるのでしょうか。

私たちが常日頃、トイレで見かける清掃員は、たいていは、“真剣な目の表情”で、熱心に仕事に取り組んでいます。一日に清掃しなければならないトイレの数は決められているでしょうから、限られた時間内にどれだけ要領よくテキパキと清掃をするかが重要なのだと思います。

清掃員の中には、色々な人がいます。その中には、実際は、他の分野で相当の経験・能力を備えている人もいます。しかし、日本の閉鎖的雇用システムの下、仕事を探す時点において、年齢制限などの理由で自分が望む仕事枠に応募できないということがあります。つまり、ある特定分野において相当な能力・力量があっても、転職・再就職を希望する際において、最初からそうしたポジションにアプライできないということが結構あるということです。このことは、20代や30代の人にはわかりにくい有様ですが、40代、50代以降の人にはよくわかる実情でしょう。

そうした人は、大切な家族を守るため、そしてもちろん、自分自身が食べていくために、一般の人々が嫌がるような仕事に就かなければならない場合もあります。その一つがトイレ清掃の仕事であるといえます。

話を元に戻しますが、私は、公衆トイレで、清掃員が汗を流して一生懸命に働いている姿を見ると、「人は、どんな仕事をしているかにかかわらず、皆、全力で時を刻んでいる」と感じてなりません。

私自身、これまでの人生において、「仕事に優劣はない」という考え方で、日本でも海外でも様々なプロフェッショナルとコミュニケーションを図ってきました。そして、今、この日本で、しかも、トイレに入ると、このことをしみじみと感じてなりません。

この世の中には、逆に、「仕事に対する何の情熱もなく、ただ毎月の給料を貰うために会社に行っている」という人もいます。そういう人は、「仕方がないから仕事をしている」という“やる気のない姿勢”が、本人は気づかないまま、本人の働きぶりにも顔の表情にも出てしまいます(そういう人がいる職場においては、周囲の同僚は、それに気づいていても、人間関係を壊さないように“気づかないふり”をしますね)。

今ここで、トイレの清掃員とこのような会社員を比較した場合、貰える給料の額にかかわらず、双方における「労働の価値の重さ」には天と地ほどの差異があるということを強く感じます。

私自身、毎日の生活において、このような見方を忘れない人間として、“一刻一刻”、時を刻んでいきたいものです。




<生井 利幸講師のコラム バックナンバー>

VOL.38「アメリカ人の方便、日本人の方便」

VOL.37 「‘忙しい’を言う? 言わない?」
VOL.36 「愛情あるコミュニケーションが、仕事のクオリティーを大きく変える」
VOL.35 「コミュニケーションと川の水の流れ」
VOL.34 「講演先での素晴らしい出会い」
VOL.33 「スピーチの達人は皆、"役者顔負けのパフォーマンス"で話を進める」
VOL.32 「緊張しない話し方の極意
VOL.31 「ニューヨークのビジネス社会は"人類愛"に満ちている
VOL.30 「東京都葛飾区の公開講座で感じる社会人受講生のパワー
VOL.29 「コミュニケーション力”・“哲学”・“心”の融合が、会社を大きく成長させる」
VOL.28 「"キャッチボール型の会話"をしていますか?」

VOL.27 「「個」を重要視する経営者の精神、個々の社員の精神」

VOL.26 「「哲学」「理念」を養う社員教育の必要性」

VOL.25 「地域社会発展の実現は「真心」にあり」

VOL.24 「コミュニケーションは一体何のためにあるのか?」

VOL.23 「人の顔の表情は、自分の顔の表情の顔である」

VOL.22 「ニューヨークでは、肌の色よりも<チャレンジ精神>が台頭する」
VOL.21 「話上手 グレート・コミュニケーターの本音」
VOL.20 「<裸の王様>になってはいけない」
VOL.19 「<哲学><コミュニケーション><ビジネス>における相関関係」
VOL.18 「<言葉の管理>に優れている人が信用を築く」

VOL.17 「堂々と客に啖呵を切る魚屋の<交渉術>」

VOL.16 「契約社会アメリカの実態は“交渉社会”である」
VOL.15 「経営者の心得・・・ビジネスの達人は“他人を泳がせる器量”を備えている」
VOL.14 「できる管理職は業務命令を下すのがうまい」

VOL.13 「トップライナーが駆使するビジネス・コミュニケーション術」

VOL.12 「一連のIT革命が癒した<負の遺産>」

VOL.11 「プロのエンターテイナーから学ぶ 自己表現を高める方法」

VOL.10 「セールスの達人は<1秒のリズム>で勝負する」
VOL.9 「経営者はCSRの執行者でなければならない」

VOL.8 「<お茶目な人>がビジネスを成功させる」

VOL.7 「給料は、貰うものか、それとも稼ぐものか?」
VOL.6 「日本人は常に<組織の名前>にしがみつく」
VOL.5 「スーツの買い方でわかる意思決定のスマートさ」
VOL.4 「勝ち組人生」とは?
VOL.3 「上司の力量次第で部下の仕事ぶりが決まる」
VOL.2 日本人がアメリカ人から学ぶべき「ビジネスにおける“心の余裕”」
VOL.1 「現実」を踏まえた上で一歩一歩確実に歩む人が、仕事人生を成功させる
 
 

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