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〜できる人が備える〜
「勝利のための発想法」


生井 利幸(なまい としゆき)

生井利幸事務所代表

明治大学大学院 法学研究科 公法学専攻 博士前期課程修了。
米ペンシルベニア州ラフィエット大学講師、
オランダ王国国立フローニンヘン大学法学部客員研究員等を歴任。
11年の海外生活において主にアメリカの大学で教鞭を執る一方、在ニューヨークの企業を中心に法務・経営・ビジネス戦略に関するコンサルティングを行う。
2003年、日本に帰国。現在、作家として多方面において執筆・講演等を行う。


Vol.47 社員の「察する力」「考える力」を養う企業が勝利する

国際ビジネスにおいてイニシアティブを執るために最も重要視される条件は、「いかなるビジネスシーンにおいても、その場その場の状況を鑑み、常に適切な対応・処置を選択する“判断力”を備えている」ということであると思います。外国企業を相手に、即ち、本来において、文化・習慣の異なるビジネス・パートナーを相手にスムーズにビジネスを進めていくためには、そのような柔軟な判断力を備えているということは、何よりも先行して必要とされる条件であるといえます。

英米のビジネス社会においては、しばしば、このような“柔軟な判断力”をdiscretion(ディスクレション)と呼びます。本来、この言葉は、行動の自由、自由裁量、思慮分別、慎重さ、などの意味を含みますが、ビジネス社会においてこの言葉を使うときは、冒頭で述べた「状況を鑑み、常に適切な対応・処置を選択するための“判断力”」を指すこともあります。

国内外を問わず、ビジネス社会では、常に複雑な人間関係が交錯しています。複雑なのは、決して人間関係だけではありません。ビジネスそのものの状況も常に変化し、市場の動向も、日々、目まぐるしく変わっています。まさに、人、モノ、カネ、その他、ビジネスに関わるすべての構成要素は、まるで“生き物”のように日々変わっているわけです。

来る日も来る日もそうした変化に直接触れ、常に妥当な対応策を見い出すことを“仕事における技”としなければならないビジネスパーソンは、「察し」の重要性を認識することが必要だと思います。

この「察し」という概念は、言葉としては実にシンプルです。しかし、実際、現実のビジネス社会でこの能力(察する力)を上手に活用することは決して簡単ではありませんね。実際、身のまわりの人々を見てみると、「状況を察することができなくて失敗した」という話は山ほどあります。思うに、1)「察せない」というこの現実は、実は、2)「考えない」という現代人が抱えている“負の風潮”でもあるといえるでしょう。

ものの価値を「利便性」ばかりに求めるこの社会風潮は、言うなれば、一連のIT革命が齎した“負の遺産”といえるものです。一昔前までは、「わからないことがあれば、それなりに手間隙をかけて答を導き出す」という行為は、実に当たり前の行為でした。自分なりに答を求めるそのプロセスにおいては、単に情報・データを入手するだけでなく、それなりに深い思索もしたはずです。

ところが、2008年の現代においては、「わからないことがあれば即、インターネットの検索ページにキーワードを入れて答を探す」という人が多い世の中となりました。幸か不幸か、人々は書物や“耳学問”から離れ、情報の多くをインターネット上の情報に依存するようになったのです。それに伴い、人々におけるコミュニケーション能力も著しく低下しました。言うなれば、「他人に気を使ってまで教えてもらうよりは、パソコンのキーを叩いて答を探したほうが気が楽だ!」と考える人が増えたということですね。

皆さんもお気づきのように、過度にインターネットに依存し過ぎると、自分なりに深く思索し、しっかりとした「教養」(culture)を養うことが困難となります。安易な情報・上辺だけの情報に依存し、自分でしっかりと思索しないというこの風潮は、日本社会を「思索しない社会」へと変貌させる大きな要因ともなりました。

皮肉的な見方ではありますが、会社組織においてたくさんの部下を使う立場にある人にとっては、この風潮はまさに“好材料”であるに違いありません。部下が、安易な情報に流され、しかも自分の力で思索しないとなると、部下を使う立場にある人は、「部下をその気にさせ、部下を自分の意のままに動かす」ということが容易になります。でも、読者の皆さん、本当にそれでいいのでしょうか…? もちろん、いいわけがありません。

社員における「察する力」「考える力」を養うことは、即、社員の「ビジネス力」を養うことに直結します。このコラムをお読みいただく人の中には社員教育の担当者が多いと思います。そこで述べたいことは、社員教育においては、平坦な知識・技術のための研修ばかりに傾向するのではなく、「物事を察する力」、そして、「理性的にしっかりと考える力」を養うための研修をしていただきたいということです。

技術や知識だけでなく、物事を客観的に把握する力、そして、理性的に考える力を養うことで、“会社組織としての力量”が不動のものとなるに違いありません。「社員一人ひとりの力量の総体が、確実に“会社の力量”となる」という考え方は、世界中の優良企業で証明されている周知の事実といえるものです。



<生井 利幸講師のコラム バックナンバー>

VOL.46 「社員の『やる気』を引き出す話し方」
VOL.45 「日本経済が必要とする若いビジネスパーソンよ、“しっかり前に進め”」
VOL.44 「人の印象は挨拶ひとつで大きく変わる」

VOL.43 「メール送信は、時として、‘爆弾投下’と化してしまう」

VOL.42 「謝罪の極意」
VOL.41 「トイレでの会話が人の心を掴む」
VOL.40 「打ち合わせにおける笑顔の意味」
VOL.39 「労働の価値の重さ」

VOL.38 「アメリカ人の方便、日本人の方便」

VOL.37 「‘忙しい’を言う? 言わない?」
VOL.36 「愛情あるコミュニケーションが、仕事のクオリティーを大きく変える」
VOL.35 「コミュニケーションと川の水の流れ」
VOL.34 「講演先での素晴らしい出会い」
VOL.33 「スピーチの達人は皆、"役者顔負けのパフォーマンス"で話を進める」
VOL.32 「緊張しない話し方の極意
VOL.31 「ニューヨークのビジネス社会は"人類愛"に満ちている
VOL.30 「東京都葛飾区の公開講座で感じる社会人受講生のパワー
VOL.29 「コミュニケーション力”・“哲学”・“心”の融合が、会社を大きく成長させる」
VOL.28 「"キャッチボール型の会話"をしていますか?」

VOL.27 「「個」を重要視する経営者の精神、個々の社員の精神」

VOL.26 「「哲学」「理念」を養う社員教育の必要性」

VOL.25 「地域社会発展の実現は「真心」にあり」

VOL.24 「コミュニケーションは一体何のためにあるのか?」

VOL.23 「人の顔の表情は、自分の顔の表情の顔である」

VOL.22 「ニューヨークでは、肌の色よりも<チャレンジ精神>が台頭する」
VOL.21 「話上手 グレート・コミュニケーターの本音」
VOL.20 「<裸の王様>になってはいけない」
VOL.19 「<哲学><コミュニケーション><ビジネス>における相関関係」
VOL.18 「<言葉の管理>に優れている人が信用を築く」

VOL.17 「堂々と客に啖呵を切る魚屋の<交渉術>」

VOL.16 「契約社会アメリカの実態は“交渉社会”である」
VOL.15 「経営者の心得・・・ビジネスの達人は“他人を泳がせる器量”を備えている」
VOL.14 「できる管理職は業務命令を下すのがうまい」

VOL.13 「トップライナーが駆使するビジネス・コミュニケーション術」

VOL.12 「一連のIT革命が癒した<負の遺産>」

VOL.11 「プロのエンターテイナーから学ぶ 自己表現を高める方法」

VOL.10 「セールスの達人は<1秒のリズム>で勝負する」
VOL.9 「経営者はCSRの執行者でなければならない」

VOL.8 「<お茶目な人>がビジネスを成功させる」

VOL.7 「給料は、貰うものか、それとも稼ぐものか?」
VOL.6 「日本人は常に<組織の名前>にしがみつく」
VOL.5 「スーツの買い方でわかる意思決定のスマートさ」
VOL.4 「勝ち組人生」とは?
VOL.3 「上司の力量次第で部下の仕事ぶりが決まる」
VOL.2 日本人がアメリカ人から学ぶべき「ビジネスにおける“心の余裕”」
VOL.1 「現実」を踏まえた上で一歩一歩確実に歩む人が、仕事人生を成功させる
 
 

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